第40話
作者:一区切りついたので小説の形態を変えます。
具体的には、場面変換の時に”◆”を挿入します。
わかりにくい、戻してほしいなどの意見が合ればコメントください。
――――――――
「ウロサマとクルアサマが死亡? そうですか……残念です」
報告を聞き、黒貌は悲しそうに眼を伏せた。
拠点にて。
流司は黒貌に、起こった事の全てを伝えていた。
突然出現したもう一人の黒貌。
それがウロを刺し、かと思ったら”何か”が現れた。
ウロは”何か”の肉で磨り潰され、クルアは踏み潰されて死亡したと。
「あ、あの! 質問していいですか!」
「なんですか、流司サマ? 簡潔にならいいですよ」
「あの時出てきた、もう一人のにゃる様って――」
言葉を遮るように、黒貌は言う。
「私もわかんないんですよねぇ。警戒すべき、ってことぐらいしか」
いつも通り、彼女は掴みどころのない様子で首を傾げた。
流司は初めて、ウロに生きていて欲しかった、と思った。
◆
拠点の中心、広場になっている場所。
早朝、そこに恐応の号令で拠点の全メンバーが集合していた。
聞かされたのは、ウロとクルアの死。
学校から脱出した時に沢山経験したはずだが、それでも衝撃を受けた。
「うわぁあんっ! クルアぁ!」
「……クソッ」
「なんで、こんな事に……っ」
大声で泣いているのは緑髪の女子、チモ。
彼女を覆い隠しながらも、怒りを漏れているのがイササ。
その横で静かに泣いてるのが、アマテラスのヒルメである。
彼らは幼馴染だった。
嬉しい時も悲しい時も、ずっと感情を共にしてきた。
例えば、遠足が晴れの日で喜んだ時。例えば、嵐に全てを破壊されて悲しんだ時。
どんな事があっても、彼らは一緒だった。
だがもう二度と、時間と空間を共有する事、は無いのである。
「……ウソ」
「ウロが……?」
ウロの死亡に大きな動揺をしているのが、カイとチヒロ。
彼女たちは、長い時間を共にしたわけではない。
しかし、ウロに仲間意識を抱いていた。
何が原因なのかはわからない。
わからないが、とにかく怖い。
仲間はここに沢山いるはずなのに、とても寂しい気がした。
「……落ち着け、とは言わない。仲間の死を悲しむのは当然の事、だ。」
恐応も、目を伏せている。
彼女は深い後悔をしていた。
彼女達の死は、自分のミスだ。
もとはと言えば、ウロに疑いを掛け拘束した事。
ウロはそれに耐えられなくなって、拠点から離脱。
そしてクルアは其れについて行き、そして死んだ。
2つの未来を奪ってしまったのだ。
「だからこそ、彼女たちの死は無駄じゃ無かったと証明しなければならない!」
恐応は叫ぶ。
身を焦がす罪悪感から、少しでも逃れるように。
「その”何か”は他の悪魔を吸収しつつ、東へ向かった。なれば、現在学校周辺には何もいないのだ!」
ウロ達が殺されて動けなくなり、流司は”何か”の動きを見ていた。
それは木々を倒しながら学校のと反対方向、つまりは東へ向かった。
何度か悪魔の襲撃に会っていたが、彼らも”何か”の肉へ取り込まれた。
「太陽が頂点に上った時、出発する! 各自栄養を補給し、準備をするように!」
◆
集会の後、本部の中。
恐応が黒貌に詰め寄っていた。
「黒貌、ウロ達の死に何を思う?」
「え? まぁ、悲しいですよね……同じ屋根の下で暮らした仲間ですし」
「……流石の我でもウソだと分かるぞ」
「分かりますかー……」
黒貌は、俯いて言う。
「だって、ウロサマが危険だった事は証明されたじゃないですか。大量の悪魔は来ていたようですし、最後には”何か”まで引き寄せていた」
「それは、そうだが……じゃあクルアはどうなるんだ」
「ああ、それは……仕方がないんじゃないですかね」
「仕方が無いとは!」
目を合わせて、彼女は伝える。
「いや、彼女が自分から行ったのでしょう? ならその責任はクルアサマにあります」
「……っ! その、通り、だ。彼女らの見舞いを担う者として止めるか、一緒に行くかするべきだった」
「止める一択ですね。先生は拠点の最高戦力ですから、死んでもらっては困ります」
それだけ言って、するりと恐応の横を抜けた。
◆
「ねえカイ、どう思う?」
「……どうって?」
「ウロについてだよ。ボクはなんか、あいつが死んだって思えないんだよね」
チヒロは空を見上げた。
「後から聞いた話だけど、ウロって大顎に突進されたんでしょ? 今ならわかるけど、生身で耐えられる威力じゃない」
「……」
「それに、大翼の時も。体が1回潰されて、その後化物の姿になってた。なら、磨り潰されたって――」
「ないっ!」
「え?」
「ウロは、化物になれない……」
「……何でカイがわかるんだよ」
「あれ、神様の力。私が、ウロを殺したんだ」
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