George the third wheel.
うわあ,と僕は大きく声を出す。
「何してんの?」
「いや,豆腐逃こそ何してんだよ」
「散歩だよ,散歩」
びっくりした,そう思った時,ようやく豆腐逃の心の声を認識し始めた。嫌なことを思い出していたので,気がつかなかった。
『あ,田中くんいるじゃん。びっくりさせてやろ』
今更そう思っても,もう驚かされたんだけど
「ただいま」
声を顰めて,僕は言った。
「ああお前,少しペンを貸せ。今素晴らしいものが降ってきたんだ」
お経が聞こえると思ったら,いくつもの数字と,用語のようなものだった。おそらく,この男の心の声だろう。仕方なく,先程拾ったペンを渡した。渡したところで,ポケットが軽いことに気がついた。さっき驚いた時に落としたか,と考え,拾いにいくことにした。
先ほど閉めたドアをまた開ける。それが起こったのは,外に出て,少し歩いたところだった。轟音が,耳を包む。押されたように,前に転んだ。そしてモスキート音のようなものしか聞こえなくなり,辺りを見回す。家が半壊していた。爆発でもしたのだろうか。
よくわからずぼーっと家を眺めている。そしうていると,頭の中に声が聞こえてきた。
『そういえばさっきのペン,脱獄した爆弾魔の人に似た人が落としたやつだったんだよな』
後ろを向くと同時に,わあ,と膝が曲がった。膝かっくんだ。
「驚いた?」
そこで,僕は気がついた。豆腐逃は考えるのが遅れているんじゃない。数分,数時間,最悪数日,早まっているんだ。
予想外の事実に愕然とするが,平静を装う。代わりに,覚えたての英語でこう言った。
「Was that a pen?」
「of course,that’s not a pen.」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます