第3話 過去の絶望

明らかな動揺。

そして答えが曖昧。

俺は何かを感じながらそのまま冴島の自宅に集まっていた。

呼び出されたのである。


「先輩。来てくれて有難う御座います」

「そうだな」

「うふふ。じゃあ早速ですが田中さんに対する復讐について考えてみましょう」

「ああ。社会的信頼性を失くす、って言ってたな」


そうですね。私としては将来を打ち壊したいって思います。浮気はダメですよ絶対に、と言いながら複雑な顔になる。

俺はその姿を見ながら下唇を舐める。

それから冴島を見た。


「私の親も実際にそんな感じで浮気しましたからね。それで家庭が打ち壊しになったので絶対に許せないですから。だから怒っているんですよ」

「成程な。お前の親父さん.....浮気したものな」

「そういう事です。だから怒っています。まさか身近でまたこんな事が起こるなんて思ってなかったからです」


だからこそ私はクズには全て復讐するつもりです、と再度怒りの言葉を放った。

その中でハッとしてから冴島は俺を見てから、すいません。家の中にも入れず、と言葉を発してくる。

それから俺の手を握ってきた。

そして、入りましょうか、と言ってくる。



「今日はお母さんは居ないので私と先輩だけですね」

「ああ。そうなのか」

「今日はちょっとお母さんは会社の用事で遅くなります」

「成程.....というかマズく無いか?」


良いじゃないですか先輩。それとも嫌ですか?、と聞いてくる。

柔和なその顔を見ながら俺は少しだけ赤くなる。

それから俺の方にやって来る冴島。

そして笑顔になる。


「田中さんがクズな分ですが私達は穏やかにいきましょう」

「.....ああ。そ、そうだな」

「どうしたんですか?先輩?」

「何か体が近くないか?お前」


近い?それはどういう意味ですか.....?

私が近いのは気のせいですよ.....、と言いながら頬を朱に染めて俺に近付いて来る。

俺は赤くなりながらその姿を見る。

寄り添って来るぐらい近い。


「私はあくまで先輩が笑顔で居られる様にしているだけです.....よ?」

「そ、そうなのか」

「だから近い訳では無いです。決して、ですね」


言いながら俺に近付いていたが。

そのまま離れながらスカートを翻す。

俺はその姿を見ながらドキドキの胸を抑える。

そして冴島は椅子に座る様に促す。


「でも嘘は吐いてないです。.....私は先輩がこの世界を生き易い様に援助していますので」

「そうなのか」

「はい。何故なら.....」


そこまで言ってから赤くなって黙る冴島。

俺はそんな姿に?を浮かべる。

それから冴島は、ま、まあそれは置いておいて。お茶飲みます?、と聞いてくる。

その言葉に、あ、ああ、と返事をした。

それから俺は椅子に腰掛ける。


「先輩。紅茶で良いですか」

「ああ。紅茶で良いよ」

「砂糖入れます」

「ああ.....って何で知っているんだ」

「当たり前でしょう。2年も一緒に居るんですから」


言いながら笑顔になる冴島。

そして紅茶を台所で淹れ始める。

そんなお淑やかな姿に癒される感じがしながら前を見る。

そうしているとお菓子を持って来た。


「先輩。お菓子も食べて下さい」

「あ、ああ。すまないな」

「良いんですよ。先輩ですから」


ニコッとする冴島。

その顔に俺は笑みを浮かべつつそのままお菓子を食べる。

それから、冴島、と聞く。

すると冴島は、はい、とまた笑顔になる。


「お前は復讐をするのに.....父親の事もあるって言ったけど」

「はい」

「それだけで俺の復讐の手助けを何で.....まあ有難いけど」

「そうですね。それだけですが。.....まあそれ以外は内緒です。今は」


言いながら唇に手を添える冴島。

俺はその姿を見つつ?をまた浮かべた。

それから冴島を見る。

冴島はニコッとまたしながら、まあでも先輩。今はそんな話も、事もどうでも良いです。取り敢えず田中さんへの復讐を真っ先に考えましょう、と話してくる。


「私はその為に今日はわざわざ先輩に来てもらったんですから」

「でもさ.....もしかしたらアイツは此方の光の道に戻って来るかもしれないぞ?一気にやって良いのかな」

「甘いですよ。先輩。厳しく当たりましょう。戻って来ません。.....戻って来ても信頼出来ないですから」


真顔になってから俯く冴島。

俺はその顔を見ながら周りを見渡す。

家族集合写真がある。

だが父親の部分だけ切り取られている写真が多い。

それを見ながら俺は冴島を見ていると。


「私は父親を心から信頼していましたから。再生するって思ってました。だからその分、半端じゃなかったですよ。産まれた芽を摘み取られる様に。何度も、何度も、何度も裏切られた感情は。折れましたから。.....だから私は絶対に許しませんし反省する事はないって思っています」

「.....成程な」

「.....これは当てつけじゃないです。個人的感情でもない。.....先輩を幸せにしたいだけです。だから復讐したいんです」


言いながら俺に暗黒?っぽい笑みを浮かべてくる冴島。

紅茶の湯気が立ち上る。

それから空気に消えていた。

俺はその様子を見ながらゴクリと唾を飲み込んだ。

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