水着回ですっ!

「海よ!シーよ!オーシャンよ!ビューよ!」


「ビューは景色な」


 俺たちチョベリ部は学校から電車で一時間ほどの伊豆半島まで来ていた。


 凜城先輩は「沖縄でサーターアンダギーを電気アマギーしたい!」とかほざいていたがお金の関係上静岡で限界だった。


「みんな!下に水着は着ているかしら?」


「はい」


「一応着てきましたけど……別にここで着替えればいいでしょ」


「分かってないわね、こう言うところの更衣室は行為室よ。邪魔しちゃダメじゃない」



 何の話してんだこの人。と言うか沢良木さんのおっぱいがおっぱいでおっぱいだ。


「沢良木さん、水着似合ってますね」


「そうですか?ありがとうございます」


「ちょっと!先に先輩から褒めるのが礼儀よ。さぁさぁ、褒めてみなさい」


「じゃあ早速泳ぎましょうか」


「そうですね」


 俺たちはビーチサンダルを脱いで灼熱の砂浜を歩く。


「ねぇってば!良いわよもう。どうせ私みたいなペチャンコアップルパイパイには興味ないんでしょ」


 ついてはや3分で凜城先輩が拗ね始めた。


「それより先にパラソル建てないとですね」


「じゃあ私が貰ってきます」


「あっ、その前にあなた達ボインやってる?」

「ボイン?何ですかそれ?」


「ボインよ。メッセージのやり取りをするアプリ」


 ラインかよ。そう言え。俺たちはここで初めて連絡先を交換した。沢良木さんのアイコンはブルドッグの写真で、凜城先輩は誰か男の人がブリッジしているアイコンだった。


「このアイコンペットですか?」


「ええ。そうよ。私のペット」


「凜城先輩のアイコンの話してないんですよ、後絶対違うでしょ」


 凜城先輩のアカウントは謎が広まるばかりだった。


「はい、私のはフレンチブルドッグです」


「へー、ブルドッグと違うんですか?」


「当たり前よ。キッスとフレンチキッスぐらい違うわ。」


「何でキスで例えるんですか……」


 舌入れるか入れないかの違いなら見かけは一緒じゃん。


「耳の形が違うんですよ」


「確か破廉恥ブルドッグは耳の形がバックイヤーァ//って言って、コウモリの羽みたいな形をしているのよ」


「ツッコミどころ多すぎだろ」


「ブルドッグはロープイヤァー//って言ってバラの花に似ているらしいわよ」


「まずはボケを回収させてくれ」


 ロープイヤァー//って何だよ。薔薇とか言ってたからローズイヤーなのかな?瞬時にツッコめるかよ


「凜城先輩。この人誰ですか?」


 凜城先輩曰くペットのこの人は一体誰なのか知りたい。


「あー、私の弟よ。どう?可愛いでしょ」


「ごめんなさい。ブリッジを見て可愛いと判断できる感性を持ち合わせてないです」


「ブリッジって究極の姿勢なのよ?アソコを突き出して、でも自分は身動きが取れないっ……想像しただけで体がぁっ」


 凜城先輩が自分で体を抱きしめ、もだえる。何やってんだこの人。


「私、パラソル取ってきますね」


「ありがとうございます。俺たちは場所取っとくんで」


 沢良木さんと別れてパラソルを立てる場所を決める。夏休み始めということもあって割と人が多い。


「思ったのだけれど海って何をすれば良いのかしらね?実際割とやることないわよ?」


「これも現代っ子の性ですよね」


「海にぷかぷか浮いて楽しいのかしら?浮かれすぎよね」


 凜城先輩がここぞとばかりに俺を見てくる。『浮かれすぎ』で掛けたからってこと?


「そんなに上手くないですよ」


「厳しいわね」


 なんて言いながら良さげな位置で足を止める。


「じゃあ貴方、ここにパラソルとテント立てちゃって!」


「テントとか無いですけど……」


「違うわよ。股間のテントよ」


「立てるか!」


「腹じゃなくてチ◯チ◯を立てるのよ」


 さっきより上手いのが腹立つな。公共の場でもお構いなしに下ネタを言いまくる凜城先輩には肝を冷やす。


「あっ!ほまれ君!手伝ってー!」


 沢良木さんが俺たちを見つけ手を振る。今すぐ行きます。お嬢様。


「先に棒を立てるんですかね?」


「普通は傘が先だと思いますけど」


「そうですか。」


「普通は先に棒よね!その後に膜を張るの」


 一体何の話してるんだ……。


 苦戦しつつもパラソルを建て終わった俺たちはジュースを片手に休憩していた。


「何しましょうか?」


「棒倒ししましょう!貴方、早く立てて!」


「もうチン◯を立てるくだり良いですから」


「本当に?痴漢ちゃんに棒を倒して貰えるわよ」


 ちょっと迷っちゃうからそう言うのやめろ。俺はまだ健全だ。嘘だね。もう毒されてるね。


 てか俺たちまだ遊んでないっ!

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