悩みは下ネタで解決です!

「先輩、相談いいっすか?」


 部活終わり、蘭童くんが声をかけてきた。


「俺にか?いいけど」


 蘭童くんは礼をした後、人気ひとけの少ない階段の方に向かった。どうしたのだろう。やっぱり相談できる頼れる先輩と言うのが俺に対するイメージなのだろうか?


「と言うかなんで俺に相談?女子同士の方が話しやすくないか?知らんけど」


 階段の1番下の段に腰掛けながら質問する。


「最初は沢良木先輩に質問したんすけど、相談なら先輩の方が向いてますよって言われたんす」


「そうか、まあ、とりあえず聞いてやる」


 半年ほど前に沢良木さんを励ましたのがここに来て伏線回収されたってことですね。てか下ネタなさそうだけど大丈夫?


「俺、こんな格好じゃないすか、それでまあ、流石に体育の時とかは女子と一緒に着替えるんすけど、周りの目が痛いだけだったら良かったんす。でも最近いじめって言うか陰口言われ始めてて、割と心にくるっていうか……」


 俺の方は見ず、俯きながら言う。相当悩んだんだろう。


「男になりたい理由とかってあるのか?」


「何となくってわけじゃないっす。姉ちゃんが割といじめられるような人で、それを守れるようにってこんな感じにしたのが始まりなんすよ。ちょっとでも強く見せようと思ってっす」


「それはすごいかっこいいと思うけどお姉さんのいじめってまだ終わってないの?」


「いや、それは割と昔に終わってるっす。ただ、もう中学入ってからだったし浮いてるやつ扱いされてて、今戻したら今度は自分がいじめられるかもって思ったらもう無理で……」


 戻しても戻さなくてもいじめにつながるかもと言う恐怖心があるのだろう。正直俺はかける言葉に困る。


「女の子っぽくなりたいかと聞かれると今の方がいいって答えるっす。でも悪口言われてる現状を含めるなら普通の女の子になりたいっす」


「そうだな……あくまで一意見として聞いてくれ。このまま男の子の格好をして、暮らしていくって言うのは学校だけじゃなく社会に出ても苦労すると思う。それに今はインターネットとか多様性とかで言ってみれば面倒くさい」


 俺が相手に意見を押し付ける時恒例の、何の話し出したんだこいつ。という目で見てくる。


「自分を持って生きるってのは凄いけど、それで傷ついてちゃ訳ない。結局、俺はどうしたいかより自分の傷つかない道を行くべきだと思う。悪口を言われて傷つくってならやめた方がいいし、男装を辞めて、自分がなくなるんならまだ傷ついた方がマシだとも思う」


「先輩の結論としては俺に任せるってことっすか?」


「だな。だが、しかし、こんなんじゃ満足してもらえんだろ?明日の朝、学校来るのちょい遅めにしろ。遅刻しないぐらいでな。明日の朝には3割型解決させといてやる」


「3割ってあんま解決してないっすよね……」


 不安そうな蘭童くんを置いて、俺は凛城先輩に連絡をした。


〜翌朝〜


 登校時間まで残り五分。もうクラスの大半がクラスに入って席についた状態で駄弁っている頃。俺と凛城先輩は蘭童くんのクラスの扉を勢いよく開けた。


「3年1組!凛城梨々香よ!」


「2年1組!空川誉だ!」


 あたりからは、「えっ?誰っ?」と言う声と視線が飛び交っている。まじ、何で俺こんなこと提案したんだろ。


「貴方たちチェリーは何も知らないかも知れないけど、男同士の性行為をする会のことをハッテンと言うのよ!ハッテンの発展が大切ってことよねっ!」


 何言ってるんですかこの人……。ちなみにまじでハッテン会というのはあるらしい。黒板の前に立ち、集めていた注目を一層集める。


「何が言いたいかというと、この世は多様性で溢れているの!どんな個性も性癖も受け入れなきゃいけないの!ノーマルじゃないからと、アブノーマルなプレイをプレイしている人をいじめる、Mの人はM字開脚の刑よ!」


 あたりからは「何あれ?」とか、「隣の喋らない男の人キモっ」とか「1組って特進クラスだよね…、嘘じゃない?」とかほざいているが気にしない。二つ目のやつは泣きそうになったけど気にしない。


「あれっ?先輩達、何してるんすか?」


 おっと、思った以上に到着が早かった。今日の主役の登場だ。ここら辺で締めに入らせてもらおう。


「俺達は!学校でも地域でも恐れられてるアタオカ軍団だの一員だ!」


「そう!アッ//タマタマ犯す軍団の一員よ!」


 アタオカの略はそんな気持ち悪くないです。


「蘭童団長の背後に俺たちが隠れてることを忘れんな?因みに俺たちは学校から浮いてるせいで失うものなんて無いんだからな?」


「貴方は無いかもだけど私はまだ◯女よ?失いたく無いわよ」


 この前俺に奪わせようとしてたでしょ貴方。


 ようやく俺たちのヤバさが分かったのか、先ほどの声が、「やばいじゃん……喧嘩売っちゃダメなタイプだよ」、「しーっ、聞こえたら何されるか分かんない」とかいう声に変わっていった。作戦通りだ。


「あとは好きにしろ。もう悪口は言われねえよ」


「いや、悪口以外の色んなもんを失ったんすけど」


「良かったじゃないか、失うものが無くなってからがチョベリ部だ」


「なんすかそれ。あんま格好よくないっす」


 苦笑している蘭童くんを置いて、俺と凛城先輩が廊下を出てクラスに戻る。すると後ろから「ってことだ!俺に喧嘩売るやつは俺の奴隷どもが黙ってねえからな!」と、全てを捨てた声が聞こえてきた。


「貴方、割と亀頭おかしいのね」


「頭って言ってくれません?」


 いや、多分亀頭もおかしいけど。凛城先輩は手で銃の形を作り、ヘアゴムをセットした。


「奴隷って性奴隷のことかしら?まっ、可愛い卵子ちゃんを傷つけるMは、これでバッキュンだけどね」


 そう言って放ったヘアゴムは明後日の方へ。精度0性奴隷なのは言うまでもないみたいだ。

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