新入生です!

「新入生来てくれるかしら?!」


 春休みも終わり、俺は晴れて2年生となった。クラス替えでは見事に千佳さんと同じクラスになり俺のぼっち回避は確定した。


 と言うか選抜コースは1クラスしかないので前々から分かっていたことだけど。


「来ないでしょ……こんな部活……」


「誉くん。諦めたらそこで試合終了ですよ」


「そうよ。早漏しちゃってももう一発出せば取り返せるんだから」


 取り返せてないですよね?それ。童貞あるあるを聞きつつ時計に目をやる。もうそろそろ来るなら来てもいい時間だ。


 ガラガラ––


「部活見学に来ましたっ!」


「「本当に来た?!」」


 三人が共鳴しながら飛び上がる。凛城先輩も来ると思って無かったんですか……。少し小さめの体にショートボブの黒髪、ピンクのヘアピンが特徴の女の子だ。


「あの〜、すいません。俺も見学しに来たんすけどいいっすか?」


 その子の後ろからまたまた、いやタマタマ新入生。ツンツンとした髪型はベイブレードを彷彿とさせ、丸い瞳は学ランでも隠しきれない可愛さがある。


「よし!男ぉ!」


「何よ貴方、そんなにゲイボルグしたいのかしら?」


 別にゲイでもホモでも無いんですが……。ギリギリ俺にだけわかる隠喩で伝えてくれている。普通の人が一発目から聞いたら全員おかしな奴だと思われかねない。


「先輩ゲイなんですか?!」


 ヘアピンの子がスッと俺の手を握りうるうるとした目で見てくる。今ので分かったのかこの人……。


「距離が近いって……あと違うから」


 手を振り払いながら二歩下がる。


「なーんだ。面白くないの〜」


 面白くないのはこっちだってんだい。


「まずはこちらから自己紹介をしようかしら。私は凛城梨々香よ。よろシックスナイン」


 急なヘビー下ネタに俺とヘアピンの子がビクッとする。イッたわけじゃないよ。


「おっ、俺が空川誉、2年、さっきの人が三年でこの部の部長」


「私が沢良木千佳です。2年です。よろしくね」


 無理やり上塗りするが女の子の方はすでにニヤニヤしている。男の子はと言うとピュアらしく分かっていないようだ。


「私!菅島すかしま 十色といろって言います!気軽にスカトロって呼んでください!」


「よーし、お引き取り願おう」


 ナカナカぶっ飛んだ自己紹介。こんなの凛城先輩に伝播しない方がおかしい。


「何言ってるのよ。最高じゃない!スカトロちゃん!新しい風ね」


 いや、新しくないですし……風ってか嵐でしょ。ゲリラ豪雨。下痢ラ豪雨かも。スカトロだけに。


「無理ですよ。収集つきませんて」


「あのっ、いいっすか?」


「ごめんね。いいよ」


 男の子は少し顔を赤らめたあと口を開く。


「えーっと、俺の名前は蘭堂らんどう 詩織しおりです。えっと……卵っ……卵s……」


「よく頑張った、もういいぞ。いらない頑張りだ」


 学ランの上からガシッと腕を組み、男だけの話をする。後ろを向き、女性陣に2人して背を向ける。


「あのな、正直に言う。この部活は君には向いてない。ここはバカか自分がバカだと理解していないアホが来るとこだ」


「先輩はどっちなんすか?」


「俺はもちろんバカだ」


 後ろからはすでに仲良くなっている、菅島さんと凛城先輩が話している。あそこがタッグを組むと手がつけられない。なんとしてでも阻止しないと。


 それにしても蘭堂くん、やけに顔が赤い。どうしたんだろうか?


「そうなんすね。あのっ……ちょっと離れてもらっても……」


「すまん、近かったか。まじ申し訳ない。男子がこの教室にいるのなんか嬉しくて」


 過去にここに来た男性はモブA〜Cの3人。全員がとち狂っているのだ。ちなみにモブCは同じクラス。あいつ頭いいんだ……。八千さんはもう会うことはなさそうかな。


「でも2人も新入部員いらないのよ。どうしようかしら?」


「なんでですか?」


「だって4人で部になるでしょ?既に3人いるじゃない?この部室を使うなら狭いでしょ」


 まあ確かに……。ほとんど物置となっているこの部屋は正直余裕がない。既に圧迫感があるのにこれ以上はキツい。久しぶりにまともなこと言ったな。


「でもそれぐらいならなんとか出来ますって」


「そうね。でもテストはやるわよ。テストに落ちたらスカトロちゃんと卵子ちゃんはこの部活に入る権利がないわ」


 なんと言う独裁主義だ。って言うかあだ名決定しちゃったんですね……。


「じゃあまず韻を踏みましょう!」


 懐かしすぎる。もうあの頃から一年か、短いな。と、菅島さんからいくらしい。なんかもうオチ見えてるけど。


「淫乱には韻いらん、ビッチに俳句、ヒッチハイク。スカトロ、私はスカート取ろ。BL好きのピーエル滝」


 おい、コカインの名前出すなよ。韻だけに。じゃない。酷すぎる。


「上手い!」


「うまくはあるけども!」


 千佳さんの拍手に思わずつっこむ。BL好きなのか……だからあの反応。それを加味しても可愛い顔はしている。腐っても鯛、いやむしろ腐ったらゲイと言ったところか。


「俺、このレベル無理なんすけど」


「安心しろ。どうしてもってなら俺がフォローしてやる」


「じ、じゃぁ、性差別?それ軽蔑、世界はまさに多様性、俺はここにいる太陽系、女らしく?おん、晒し首」


「いいんじゃないですか?俺は文句なしです」


 おっと、見て分かる。凛城先輩にスイッチが入りました。俺はもう半端諦めている。


「性行為?それ最高位、世界をまたに多様性?俺のお股とヤろうぜぇ?女らしく?おら、晒し乳首」


 なんだよ晒し乳首。しかもこれ前の部分だけじゃなく蘭堂くんのところとも掛かっているのだから侮れない。


「凛城さんでしたっけ?流石っすね」


「だろ?自慢のイカれ具合だ」


「先輩、凛城様に文句あるんだったら自分も韻踏んだらどうですか?」


 既にイカれてことがわかった菅島さんは凛城先輩を崇拝している。


「そうよ、でもスカトロちゃん、間違ってるわ。この人の下ネタも凄いのよ。次期部長として頑張って」


「俺、次期部長なんすか?」


「俺も先輩の聞きたいっす」


 先輩の後押しに後輩2人の期待の眼差し、千佳さんの無言の圧力に負け、ネタを考える。俺だって四六時中凛城先輩の近くにいる。こんなの朝飯前よ。


「俺の成果、今日超見せる。俺のせいか?教調させる。下ネタ犯罪?下ネタバンザイ!ようこそチョベリ部、俺こそ、超very good」


「私より上手くないのに、下手じゃないから難しいのよね」


「流石に凛城先輩には敵いませんよ」


 菅島さんには実力で黙らせたと言うところだ。が、反撃のカードがあるらしい。


「先輩、下ネタバンザイって墓穴掘りましたね。掘るのは穴でもケツアナだけにしてください」


「どんだけBLさせたいんだよ」


 チョベリ部はまだまだ続くらしい。

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