これが俗に言うふた◯りってやつですね!

 部活の新体制が始まりはや2週間。変わったことといえばこれ以上酷くなりようのなかった下ネタに菅島さんと言う拍車がかかり、止まることがなくなっていた。


 そんなある日……。


「えっ?今日凛城先輩休みなんですか?」


「そうなのよ。学校にも来てなくて。熱だって連絡は来てるんだけどねー」


 中居先生に報告を受け、この後の部活のことを考える。そう言えば今まで3人の時は凛城先輩が休みなら部活も休みになっていた。


 だがもう俺たちだって少し前の凛城先輩と同じ学年だ。部活としても認められた以上やらなければならない。


 一応ボイン……じゃなくラインで凛城先輩の休みと部活強行の連絡を全員に送る。そして放課後。


「先輩、今日部長休みなんすか?」


「らしいぞ。あとでお見舞いにも行かなきゃ」


「優しいっすね」


 たまたま廊下であった蘭堂くんと一緒に部室に入る。既に残り2人は部室で待っていたようだ。


「なんの話してたんですか?」


「差し入れがてら先輩がお見舞いに行くらしいんですよ」


 千佳さんの質問には蘭堂くんが+αして答える。確かにヨーグルトとかゼリーを持っていくのはアリだ。


「刺し入れってどんなプレイっ!1発おみまいしてイクなんて私許しませんからね!」


「しないわ!お見舞いの意味も違え!」


 凛城先輩が休んでも下ネタが止まらないのは平常運転と言ってもいいのだろうか。菅島さんにツッコミを入れながら苦悩する。


「でもそれなら沢良木先輩が言った方が良いのでは?女子同士ですし」


「いえいえ、誉くんは凛城先輩の彼氏ですから。それに、私家知らないので」


「でもこの人心配なんですけど!体調不良の先輩のおっ輩を先輩の体温計で……ああっ」


 菅島さんって実は凛城先輩よりヤバいんじゃないだろうか?なんだよ俺の体温計って。


「心配しなくて大丈夫ですよ。誉くんは常識の……常識……常識のある人なんですから」


「千佳さん?!ちょっと悩みましたよね!」


「俺から見ても常識とはちょっと違うっすよね。非常識とは思わないっすけど」


 俺への信頼早くも地に落ちてやがる。


「ま、最初にも言ったとおりここに常識人は居ないからな」


「私と沢良木先輩は平々タンポンな性格ですけどね」


「お前みたいな奴が普通でたまるか」


 平々凡々だろ。許容しても千佳さんまでだ。


「その通りっす。菅島さんは普通じゃないっすよ」


「そうだ。よく言った」


「誰もイッてないです」


「分かってるよ」


 懲りない菅島さんをあしらうと、今度は蘭堂くんにヘイトが向いた。


「でも蘭堂が1番異常なんですけど」


「いや、千佳さんの次に真面目だろ」


「そうっす。真面目っす」


「でも蘭堂、女じゃん」


 ん?俺の視線は蘭堂くんに。細身の体に薄い肌。凛城先輩よりぺちゃんこの残骸絶壁に学ラン。全然男ですね。


「その……」


「いや、どう見ても男だろ。学ランだし。俺よりカッコいいぞ。やめて欲しいくらいにわ」


「それは先輩がカッコよくないだけでは?」


 よーしカッコよくない先輩と喧嘩だオラ。


「すんません。俺の女っす」


「ふぇっ?!」


「誉くん知らなかったんですか?名前蘭堂 詩織ですよ?そうじゃなくても分かりますし」


 分かってなかったのもしかして俺だけですか?いや、まだ凛城先輩が残されてる。あの人も多分分かってなかったはずだ。


「でも男装してるのはなんで?」


「男になりたいからっすね」


「もう理由が漢らしい」


 強いなー。じゃあ蘭童くんじゃなく蘭童さんなのか。その上俺のハーレムのレベルが上がっただけだ。


「でも、人の秘密を簡単に暴露するのは良いこととは言えませんよ。菅島さん」


「ごめんなさい。でも最初はこの人が私は普通じゃないって」


「それは俺も悪かった」


 千佳さんの説教に反省タイムが始まった。何勝手に終わった感出してんだって話だよね。俺まだ蘭堂くんが蘭堂さんなこと納得してねーからな。


「人の秘密バラすのは醍醐味だいごみみたいなとこあるじゃないですか?」


「その性格が粗大ゴミそ醍醐味だよ」


「うわ、上手いの腹立つっすね」


「下手だったら下手でなんか言ってくるのに要求ハードすぎるだろ」


 理不尽極まりない。反省が終わったのかまた俺をいじり始める。さっきの反省の意味。


「でもそんなもんじゃないですか?彼女との初めてが初々しいすぎたらイケないですし、上手すぎたら上手すぎたで萎えません?」


 萎えるで掛かってるのが腹立つな。こう言うことか。いつもと変わった日常を放課後まで過ごし、凛城先輩のお見舞いの件まで時間を潰すのだった。

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