ゲイとボルグとゲイボルグ!
日曜日。友達も少なく暇を持て余したエセ文豪の俺は今日も今日とて本屋に来ていた。ショッピングモールや水族館、小さめの遊園地などこの近くには結構いろいろ充実している。
因みに次の木曜から二日間中間テストがある。まぁ、そんな大切な最後の土日をドブに捨てると言う青春もしてみたかったのである。中学の時は高校に入るために猛勉強だったし。
俺はふと視界に入った『走れメロス』に目をやる。
「懐かしぃー」
「あら、『
「……なんでいるんですか」
「来年は受験生だからね。参考書でも買っておこうと思って」
私服の凜城先輩は学校以上に清楚さが増していて、絶世の美女感がすごかった。まぁ中身は残念なんだけど。
「誰ですかペロスって、そりゃ激怒しますよ」
「始まり方は確か……ペロスは激怒した。必ず、かの羞恥猛チンの王を孕まねばと決意した。だったかしら?」
羞恥猛チンって何?!直立猛チンと同レベルで訳がわからん。猛チンシリーズ第二弾。
「走れメロスは友情と人間愛を象徴する作品ですよ。あんまりバカにしないでくださいよ」
これでもエセ文豪。美しい作品を下ネタで汚されるのは看過できない。
「でもね貴方、太宰治は人間不信でも有名だったのよ?その人が自ら信じることの尊さなんて表現するかしら?」
「自分で作品を通して人間不信を克服しようとしたのでは?」
さすが現代国語一位同士と言わざるおえない会話をしている。良いよね。趣味で語れるの。下ネタは嫌だけど。ほんとだよ?
「私が思うに、あの作品は太宰治の友情への卑下の気持ちを表していたのではないかと思うの」
「その心は?」
「最後の最後で人間愛や友情の象徴であるメロスは裸だったでしょ?わざわざそんなことする必要ないのにね。つまり太宰治が意図的にバカにしていたのではないかと言う考えよ」
確かに、そこに何かしらの意図があると考える方が自然か。なんてったってあの太宰治だ。どこかの誰かみたいに下ネタをただ書き連ねているだけじゃない。
「そんなことより、童話ってエロい話多いわよね」
「そんなことないでしょ」
「だって、大きなカブとか酷くない?お爺ちゃん1人じゃ抜けなくなったから、妻や娘まで手伝わせたのよ。みんなで力を合わせて腰に力を入れてヘコヘコしてたのよ」
物は捉えようだな。あとヘコヘコしてたって言うな。どんな擬態語だよ。
「3匹のメス豚もそうよ」
「俺、その童話知らないです」
「みにくいア◯ルの子とか」
「アヒルの子だよね!?なんでそこに◯入れるの?!」
「北風と太陽なんて凄いわよね。完全に脱がしに行ってるもの。」
これで分かったこの人まともな幼少期過ごしてない。今更かよ。余すことなく汚れた童話たちは悲しんでいるんだろう。
「で、貴方はナニしにここへ?」
「小説を買いに」
「へー。なんの小説?」
「決まってないですが恋愛小説がいいですかねー」
「あー、官能小説ね」
耳腐ってんのかなマジで。本屋で売ってねぇだろ。
「話聞いてました?」
「どっちも
「はいはい、」
俺は適当に本を一冊取り、凜城先輩に目をやった。BLコーナーを凝視している。腐っていたのは性癖でした。
「何見てるんですか?」
「いやね、竿役2人ってバランス悪いわよね。って考えていたのだけど、これこそ究極体かなと思って」
全然話についていけないので視線で説明を求める。
「男女だと穴3つの棒1つでしょ?」
「もう大丈夫です」
「でも男と男だとその名の通りマンホールが2つとゲイボルグが2本よ。やっぱり完璧な比率よね」
つまりロミオとロミオが完全体と言うことだ。どう言うことだよ。
「つまり、そう!ゲイボルグからボルグが取れちゃうって話!」
つまりゲイである。残ったボルグはどうなるんだよ。
「因みに残ったボルグはボルグ指数と言って夜の運動のしんどさを表す数になるわ」
「ボルグ指数はそんな使い方しません」
俺の忠告も聞かず、凜城先輩は考える体制に入った。因んでボルグ指数とは運動のしんどさを表す指数のことである。
「つまり、ゲイボルグとは男性同士の行為の運動量指数……?」
「何、口走ってんだ」
ゲイボルグはアイルランドの説話に登場するクー・フーリンの槍である。決してゲイの運動指数を表す言葉じゃない。
凜城先輩は赤本を一冊持ってレジに向かった。それぞれで会計を済ませる。
「赤本ってこんなに高いのね」
「結構しますよねー」
「この後暇?」
凜城先輩が前屈みで見上げるように聞いてくる。私服だと雰囲気間違いどこか可愛らしい。
「暇ですけど」
「じゃあ水族館行こう!」
「……へ?」
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