1発おみまいしてヤります!

 学校の帰り、俺はプリンとヨーグルト片手に凛城先輩の家に向かっていた。道は前回来た時に覚えてある。


 中学生活を捨てた俺にとって友達のお見舞いというのは初めてだ。まあ、友達というか彼女なんですが。


 ラブコメの相場は熱になれば性格が変わるのだ。凛城先輩はどのように変わるのだろうか。


 予想1つ目、「貴方?どうしたのですか?もしかしてお見舞いに来てくれたんですか?ありがとうございます!お茶でも出しますね」的な感じですごいお淑やかになる。1番ありそうだ。


 予想2つ目、「貴方?背中拭いてくれない?お願い?こんなこと貴方にしか頼めないのっ、お茶出しますからっ!」こんな感じで甘えてくる。これもありそう。


 割と気持ち悪めの妄想を拗らせながらインターホンを押す。ドアが開くと母と父が同時に出てきた。


「チッ、馬の鹿がまた来やがった。今梨々香は熱出してんだ。帰りな」


「そんな怒んないの。せっかく来てくれたんだからちょっと休憩したら?カップヌードルは好きかしら?それともDカップヌード見る?」


 凛城先輩の母は乳房を揺らす仕草をする。本当、この人から産まれてきた感じがすごい。胸の部分以外は。


「いえいえ、お見舞いの差し入れを」


「刺し入れをおみまい?!」


 そのネタさっきやったから。凛城先輩の父が噛みついてくると思ったが、急に黙る。


「この人ね、娘が熱だって言うのに家にずっと篭ってるのよ?彼氏はこうやって食べやすいもの買ってきてあげてるのに……それで帰れとかどの口が言ってるのかしら?」


「すいません。頭冷やしてきます」


 お父さんはそう言って、しょんぼりとどこかに歩いていった。


「私も薬買ってこなくちゃだから梨々香をよろしくね。いつもより静かで変な感じするかもだけど」


 お母さんまでもが俺にウインクを残し、薬を買いに出ていってしまった。とりあえず中に入るか。


「すいませーん!凛城先輩!差し入れを持ってきました!」


「ああンッ、誉くぅーん//」


 ドタバタと二階から、ピンク色のパジャマを着た化物が降りてきた。え?誰この人?いや、凛城先輩なんだけど。誉くん?


 いつもは解き放たれている黒髪が今日はポニーテールになっている。それに目のハイライトが少し薄い気がする。いつもの凛城先輩てはないことは一目瞭然だ。


 凛城先輩はそのまま俺の胸元に飛び込んでくる。えっ?近いって……てかどこがいつもより静かなんですか?


「ナニしに来たの?私が処理してあ・げ・るっ」


 エロ漫画に出てくるお色気お姉さんみたいなキャラで話しかけてくる。本当に誰?多分今は意識が曖昧なんだろう。


「すまんこね、お茶も出さずに。Tバックがどこかにあったはずだからそれで作るわ」


「ティーパックで作って下さいね」


 Tバックで作ったお茶も気になるけども。


「もう平気なんですか?熱」


「私はほてってしょうがないわよ。誰か私を冷ましてぇ〜」


 冷ます前に目を覚させ、このままパーリーコースだ。


「とりあえず誉くんは私の部屋に上がって、私の聖域を紹介するわ」


 結局お茶は出してくれず、部屋まで案内される。一応部屋で食べるかもしれないので、ヨーグルトとプリンは持って行く。


 {RIRIKA}と書かれた看板が掛かったドアを開ければそこには予想外の景色が。俺的には大量のオナホとか電気マッサージ器とかが並んでいるのかと思っていたが、普通に女子の部屋だった。


 因みに女子の部屋に行ったことがないので、イメージの域を出ない話だが。


「とりあえずプリンとヨーグルト、学校のプリント置いときますね」


 ベッドに座る凛城先輩を横目に、近くにあった机に置く。


「貴方、ヨーグルト今食べたいから貰って良いかしら?」


「了解です」


 モジモジしながら言う先輩に、違和感を覚えながら蓋を開け、ヨーグルトにプラスチックスプーンを刺して渡す。


 すると俺の手首が掴まれ、そのままベッドに引き摺り込まれる。


「ちょっと?!凛城先輩っ!」


「ねぇ、誉くんっ、もう私、我慢できない」


 熱で頭がやられた凛城先輩の顔は赤く、熱く、ムンムンとした息が俺の耳元でこだまする。


「落ち着いて下さい。ねっ?冷静沈着に」


「落ちん沈着?」


 変な混ざり方してる。俺は今、ベッドに仰向けで寝転がる凛城先輩に乗っかるようにして、腕だけで倒れるのを防いでいる。


 これは凛城先輩と近いからとか全く関係ないのだが、俺のあそこも早く落ち着いてほしい。


「もう私のムラムラウイルスは貴方のフルポッキーでしか倒せないのっ予防注射ならぬ予防精射よ。貴方の子供がチンチンよ」


 ワクチンな。いや、俺の息子はチンチンだけども。とツッコまないと冷静でいられない。


「ほらっ、ハッスル、セッ◯ス!」


 今にも俺の俺が大爆発しそうだ。もう諦めてやっちゃうべきか?俺の座右の銘は『やらない後悔よりやる後悔』。最悪これが『ヤらない後悔よりヤる後悔』になるだけだ。


 もう二つの意味でから出そうな時だった。


「おねーちゃんなにやってるの?」


 空くんの声!俺は正気を取り戻し今の状況を俯瞰した。


 熱が出ている先輩を押し倒す俺。ベッドの近くには溢れたヨーグルト(意味深)。フルポッキーしたアソコに、ヤル気セッ◯スオリックスの凛城先輩。しかも胸元が結構開いている。


 終わった……。たが、それ以上に続きの空くんの問題発言に耳を疑った。


「おねーちゃん、いつも熱の時は静かで落ち着きがあるのになんでこんな状況に?さっき道であったお母さんは毎度の熱通り落ち着いてるって言ってたけど……」


「えっ?今までのわざとだったんですか?!」


 凛城先輩の顔が赤い。確かに違和感はあった。俺の呼び方が誉くんになったり貴方になったりと、でもまさかわざとだったなんて……。


「そっ、そんなわけないじゃないじゃない。空はどっか行きなさい。私たちもさっさとイキましょう?」


 いやもう無理ですよ……。

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