第6話 仕掛け
いきなりだが、俺は1人暮らしである。親元を離れ、ワンルームのアパートに暮らす。ワンルームと言っても、キッチン、お風呂、洗面所などは常備である。もちろん、両親に家賃を払ってもらい、仕送りも受け取っている。
そんな1人暮らしの自宅の合い鍵を佐藤に渡していた。付き合い始めた、その日に渡した。彼氏彼女の関係なため、好きな時に自宅を行き来できるようにしたかった。だから、合い鍵を渡した。
片手で数えられる程度だが、佐藤は俺の自宅にお邪魔した経験がある。
今後、ヨムカクで大人気の拙作執筆のためには、間接的に佐藤と吉澤も協力が必要である。
まずは俺の自宅を利用して頂こう。俺の小説のネタになってもらおう。
時刻は16時だ。今日は部活がOFFだった。
「よし! 計画実行しないとな! 」
ベッドから起き上がり、スマートフォンを開く。
俺『今日は自宅を留守にするから。もし使いたければ自由に使っていいから』
SNSを介して、佐藤にメッセージを送った。
すぐに既読が付いた。流石に未読無視はしないようだな。
佐藤『了解。まあ、利用しないと思うけど』
素っ気ない返事が返ってきた。
文章から気怠げにメッセージを打つ、佐藤が想像できた。その佐藤の顔を浮かべた。無性に腹が立った。イライラが沸々と沸き上がった。
絶対にお前らをおかずにして、面白い小説を執筆してやるからな。あわよくば、多くのお金も稼ぎたいな。そこまで物事は上手く進行しないだろうけどな。
自身の機嫌を取りながら、佐藤にメッセージを返信した。
俺『任せるよ。もし必要なら好き放題、使ってくれても構わないよ』
カメラ機能を起動し、自宅の掃除用具入れの上にスマートフォンを仕掛ける。掃除用具入れは学校に設置された物と同じタイプである。縦長の掃除用具入れである。
おそらく2メートル以上の背丈はある。人間の背丈を優に超える。
スマートフォンを斜めに傾け、ワンルーム全体が映るように設置する。スマートフォンで確認する。ばっちりスマートフォンの画面にワンルーム全体が映る。
「さて、邪魔な人間は姿を消しますか。俺の自宅なんだけどな。何か変な感じだな」
財布だけ所持し、俺は自宅を退出した。日頃から入念に清掃に取り組んでいた。そのため、敢えて自宅を出る前に掃除をする必要は無かった。ノークリーンだ。
これも小説のネタ作りのためだ。佐藤と吉澤には拙作のおかずになってもらわないとな。
ふふふ。楽しみだ。ドアに差し掛かる途中から、ワクワクや高揚が爆発した。胸中で感情が暴発した。
俺はこの日をカラオケで過ごした。フリータイムを2回も利用し、おおよそ丸1日も自宅を空けた。人生で初めての経験だった。
カラオケで熱唱する間も、集中できずに上の空だった。常に、今後の小説の展開と、佐藤と吉澤が自宅でどんなプレイをしているかを妄想していた。
その時間は至福の時間だった。想像力は無限大であり、様々な佐藤の吉澤の表情が脳内に浮かんだ。
さ~~て。どうでるかね。
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