顧問が欲しい!
「肛門が欲しい!」
急に立ち上がったと思えば何言い出すんだこの人。掴みなら満点だけど……
「何言ってるんですか……もう持ってるでしょ」
「そうじゃないわ!顧問が欲しいの!」
じゃあ顧問って言えよ。間に「う」を入れる必要性、皆無じゃん。
「要らないですよ。なんのためですか」
「それはもちろんその人の財布で色んなところに行くのよ」
資金源かよ。まぁ確かに資金不足感は否めない。面白いネタを使うにあたってのシチュエーションはやっぱり必要である。
「かわいそう……」
沢良木さんの誰かに向けた同情はこの部の決定権を握っている凛城先輩の前では無意味だった。
「だとしても入ってくれそうな先生いますか?」
「1人だけイク寸前の人がいるわ」
凛城先輩は自信満々に胸を張る……張れるように頑張ってのけぞっている。見苦しいな。
「誰ですか?」
「若くて!優しそうで!話が分かりそうな先生よ」
「そんな先生いましたかね?」
俺は沢良木さんに意見を求める。
「
「あっ……」
中居先生、本名
「美術は二年生までだから授業も少ないし選択科目だから宿題も出ない。テストもないから時間は余っているはず。その上この学校には美術部がない!絶対入ってくれるはずよ!」
「だとしてもあの人まだ26ですよ?結局資金不足は解決しないんじゃ……」
「誉君知らないんですか?あの先生は美術展を開けるほどの有名画家ですよ?」
クッソ!なんてご都合主義だよ、丁寧に一回登場してる分、伏線っぽくて言い返しにくい。
「つまり中居先生じゃない理由が無い!満コウイックゥで賛成ね」
「満場一致な、ゴリ押しじゃねぇか」
そうして俺たち3人は美術室のある南棟まで行き、中居先生を探した。
「あの人じゃ無いですか?」
沢良木さんの指さす方を見ると向こうも気付いたのか振り返る。振り向きざまに揺れる長い黒髪はツヤツヤで光を反射していて、眩しかった。
「あら、梨々香ちゃんじゃない、どうしたの?」
「中居先生、チョベリ部の顧問になってくれませんか?」
めっちゃ単刀直入だな。「そう!チン刀挿入よ!」うっ、頭が……くっ、俺の頭の中の凛城先輩がッ。何やってんだろ俺。
「チョベリグ?」
「チョベリ部です」
先生すら把握してないのかよ。なんで美術部なくてチョベリ部が存在するのかはこの学校の七不思議の一つと言っても良いだろう。
「顧問?なんで私?」
「論理的に考えて先生が一番理想だと思いまして」
論理的に考えてたか?全ての論理に謝らなきゃいけないレベルだよ。
「そう言ってくれるのは嬉しいけどな〜私、体育大会の雑用もあるし、事故喚起のキャッチフレーズも考えなきゃいけないし、色々やることあるし……」
「ほら、やっぱり忙しいんですって」
「そこをなんとか、お願いしますよ」
渋る中居先生と粘る凛城先輩を見ながら、俺は凛城先輩、先生には普通の態度なんだな。と感心していた。
「分かりました!私たち3人!凛城梨々香!骨皮スネ夫!触れば痴漢!がこれからの業務手伝います!だからお願いします!」
おい、骨皮スネ夫って俺のことじゃねぇだろうな?あと触れば痴漢とか文字数すら違うから。
「ほんと?」
中居先生が俺の方を見てくる。
「まぁ、出来る限りのことは……」
「なら……しょうがないわね。約束よ。とりあえず職員会議あるから行くわね。また明日色々聞くからね〜」
白いワンピースに抹茶色のロングコートを翻して手を振る中居先生が、チョベリ部の顧問になってしまった。
「これで顧問獲得ね!アンマことやらへんなことまでヤリ放題ね!」
先生がいなくなったらこれかよ……ちょっとは自重してくれ。
「中居 沙月……中居先生のあだ名は中イキにしましょう!」
「マジやめろ!!」
「体育大会の雑用とか言ってましたよね。実行委員やらされたりするのかも」
「いいんじゃないですか?皆んなでやればきっと楽しいですよ!」
確かに沢良木さんと一緒ならしんどくない気がする。
「貴方?今痴漢ちゃんと一緒にテント設営してあわよくば俺のテントも!とか思ったでしょ!」
「思ってねぇよ!」
「男ってのは腰と心に一物を抱えてるんだから」
心に一物、何か企みがあると言う意味の慣用句だ。腰にイチモツ、俺の股間についているチ◯チ◯のことだ。
「抱えてねぇよ!」
こうしてチョベリ部は顧問を1人獲得して、また一段と賑やかになったのだった。
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