女子が入りました!

「入部したいんですけど良いですか?」


 ドアに立っているその女子は紛れもなく沢良木さわらぎさんだった。もう一度説明しておこう。沢良木さんとは俺がこの難関校に通う理由となった人物で純粋無垢な少女である。


「あの、沢良木さん。やめておいた方がいいと思いますよ」


「えーっと、北川くんですよね。どうしたでしょうか?」


 おっふ、名前覚えててくれた。初対面なのに。


「いやあのっ……」


 言っても信じて貰えないだろう。隣にいるこの美少女と言って差し支えないこの人が下ネタモンスターだなんて。イッたら信じて貰えるだろうか?


「入部するには条件があるのよ。貴方、テストをやってあげて」


 凛城先輩が俺と沢良木さんにそう言う。ちょっと待った。俺テストとか知らないんですけど。


「俺その条件知らないんですけど」


「あら、ヤッたじゃない。第一肛門のやつよ」


 あぁ、あれか。俺がやらないといけないの?普通に嫌なんだけど。


「一応もう一回聞きますけど本当に入りたいんですか?」


「はい」


 一体どうしちゃったんだ。はっきりと言ってのける沢良木さんに俺は申し訳なく無茶振りを仕掛ける。


「韻を踏んでください」


「えっ、あっ、えーっと、私、沢良木a a a i 千佳i a頭にa a a i きたi a、急な無茶振りu a u i、マジかうわ無理u a u i……

どう、ですかね……?」


「全然大丈夫です。多分」


 俺なんか「あまくない無いで」見たいなダジャレかどうかも怪しいので突破したのだから文句はないだろう。


「第一関門は突破です」


 俺がそう言うと隣から凛城さんが膝で俺の横腹を叩いてくる。


「KO・U・MO・NN」


 声には出さず口の形で俺に訴えかける。黙ってくれ※声は出てません。(上の口からは)


「全然ダメよ。これぐらいじゃないと。貴方、沢良木 千佳、アナ、触れば、チカ?急な腰振り、吸うなクリクリ… どう?」


「最悪ですよ。特に◯◯ル、触れば、◯カン?あたりが、んでなんですか吸うなクリクリって」


 でも俺よりは上手いんだよな。2つは絶対音合ってるし。


「すごいです!やっぱり私もここで成長したいです!」


 沢良木さんは何をどう勘違いしたのか目を光らせている。多分韻で言えば沢良木さんの方が数段上だった。


「えー、じゃあ好きな言葉はありますか?」


 これ面接みたいだな。俺の時なんか下ネタに気を取られて無茶苦茶だったけど。


「質実剛健です」


「膣膣冒険ね」


「どこ冒険してんだよ」


 マジやめてくれ。沢良木さんが汚れちゃうだろ。


「ち……つ……?」


「沢良木さんは気にしなくていいですよ。因みに他にはありますか?」


「さっきと矛盾するかもしれませんが猪突猛進も大切だと思います」


「直立猛チンね」


 直立猛チンってなんだよ。すっごい立ってるンのことなんだろうけど。


「いいんじゃないですか?大腸突破で」


「大腸…?」


「あっ、気にしなくて大丈夫です」


 やば、ミスった。隣では凛城先輩が肩を振るわせて笑っている。


「いいわ、入部しても」


 挿入じゃないんだな。


「ありがとうございます。では改めて、私は沢良木千佳と言います。初めまして」


 軽く沢良木さんはお辞儀をする。


「俺は空川 ほまれです。よろしくお願いします」


 沢良木さんに釣られ少し硬い自己紹介をする。もちろん凛城先輩は……。


「私は凛城梨々香。以後お見シ


「シコ?」


「本当に気にしなくて大丈夫です。無視してください」


「貴方ね。ちょっと先からひどくない?部長は私よ」


 拗ねている凛城先輩を放って話を進める。


「週4で活動してるんですが勉強とか大丈夫なんですか?」


 学年2位の人だ。努力によっては一位も狙える。こんなところで時間を無駄にしていいものか。


「それを言うのなら誉君もそうでしょう?」


 おっふ、さらっと下呼び。


「まぁ、そうですけど。て言うかなんで俺のこと知ってるんですか?」


「学年5位までは顔と名前を一致させてるんですよ」


「そうなんですか……」


 そんなことしてるんだ。と、細かいことに感心する。


「ス。あなた達ってそんなに頭いいの?」


「俺は学年4位で沢良木さんが2位です」


「アー、ナルほどね」


 勝手に頭の中で「アルほどね」と変換される。この短い期間汚染されてきた。


「まぁ、いいわ。明日もあるから来てちょうだいね」


「明日もあるんですか?」


「毎日ア◯ルわよ。チ首を長くして待ってなさい!」


「どこ長くしてんだよ!ほんと、もう……」


 クソデカため息を吐く。それを見て沢良木さんが「仲良しなんですね」と言い、凛城先輩が「出しなんですよ」と返す。


 あー、嫌だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る