人間万事塞翁が馬!
「空川くん!こっち手伝って!」
「はいはい」
今日も今日とて文化祭の準備に明け暮れている。昨日と変わらず俺は
「人形ってここ置いた方が怖いかな?」
「落ちてる方が雰囲気でるとおもいますけどね、廃墟っていう設定なら通り道の隅にでも転がして置いたらどうですか?」
「ナイス案だよ、空川くん」
グッと親指を立ててくるので、とりあえず俺も親指を立てる。
「空川くんって思ったより柔らかいよね」
「どう言う表現ですか、柔らかいってあんまり人に使わないでしょ」
「いい印象ってことなの」
天野さんはニコッと笑った後次の荷物を取りに行った。前にも言ったがこのクラスの出し物は沢良木さんのクラスと合同でお化け屋敷である。沢良木さんも今は俺のクラスで井戸の色塗りをしている。
「沢良木氏のこと見ているのバレバレどすペロペロ」
「あぁ、モブCか、一応君も沢良木さんと同じクラスなんだよな」
「そうドスペロペロ、ただ
俺はモブCの言葉に耳を疑う。沢良木さんがあまり人から好かれていないと言うことだろうか?女子から妬まれることはあっても男子は全員虜になってもおかしくないはずだが。
「なんで?男子なんて沢良木さんは理想の女性だろ」
「誉氏は確か中学生からの知り合いであったな。だったらその背中を憧れるのは不思議ではないドスペロペロ。しかしこの学校は国でも三番の指に入る進学校ドスペロペロ。プライドの高い奴らはあんな神は二物を与えずの対義語みたいな人をよく思うはずがないドスペロペロ」
「確かに、言わんとしてることは分かるか」
実際中学の時はぶっちぎりで校内順位一位だったから少し妬まれていた噂はあった。が高校になってそれほどまでに恨まれているとは知らなかった。
「と言ってもいじめが起こったりするほどではないドスペロペロ。心の内で少し妬んでいるぐらいドスペロペロ」
ドスペロペロのせいで全く話が入ってこないが、おおかた大丈夫ってことなのだろうドスペロペロ。
–––ガシャん!
「あっ……!」
クラスの視線が一気に音のした方に向かう。クラスの真ん中で沢良木さんが灰色のペンキをこぼしてしまったようだ。慌てて直したこともあって幸い大事には至っていない。
たが、モブCの言っていたことがここで分かった。
「ねぇ、千佳ちゃん、学年二位なのにこんなことも出来ないの?ここ通れないじゃん。邪魔しないでよ」
「あっ……ごめん、なさい……」
「謝るんじゃなくてさ〜」
クラスのリーダー格と言うのだろうか?容姿もそこそこ良くスリムな体型、強い言葉と目つきを持つ女の子が沢良木さんに近づく。
「すぐ、拭くので……」
沢良木さんが立ち上がり雑巾を取りに行こうとする。しかしペンキで滑りバランスを崩してしまった。何とかこけることはなかったが踏ん張った時にさっきの女の子の靴下にペンキが飛び散ってしまった。
「はぁ?何してくれてんのよ。なに?ちょっと言ったからってやり返し?調子乗らない方がいいよ?」
その子がまた沢良木さんを威嚇する。確かにペンキをこぼした沢良木さんに非があるし、靴下が汚れたのも沢良木さんのせいかもしれないがそこまで怒る必要があるのだろうか。やはり
この空気。あんまり好きじゃないんだよな。
「まぁ、まぁ、今喧嘩してもペンキが乾いちゃうだけなんで、先にみんなで拭きましょう」
あまりクラスでは目立ちたくないがその子と沢良木さんの間に立って提案してみる。
「別に喧嘩してるわけじゃないんだけど?あと何で皆で拭かなきゃいけないわけ?こぼしたの千佳じゃん」
すごい目つきで睨んでくるな。やめてくれ。俺は争いなく場を収めたいだけなんだ。
「そうですよね。じゃあ僕と沢良木さんで出来るだけ拭くので待っててくれませんかね?靴下も何とかするんで」
これ以上ないぐらいに下手に出てやってるがこれでも言い返してこられると流石に困る。
「何、悪者扱い?全部千佳が悪いんじゃん。そういうのやめてくれない?」
そういうのやめてくれない?は俺のセリフなんだが。
「誰にでも失敗はあるんですし、許してあげてください、お願いします」
ガラガラガラ–––
クラスの扉が開く。視線の先には……
「そうよ!誰にでも失敗はあるの!上の穴と下の穴、入れ間違えても許してあげて!結構あるあるでア◯ルア◯ルなんだから」
ほとんどの人が初めましてなのにサラリと凛城先輩は言ってのけた。テロだろこれ。
「あんた誰?あとキモ」
全員の心の中の声をその女の子が代弁する。めっちゃ直球に言うじゃん。
「あたし靴下濡らされてんだけど?被害者なのに何でそんなこと言われなきゃいけないわけ?」
「別に靴下が濡れるぐらい良いじゃない。いつもパン◯濡らしてるわけでしょ?人間マ◯コ最高なクパァよ。小さなことで一喜一憂しなくて良いじゃない」
人間マ◯コ最高なクパァ?もしかして人間万事塞翁が馬じゃねぇだろうな、語感で乗り切りすぎだろ。わかんねぇって。
「まじ気持ち悪いんだけど。冷めたわ。うっざ」
その子はそんな捨て台詞を吐きながら教室を出て行った。
「悪口を吐くんじゃなくて、もう少し可愛げのある下着を履きなさーい!」
その後を追うように凛城先輩もどこかへ行ってしまった。嵐のような人というか荒らしのような人だな。
「誉くん。助けてくれてありがとう。大好き」
……えっ?
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