幕間SS:マリエンライブ打ち上げパーティー
ライブが大成功に終わり、俺達はマイクロバスで峰屋のおじさんが予約した一流ホテルの宴会場に行った。
川崎駅前の高層ホテルの最上階であった。
「川崎駅前にも高級ホテルあったんだね」
「縁が無いから知らなかった、高級ホテルって赤坂にあるもんだろう」
「バウバウ」
エレベーターの中でチアキと貧乏人の感想を述べたら、峰屋ママに笑われてしまった。
「本当にみのりを助けてくれてありがとうね、タカシくん」
「いえ、みのりは仲間ですから」
「バウバウ」
一流ホテルなので、くつしたは門前払いかと思ったが、スタッフさんが「くつした様、当ホテルにようこそ」とにこやかに歓迎してくれた。
くつしたも尻尾をブンブン振ってご満悦である。
チン。
エレベーターが着いて二十五階に一歩踏み出した。
おお、なんかエレガント空間が広がっているぞ。
「飯めし~~」
「鏡子おねえちゃん、はしたないわよ」
「あんまり高級な所は好きじゃ無いなあ」
「ふ、異世界の宴会か、楽しみだわい」
「レグルス陛下もありがとうございました」
「いやいや、お宅のお嬢さんはワシの推しですからな、当然ですぞ」
レグルスは今、ラオウさんモードでマイクロバスに乗ってやってきた。
赤いりゅうとしたスーツ姿で、なかなかの偉丈夫ぶりだね。
『Dリンクス』のみんなは普通に配信冒険者でホテルに乗り込んでいる。
マリちゃんなんかはギラファフルメイルでとても目立つよ。
「やあ、今日のライブは大成功だったね、みのりくん素晴らしかったよ。タカシくんも救出ありがとう」
宴会場ではリーディングカンパニーの高橋社長と外人のお偉いさんっぽいマダムが迎えてくれた。
マリアさんの方の芸能関係の人かな。
会場には先に、チヨリ先輩と、『サザンフルーツ』のメンバーが居て、ソファーで座っておしゃべりをしていた。
ヒデオさんもいるな。
エレベーターから、マリアさんと、『ホワッツマイケル』の面々が出て来た。
「おう、タカシ、大活躍だったな」
「マイケルも【跳躍】で斬り掛かってくれてたじゃないか」
「いやあ【絶対回避】はキツいよなあ」
マリアさんはみのりの近くに行ってハグをした。
『ホワッツマイケル』の人達は世界一の配信冒険者パーティでもあるので、堂々としてるな。
わりとラフな格好だけど。
エレベーターから続々と配信冒険者達が吐き出された。
東海林を筆頭に『オーバーザレインボー』。
先生方の『臨海第三ティーチャーズ』
あと、俺達と同じぐらい場違いな感じの『ダーティペア』改め『ラブリーエンゼル』の四人。
『ホワイトファング』の人達。
なぜか田上さんは居ないな。
『チャーミーハニー』の人達は居ない。
きっと大車輪で事件の後始末に駆け回ったり、人知れず、この打ち上げを警備しているのだろう。
というか、石橋さんが宴会のスタッフに混じって飲み物をくばっているぞ。
「おつかれさまです」
「いえいえ、仕事ですからね。はい、タカシくんはビール? シャンパン?」
「コーラで」
「私もコーラコーラ」
「はいはい、未成年でしたね」
「ビールくれビール」
「はいはい、キリンとハイネケンがありますよ」
「キリンキリン」
石橋さんはくるくるとよく働くなあ。
鮫島さんや、鏑木さんも警備に入ってるのかな。
『ダーティペア』がシャンパンを取ろうとして宮川先生に怒られていた。
結構会場には外人も多いな。
ライブ関係者かな。
バックバンドは外人さんだったしな。
ステージの上には大型ディスプレイがあって今日のライブの映像が映し出されていた。
「なんだか一仕事終えたって感じだな」
「本当にそうね、成功してよかったわ、誰も怪我とかしなかったし」
「そうだな」
俺はみのりと笑い合った。
壇上に高橋社長が立って打ち上げの挨拶をした。
空前の動画同接数でマリエンライブは大成功を収めたとの事。
「この大成功を受けて、『マリア&みのり』は夏にアルバムを発売、日本全国ツアーと全米ツアーを行う予定です」
歓声が巻き起こった。
うん、そうだよな、みのりはアイドルデビューという夢を果たしたんだから、地平線を目指してどこまでも旅をしていくんだろう。
マリアさんが壇上に立って、スタッフと我々にお礼の言葉を述べた。
沢山の人が協力して作った凄いライブだったんだよ。
俺達も、ロシア人からの妨害をはねのけるという事でライブに貢献したんだな。
みのりが壇上に立った。
「本当に、一生の思い出になる一日でした。私は今日という日を忘れる事は無いでしょう。ほんとにほんとに、ありがとう、『Dリンクス』のみんな、そしてタカシくん。ありがとう」
涙ぐむ必要は無いぞ、みのり。
大成功は、みのりとマリアさんが頑張った成果だ。
胸を張って誇って良い。
もう、ロシア人たちの横やりも入らないし問題は全部無くなった。
うん、みのりと俺達『Dリンクス』の道はここで分かれるんだな。
みのりは芸能活動に、俺達は迷宮攻略に。
寂しいけれど、仕方が無いことだな。
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