第14話 初めてのメッセージでのやり取り
深沢直子『ヤッホー! 部活のグループから追加したよ~。今日は一緒に食事して楽しかったよ! 』
可愛らしい猫のスタンプと共に、上記のようなメッセージがSNSを介して届いた。SNSは連絡用の物である。
まじかよ。深沢からSNSでメッセージかよ。今思えば、深沢のSNSの連絡先を持っていなかったな。
それにしても…。どう返信しよう…。
人生初の同級生の女子からのメッセージに狼狽える。しかも個人宛てのメッセージである。動揺から僅かに身体も震える。身体も僅かに強張る。
深沢からしたら気軽に送ったメッセージだろう。そんなメッセージに対して俺は即座に返せずにいた。既読を付けたのも関わらず、メッセージの内容を熟考をした。
俺『そうだな。俺も楽しかった』
20分も考えた挙句、平凡な内容のメッセージを送った。かなり頭を使い、披露した結果、シンプルな文章が1番だと結論づけた。ただシンプルすぎというか、内容が薄いというか。自己評価は低い内容だった。
深沢 直子『そっか。それはよかった。少しは彼女と別れた傷も癒えた? 』
すぐに既読が付き、深沢からメッセージが届く。どうやら俺の心境を配慮してのメッセージだったらしい。今回のご飯の奢りもその1部に違いない。
俺『ありがとう。少しは和らいだよ』
深沢の配慮に感謝し、お礼のメッセージを送信した。
一方、場所は変わり、深沢の自宅。
深沢の自宅は良い意味で女子らしい部屋ではなかった。
部屋には少女漫画など一切なく、異世界系やラブコメなどのラノベが大量に並ぶ本棚を中心に必要最低限の家具だけがあった。エアコンや勉強机や絨毯などが該当する。
そして、ベッドにはラノベ界で大人気な主人公やヒロインのぬいぐるみが5体ほど置かれていた。各々が自身のスペースを陣取っていた。
「なあ、次郎。灰原君に勇気を絞ってメッセージを送ったんだけど。終わっちゃったよ。返す言葉が見つからないよ」
ラノベのキャラクターのぬいぐるみの頭をつんつんする深沢。名残惜しそうな雰囲気を醸し出す。まだメッセージを続けたい気持ちが伝わる。その気持ちをぬいぐるみにぶつける。
ぬいぐるみの頭部は綿が詰まっているため、やや硬い感触がある。しかし、深沢はそれが気に入っているようだ。
ちなみに、ぬいぐるみの名前は全て主人公の名前である。つまり、ぬいぐるみのキャラの名前を呼んでいる。決してぬいぐるみにネーミングを成していない。
突如、深沢のスマートフォンの画面に光が灯る。通知があったようだ。
灰原 真一『俺も最近、深沢がドハマり中の作品を読破したから。その話について大いに語れるといいな』
追加的に俺からのメッセージだった。
「ほ、本当に。や、やった~。また灰原君からメッセージが来た。私ってもしかして運がいいのかな? 」
深沢は嬉しさのあまり、その場でぴょんぴょんと跳ねながら喜んだ。反動でベッドの敷布団が凹む。だがお構いなしだ。無邪気に深沢は飛び跳ね続ける。
「嬉しいな~。まさか灰原君から歩み寄ってくれるなんて」
キラキラした目で深沢はスマートフォンを見つめる。完全にウキウキ状態だ。
「さて、どこから話そうかな。1話の展開について話そうかな。最新話について語ろうかな。それとも今後の展開に関する予想について意見を交わそうかな」
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