第295話 『傲慢』の罪獣『バーバ・ヤガー』
「魔物化したという事は、ワシが加勢しても良いのだな」
『オーケー、俺も手伝うぜっ、タカシボーイ』
「ありがとう、助かるよ、レグルス、ジョンおじさん」
罪獣に変化して、まだ馴染んで無いのか、歪に巨大化したミハエルは首を小刻みに振り、上半身を揺らしている。
体に慣れる前に倒しきってしまうのが良いな。
「行くぞ!!」
「『おう!』」
ジョン爺さんがM2機関銃をミハエルに向けて発射した。
轟音と共に大きな魔法弾丸が撃ち込まれて、ミハエルは揺れる。
レグルスが羽ばたきながら襲いかかる。
俺も距離を詰める。
いけるか!
ミハエルの両目がビカリと光ると、黄金色の怪光線が発射されて、レグルスに直撃した。
「ぐあああっ!!」
レグルスの肩がえぐられて血が舞い上がった。
ビームか!
厄介だな。
レグルスは体勢を整えて、ミハエルに爪を振るった。
ミハエルは鎚のような右腕でそれを受け、組み合った。
レグルスの体が大きくなり、5メートルぐらいのミハエルと並んだ。
『スキル【サイズ変更】、もっと巨大化しないのか、陛下は』
『タンカー内部だ、あまり大きくなると動きづらいんだろう』
『M2機関銃が効いてねえ、なんだ、あの罪獣は』
左腕のコメントチェッカー上にリスナーの発言が流れて行く。
ざっと目を通しながら、レグルスの反対側の左側に付いた。
レグルスの肩の出血が凄い。
回復役が居れば。
レグルスが口を大きく開けてブレスを放った。
みるみるミハエルの表面が焼け焦げ、きな臭さと熱波が俺を襲う。
ミハエルは怯まずに左の箒のような手をうごめかしてレグルスに絡みついた。
火炎が効いていない?
ミハエルの焼け焦げた表面がボロボロ落ちて、新しい表皮が張った。
超回復力か?
俺はミハエルの鶏の足に『暁』を叩きつける。
表権能の[焼却]が働き傷から煙が出る。
ぐらりと体勢を崩してミハエルは膝を付いた。
『タカシボーイ、一回消える、すぐ来る』
『待ってます、ジョンおじさん!』
ジョン爺さんは後一回しか召喚出来ない。
倒しきる事が出来るか?
『バーバ・ヤガー』はミハエルの隠し球らしく、相当強力な罪獣だ。
なんとか、早く攻撃を入れないと。
「舐めるな、罪獣ふぜいがっ!!」
箒の手は無数の樹の枝のようにレグルスに絡みつき、動きを止める。
レグルスは腕を振るい、足蹴りをし、羽で叩いて箒の枝を切り払う。
『
ミハエルは目から怪光線を放った。
動きが鈍ったレグルスは体をくねらせて避けようとしたが、首をえぐられた。
「ぐおおおっ!!」
レグルスはそのまま赤熱のブレスを発して箒枝を焼き払う。
くそ、熱波で近づけない。
ドラゴンと一緒に戦うもんじゃないな。
余波で簡単に死にそうだ。
ブレスの波を読み、発射された瞬間に間合いを開け、通り過ぎたら踏み込み、切りつける。
『暁』の[焼却]もあまり効果がないようだ。
[浄化]は急所にしか効果がない。
『浦波』の[爆破装甲]は体を揺らすぐらいには効果がある、が、火炎は効いていない感じがする。
【火炎抵抗】もしくは【火炎無効】か。
後ろ頭がチリチリした。
【危険察知】だ。
とっさに体を開いて避けると、怪光線が床を焼いて走った。
杵の腕がドカンドカンとレグルスを叩く。
竜の
『素晴らしい、素晴らしい体、デース! 竜と殴り合いができマース!! まだまだ使って無い能力も沢山ありマース!! うはははは、ロシアが勝利しマース!! ロシアはソ連の領土を全て取り戻し、共産の楽園を築くのデース!!』
「ぷぷぷ、罪獣って三日で死ぬわよ~♡ 存在の力を魔力に変えて、使い果たして~♡」
サッチャンがあざ笑った。
え、そうなのか。
人間の存在の力を魔力に変えて使ってるだけなのか。
『千人、千人の共産戦士が『バーバ・ヤガー』に成れば良いのデース! 偉大な勝利には栄光ある犠牲が付きものデース』
「ばっかじゃねえのか、おまえ」
レグルスがミハエルの懐に飛びこんで、ジャキンジャキンと爪で切り裂いた。
「犠牲を計算に入れて勝利しても、なんにも成らねえぞ、そんなもんはなあ、奴隷の勝利だ、嬉しいのはお前達貴族だけだろうがあっ!!」
レグルスは良い事を言うな。
まあ、ミハエルは貴族みたいな物だしな。
ドラゴンの爪は効果があった、ミハエルの巨体を切り裂き飛ばして圧倒した。
俺もヒットアンドアウエイで斬りつけるが足には【弱点看破】の光が発生しない。
レグルスも血を流し、肩で息をしているし、長引くとやばいな。
光の柱が立った。
『またせたなっ、タカシ、レグルス』
ジョン爺さんの最後の召喚だ。
キャシーありがとう。
『ああ、解りました、解りましたデース。ああ、こうですかこうですか、命を燃やせば良いのデース。私が死んでも、レグルスの魔石、タカシくんの死体、ミノリさんの死体を祖国に持って帰れマース!! 私は幸せデース!!』
いかれてやがる。
この船が死の船になってどうやって祖国に着くってんだ。
日本中の海上組織がこの船を阻止するはずだ。
『くわぎれいさありわらうれりあわるううううっ』
ミハエルが異形の声を上げると体が膨れ上がり、光り始めた。
や、やばい、光るのはパワーアップの証だろう。
『ドラゴンも、タカシも、みんなみんな死ぬのデース!! 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬっ!!』
打って変わった滑らかな動きで、ミハエルはレグルスに襲いかかった。
目からビームが飛ぶ。
杵の手が光輝き打ち込まれる。
箒の腕が無限に増え,伸びる。
口がカパリと開き、紫色のガスが吐き出された。
レグルスの右腕にビームが当たり切り落とされた。
杵の腕で吹き飛ばされ、血を吐いてレグルスは後ろに飛ばされた。
俺の方に動きを塞ぐように枝の手が広がる。
『暁』で切り払い、『彩雲』で爆破して後ろに下がる。
そして硫黄臭いガスが漂ってきた。
どう見ても毒ガスだ。
くそうっ!!
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