好きです。likeです。裸イク//です!

「お帰りなさい。誉。久しぶりね」


「どのツラ下げて帰って来た」


 4年ぶりの母の顔は記憶より老けていて、その頃のような威厳は霞んで見えた。それでも俺はコイツのことを許すつもりは毛頭無い。


ほまれ、有名高校に受かったんだってね、父さんから聞いたのよ。お母さん鼻が高いわ。まさか勉強を続けてくれてたなんて、本当に嬉しい」


「誰が母さんだ。俺はお前の子じゃない。縁を切ったのはそっちだろ。今までどこほっつき歩いてたかは知らねぇし、興味もないけどいまさら復縁なんて出来ると思うな」


「何?反抗期?そう言うお年頃だもんねー。父さんに迷惑かけてない?」


 俺の強い言葉はサラリと受け流されにこやかに笑う。その笑顔が俺の憎悪を掻き立てる。何を今更…お前のせいで、お前のせいで俺がどれだけ苦労したか分かってないだろ。


 反抗期ってならそうだろう。今までまともに反抗する相手が居なかったんだ。俺はグッと睨みつける。


「確かに誉の気持ちも分かる。私が悪かったし反省してる。ごめんね。誉に辛い思いさせたのはこれから償わせて欲しい」


「許すかよ。さっさと帰れ」


「無理よ。私もここに住むもの」


「は?父さんはなんて…」


 俺は母さんが家を捨ててからずっと父さんと2人きりで暮らしていた。料理や掃除、洗濯など俺は勉強しながらもその片側を担いでいたのだ。


 今になってここに住むなんて虫が良すぎる。ふざけるな。俺は走って自室にこもった。あんなやつ、俺は許せない。




 冬休み中は、自室に篭り深夜になったら1日分の食事を取り、また自室に篭るを繰り返していた。


 そうして外にも出ず冬休みが終わった。3学期初の登校日、朝っぱらから仲良くしてる2人を見ながら行って来ますも言わずに学校へ向かった。


 家に篭ってる間、ずっと怒りが溜まっていてからか授業はまるで頭に入らなかった。ここ数日はぐっすり眠れていない。寝ようとしたら考えてしまうから。


 ふらふらとした足取りで部室に向かう。今日部活あったかな?どうでもいいや。今は家にいたくない。


 部室は鍵がかかっている。今日は休みだったか…トボトボと校舎裏に向かった。1人になるとトラウマのように蘇るヤツの顔。でも誰かに話す気にもなれず俺は日陰に腰掛けた。


「ヤルのは家に帰ってからにしなさい!」


「あぁ、凛城先輩…今日、部活休みですよね…どうしたんですか?」


「どうしたはこっちのセリフよ。貴方大丈夫?」


 凛城先輩はこちらの顔を覗き込みながら俺の隣に座った。空腹の腹を満たすようにラベンダーの香りが鼻を撫でる。


「ちょっと、悩みごとがありまして…」


「貴方が?そう……私で良ければ聞くけど?」


「楽しい話じゃないですよ」


「いいわよ。貴方がどれだけ私の戯言ざれごとを聞いてくれてると思ってるの?それぐらいお安い御用よ」


 話しやすいように明るく振る舞ってくれる。その優しさに当てられて目頭が急に熱くなる。


「先輩も沢良木さんを励ました時俺のセリフ聞いてましたよね」


「中学の時に乱パしてたって感じのやつでしょ」


「乱パはしてないですけどそうです…荒れてたんですよ。いじめとかしてたわけじゃないですけど、たまに学校休んだり、授業抜け出したり」


 凛城先輩はうんうんと頷きながら、俺の背中に手を置いてくれた。じんわりとそこから熱くなる。


「その理由が家庭崩壊なんですよ。俺、母親に勧められて中学受験してて、頑張ったんですけど失敗して……それを見損なったのか母は家庭を捨てました。父はそれを忘れるかのように仕事に没頭して、家ではずっと俺1人でした」


 鼻声になり始めた俺の背中を凛城先輩は何も言わずにさすってくれた。その優しい温もりに、ゆっくりと俺の目から雫がたれた。


「そっから堕ちるまでは早かったです。なんか勉強がしんどくなって、頑張った俺が遊んでた奴と同じ空間にいるのが苦しくて……クラスの奴らも分かってたんでしょうね。内心見下されてることぐらい。気づいたら浮いてて、家でも学校でも1人だった…」


 涙を拭うよりも早くポタポタと雨のように地面を濡らした。凛城先輩はピンクのハンカチを貸してくれる。


「最初はしんどくて1日休んで、でも毎日行かなかったら復帰しにくいことぐらい分かってたから苦しくても登校して……何言ってんでしょうね、俺……それでこの前母が帰って来たんです…父も乗り気で、勝手に家に溶け込むようになってて…」


 俺の涙がついたハンカチは少しずつ紫の面積を増やし始めた。俺のそのハンカチを握る力が無意識に強くなる。


「どうしたいかなんて分からないんですよ!許すつもりもないけど、このままじゃ今まで1人で育ててくれた父が報われ無さすぎるし、俺の過去は消えない。どうせアイツは俺がこの高校受かったって聞いて帰って来たんですよ。そうじゃなかったら来なかった!そう思ったら自分が惨めで、アイツが気持ち悪くてしょうがない!」


 まだチラホラ学校に人は残っているはずだが、俺は構わず声を上げる。言い切ると肩の力が抜けた。冬休みの間抱え込んだ負の感情が爆発したようにも思えて、少し落ち着けた。


「私、貴方の気持ちもどうしたら良いかも分かんないわ。ごめんね」


 子供をさとすような声で俺に優しく言葉をかけた。その通りだ。俺ですら今の感情もどうしたら良いかも分からない。どうしたいのかすら分からないやつに正しい助言なんて出来るはずがない。俺が俯くと凛城先輩はスッと息を吸った。



「ねぇ、私たち、付き合わない?」


「ははっ、…え?」


 一瞬、いや、十瞬ぐらい理解するのに時間がかかった。正直今も理解できてない。でもそれを見透かしたかのように凛城先輩は続けた。


「私、基本相談とかされないし、家族も裕福だから貴方のことは全く分からない。でも何となく貴方が家に居にくいことぐらいは分かる。それに何も感情を言葉で表す必要なんて無いのよ。人の感情なんて喜怒快楽だけじゃない。ムラムラだったり絶頂だったり興奮だったりおっぱいある」


「なんでそんなHな方向ばっかなんですか」


 自然と口角が上がり、閉じた目からは涙が跳ねた。ここで下ネタをぶっ込んでこれる胆力は見上げた…見下げたものだ。


「私が力になれることなんてなんにもない。でも、今みたいに貴方を少しでも笑顔にさせて、少しの間でも悩みを忘れさせて上げることぐらいは出来る」


「何ですかそれ…」


 俺に手を差し伸ばす凛城先輩は凛城先輩らしく、美しく、可憐で、下品だった。そんなHで叡智の凛城先輩は最後の一押しと言わんばかりに口を開ける。


「貴方、チョベリ部の活動は覚えてる?『言葉の真髄を学ぶ』こと。そんな言葉の真髄が言葉で表せられるはずないわよね。貴方の言葉に出来ないその感情が、言葉の真髄であり、これからの私との関係も言葉の真髄たりうるのよ」


 凛城先輩はそう言い終えると無邪気な顔で笑った。そんな笑顔がこれほどまでに愛惜しいと感じるとは思わなかった。そうか。神様も嘘は付かないらしい。


「凛城先輩!俺の悩み、吹き飛ばしてくれませんか?」


 凛城先輩の差し伸ばしてくれた白くて細い手を取る。


「貴方の、悩みも意識も吹っ飛ばすくらいキモチイ日々だからね!告白の返事は?」


モロチンもちろん包茎ほーけーです!」


アナル貴方、ヤルじゃない!」



 間違ってても、右曲がりでも、皮を被ってても、細長くても、俺たちは勃ちアヘる立ち上がる!いや何の話?!


 そうして俺たちのチンショー新章が開した。

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