第4話 翌朝

「うぅ~ん」


 俺は目を醒ます。徐々に視界が明瞭に変化する。いつもの見知った天井である。


「今…何時だ…」


 枕元に居場所を作る、スマートフォンの電源を起動した。完全に電源を落としていたため、ONになるまで時間を要する。


「7時か…。13時間ほど深い眠りの世界に居たようだな」


 俺は重い身体を起こし、ベッドから立ち上がった。


 寝すぎたのか。身体は凝り固まっていた。肩や腰にずしっとした重みを感じた。


「そういえば。ヨムカクの小説はどうなっただろうか…」


 どうせ毎度の如く通知はゼロだろうな。星やいいねは獲得できず、当然フォロワーも1日目ではゼロ人だろうな。


 特に期待感を抱かず、検索エンジンを介してヨムカクのサイトにアクセスした。


 珍しく、ヨムカクのベルアイコンに赤い点が表示されていた。通知がある証拠だ。


 珍しいな。まあ、ファロワー1人ぐらいだろうな。運よく1人の読者がフォローしてくれた。とかかな。


 俺はベルアイコンを軽くタップした。


「え!? 」


 通知を確認した直後、悲鳴のような驚嘆な声を漏らしてしまった。


 当然だった。なぜなら、見たことも無い数の通知数だったからだ。下に何度もスクロールしても、新規の通知が溢れ続けた。


 akiraさんが星を付けました。wandaさんがコメントしました。kakuyaさんがあなたの小説をフォローしました。などなど大量の通知が溢れていた。


「おいおい。まじかい。これはどういうことだい」


 焦った様子で、俺はヨムカクでのマイページを開く。このマイページでは拙作のフォロワー、星、いいね、コメントの総数を確認できる。

 

 星は100を超え、小説のファロワーは500超えていた。いいねも1000を超越し、コメントも100件を突破していた。


 今まで俺の執筆した小説は圧倒的に人気が出なかった。常に星は10未満でフォロワーも10人を超えることは決して実現し得なかった。作品へのコメントも受け取った経験も皆無だった。


 信じらない出来事に直面していた。戸惑いを隠せなかった。こんなことが有ってもいいのか。


「まさかランキング上位にも組み込んだのか」


 ヨムカクのラブコメの日間と週間のランキングにアクセスした。


「…やっぱり」


 ラブコメ日間ランキング5位。週間ランキングは10位。


 拙作が位置するランキングに身体が小刻みに震えた。嬉しさの実感も感じなかった。


 どうしても現実を疑ってしまう。


「まさか。総合のランキングにも」


 俺は総合ランキングにもアクセスした。


 1位から順にスクロールして目で追った。50位まで到達した。未だに拙作の名前は見当たらなかった。


 ゆっくり指のスクロールを続けた。1作品1作品のタイトルを目で追い続けた。そのために、目を何度も上下左右に動かした。


「あった! あった! 俺の作品が総合で100位だ! 本当か…。はは。実体験を書き殴っただけでか」


 笑いが止まらない。笑いと同時に、嬉しさと喜びも留まらない。


 胸中から噴出する。


「そうか。この実体験か。悲しい実体験を書き殴って、小説にすれば、俺の作品は多くの読者に読んでもらえるのか。そうだよな。確定だよな! 」


 俺は1つの仮説を立てた。その刹那、1つの決意も固めた。


 佐藤と吉澤の浮気現場を肉眼で何度も視認し、脳内に奴らのイチャイチャを組奥として刻み込み、今後も拙作を書き続けることを。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る