第297話 ミハエルに総攻撃を仕掛ける

 ミハエルの目からビームを[縮地]で避けて、鏡子ねえさんは両足を振り回し、巨体の胸に『蹴早』の真権能[角折]をぶち込んだ。

 ドガガンとリズミカルに踵に生えた刃を叩き込む。

 ミハエルはぐほっと血を吐き出し後ずさった。

 依然として【スロウバラード】がエンドレスで掛かっていてミハエルは素早く動く事が出来ない。

 俺は素早くミハエルとの間合いを詰める。

 上のキャットウォークから、泥舟とチアキが銃撃をくわえている。

 チアキが泥舟と合流した。

 竜魔石弾が使える。


 レグルスが羽ばたき突進し、ミハエルの肩に牙を突き立てた。

 石化ガスがレグルスの体を石に変えるが、一瞬で朱雀さんが【解呪ディスペル】を唱え石化を解く。


 ああ、僧侶が居ると安心だな。

 回復も符を飛ばして治してくれるし。

 助かる。

 俺は安心してミハエルに接近した。

 『彩雲』の[爆破装甲]を使ってドカンドカンと巨体に攻撃を加える。

 ビームが飛んでくるが、素早く避けて鶏の足に切りつける。

 深く踏み込めるので斬撃も深い。

 三つの爪の一つを切断した。


『お お お お お っ !! う っ と お し い デ ー ス !!』

「きゃりありぃああるうううぅぅっ!!」


 ガチャンガチャンと『金時の籠手』が変形し、三段階目に突入した。

 地面から黄色い光が浮かび上がって『金時の籠手』に宿った。

 箒の左手を避けて鏡子ねえさんは体をねじる。


 渾身の力が全身に宿り、時が止まったようだ。

 戦場の音が、一瞬途絶えた。

 『金時の籠手』の真権能[剛力]、シンプルだが使いやすい必殺パンチだ。


「くあああああっるうううううっ!!」


 バキャーーン!!


 ミハエルの巨体の土手っ腹に[剛力]が入った。

 五メートルの巨大な体が宙に浮いた。

 パンチの勢いを使い、鏡子ねえさんは前転し、ミハエルの頭に[角折]をぶち込んだ。


『ぎゃあああっ!! ぐあああっ!!』


 巨体が床に転がった。

 俺は踏み込み、『暁』でミハエルの腹を切り裂く。

 大量の血が巨体から噴き出してきた。


 【弱点看破】が発生した。

 胸の真ん中、心臓から少し下だ。


「泥舟!! ここに撃ってくれ!!」

「了解!!」


 俺は『暁』を振るい、弱点にバツ印を描いた。


「いけない、いけない、あれじゃ破裂しちゃうぞ♡」


 サッチャンが素早く飛んで泥舟の横に行き、長銃の銃身に手を当てた。

 何かの力で長銃が光輝いた。


「今回は特別に補強してあげる、この銃は、百二十レベルの魔石を発射するようには出来てないのよ♡」

「ありがとう、サッチャン」


 泥舟はそう言うと、ためらいなく引き金を引いた。


 ドカアアアアン!!


 大砲のような轟音がして、泥舟が反動で後ろにひっくり返った。


 真っ赤な竜の形の砲撃がミハエルの胸板に当たり、吹き飛ばし、貫通し、タンカーの壁を破って海中で大爆発を起こした。

 下腹に響く振動がして、タンカー全体が大きく揺れた。

 海水が入ってくる。


『が 、が は っ、な、何 を し ま す カ ー、あ ま り に 酷 い 狼 藉 で ー す、 あ あ、あ あ っ』


 ミハエルはまだ生きていた。

 体の半分を竜の魔弾に吹き飛ばされていたが、欠損部分を枝と根で繋げてよろよろと立ち上がる。


 タフだな!

 早く、決着を付けないと、船が沈む。


 俺はミハエルの巨体に飛び移り登り始める。

 こいつを殺せる急所はどこだ。


 奴の背中に少し出っぱった部分があって、光輝いていた。

 あそこが弱点だ。


「【オカン乱入】!」


 光の柱から、かーちゃんが現れ、ミハエルの肩に乗った。


「お、おう、罪獣かいなっ!」

「かーちゃん、背中の出っ張りが急所だ。タイミングを合わせて攻撃だ!」

「わかったで!」

『や ら せ ま せ ん や ら せ ま せ ん っ』


 ミハエルがかーちゃんにむけて目からビームを発射した。


「いい加減、くたばりやがれっ!」


 レグルスが首に噛みつき下に引いて照準を狂わせた。


「きゃりありああぁるううっ!!」


 鏡子ねえさんがミハエルの頭部に向けて、踊るように[剛力]パンチをぶち込み[角折]の踵落としでぶち込んでいく。


 丸まったミハエルの背中を走って、かーちゃんと同時に背中の出っ張りにたどり着いた。


「『おおきくおおきくするどくつよく~~♪ あなたのちからはこんなものじゃないわ~~♪ がんばれがんばれちからをいれろ~~♪』


 みのりの【威力増幅の歌】が掛かった!!


「いっくでー、【輝く戦棍シャイニングメイス】!!」

「『暁』、[浄化]で焼き払え!!」


 俺は『暁』に[浄化]の光を纏わせて、出っ張りを貫く。

 かーちゃんは輝くメイスで出っ張りを打ち砕く。


 俺とかーちゃんの攻撃は同時にミハエルの背中の出っ張りに当たった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る