第15話 妹
土曜日。学校が休日な日。
1人暮らしの自宅で、俺はゴロゴロしていた。ベッドに寝転がり、スマートフォンを操作していた。時折、寝返りを打ち、心地良い体勢に変更した。
ピーンポーン。
そんな平凡な時間が過ぎる中、自宅のドアフォンが鳴り響く。周波の高い音が自宅全体に行き渡る。
「誰だろ。こんな時間に」
ベッドから起き上がり、ドアファンを確認すると、画面には茶髪の女性の姿があった。髪の色は俺と同じ色素だった。
「……」
無言でドアファンの通話ボタンを押す。
「何の用だ、一香」
ドアフォンの画面に映る女性の名前を口にする。
「あ! にいにの声だ! やっほー。愛しの妹が合いに来たよ~」
ドアフォンのカメラを間近で覗き込み、一香は陽気な声で手を振る。
「愛しじゃねぇし。前も言ったろ、いきなり自宅に訪問するなって! 」
不機嫌さを醸し出し、俺は妹の一香をたしなめる。鳥のように、口元は自然と尖る。
俺と一香は3つ年が離れている。だから、現時点で一香は中学3年生である。
「そんなこと言ってたっけ。忘れちゃった。それとね。これは大事なことなんだけど。今日、来た理由はね、お父さんとお母さんに様子を見てくるように頼まれたの」
カメラ越しに、一香は訪問した理由を説明する。相変わらず、テンションが高く、声は大きい。
「…なるほど。そういうことか。とにかく、自宅に通すから、ちょっと待ってて」
「そうだよ。結構外で待ってるんだからね。早くして。よろ~」
「了解。すぐ向かう」
ドアフォンの電源をオフにし、玄関に移動し、靴も履かずに、ドアを開ける。
ドアの隙間から、外の太陽の光が差し込む。ドアの隙間は徐々に拡がり、光の量も増量する。
「にいに~。会いたかったよ~~」
ドアが完全に開いたタイミングで、一香が俺に抱きつく。流れるように、俺の背中に両腕を回す。一香に付着した甘いイチゴの香りが俺の鼻腔をこれでもかと、くすぐる。
「ちょっ。いきなり抱きつくなよ! そんな喜ぶことでもないだろ。大袈裟だな! 」
「そんなことないの! 一香にとって、にいにと久しぶりに会えたこと自体がこの上なく嬉しいの! ただでさえ、離れて暮らしていて、にいにと一緒に時間を過ごせず、寂しい思いをしてるのに!! 」
一香は必死に訴えかけながら、より強く抱きしめてきた。そう一香はブラコンなのだ。しかも、極度のブラコンなのだ。
兄である俺のことを心の底から慕っているのだ。ブラコン気味なのは昔からだが、中学3年生になった今でも変わらず、こうして、兄妹離れできないのは正直困っていたりする。
「分かった! 分かったから! とにかく離れてくれよ!! 後から好き放題、俺成分を補給してくれればいいから!! 」
「本当に!! 約束だよ。言質取ったからね! 」
パッと笑顔になり、一香は俺から離れる。その表情は実に嬉しそうである。
そして、一香は俺の手を引き、自宅へと招き入れた。
「ふむふむ。部屋はきれいにしてるんだね」
毎度の如く、一香の部屋チェックが始まる。
部屋に汚れが無いか。不摂生な物を食べてないか、などをチェックする。そのために、部屋の隅々まで目を通す。さらに、摂取する食材をチェックするために、一香は冷蔵庫やごみ箱の中身まで確認する。ゴミ箱に廃棄された食材の袋や弁当箱をチェックすれば、不摂生な食事を取っているかを判別できるわけだ。
俺としては、毎回このようなことをされるのは気が気でないのだが、妹なりに心配している証なので、あまり口うるさく言うことができない。
それにしても、今日はいつも以上に入念だな……。
何かあったのか? と疑問を抱く。
「よし! 部屋も良し! 摂取する食材も良し! エロい本なども無し! 」
すべてチェックし終え、一香は達成感を帯びたような顔を形成する。一香の表情は明るく、満足げである。
「そんなところまでチャックしていたのかよ。何だか複雑な気持ちだな!! 」
目を細め、どこか疑うように、俺は目を細める。
「それは当然。にいにの妹ですから。にいにの性的活動も、一香がある程度、管理しないとね。流石に、にいにも男の子だから、スマホでの性的活動は許容するけど、エロ本やDVDの所有は看過できないからね」
意味深な表情で、一香は勉強机に置いた俺のスマートフォンを見つめる。スマートフォンだけに視線を集中させる。
一香の視線を認識し、俺の心臓がドキンッと跳ねる。
スマートフォンを使用し、インターネットを介して、エロい動画(AV)を俺は毎晩、堪能している。リアルの人間の動画やアニメなどを俺は好んで視聴する。そして、絶頂の快感を求めて、尿が漏れる感覚と似たフィニッシュを味わう。
一香のあの目。これは完全にバレてるやつだ。
彼女を奪われた俺はその経験をネット小説にして投稿し、お小遣いを稼ぐ 白金豪 @shirogane4869
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