第293話 ミハエルとの一騎打ちを行う
音が退いていき、まわりの時間が止まった。
俺とみのりだけに色が残り、視界全部が動きを止めモノクロとなった。
みのりはアカペラで[謡]を唱える。
[執行者確認せり、神力微弱、魔道力大、執行階位初段]
低く良く通る声が聞こえる。
カミオロシ術式の起動音声だ。
[問う、汝は神降ろしを望むか]
「望む!」
[『暁』に畏くもアマテラス大御神、『彩雲』に畏くもスクナビコナの命、古のやくそくにのっとり降りたもうねがいまする]
ああ、『彩雲』に宿っていたのはスクナビコナの命だったのか、大国主さまの相棒の神様だ。
『暁』に赤い光が、『彩雲』に緑の光が天から下りてきて宿った。
[大神おろし発現、権能発動す]
一気に音と色が復活した。
「『グラデンツィヤ』
バリバリとミハエルの持つ両手剣が青白い雷をまとった。
魔盾『オハン』はもう起動していて、白いオーラをまとっていた。
俺は壇上に上がり、ミハエルと対峙する。
『彩雲』表権能は[反発]だ。
盾前面に力場のような物が発生して、敵に圧を加える事ができうる。
たいした事の無い権能に思えるが、実際は見えない圧を加えられるので、結構やっかいだ。
ミハエルは両手剣を片手で持ってブンブンと振り回す。
【剣術】も【盾術】も高レベルで持っているな。
「死になサーイ、タカシ!!」
鋭い斬撃がまっすぐに降ってきた。
『彩雲』の[反発]で受け止め軌道をずらす。
「ぐっ! 妙な感触デース!」
得物の長さが違うので、『暁』をミハエルに当てるにはかなり踏み込まないとならない。
両手剣はリーチが長い。
俺は足を広げ、姿勢を低くして、ミハエルの懐に潜り込む。
が、『オハン』の大きな前面が行く手を阻んだ。
ガキーン!
『暁』と『オハン』が打ち合わされて火花を散らす。
さすがに魔盾は簡単に抜けない。
そして、意外な速度で『グラデンツィヤ』の斬撃が降ってきた。
体を開いて身をかわす。
一度底まで振った『グラデンツィヤ』はそのままVの字を描くように俺を追ってくる。
バックソード!
両刃の剣特有の技で、裏面の刃で切りつける技だ。
くんっ、と『グラデンツィヤ』は加速した。
「【自動追尾】デース!!」
「そうかい」
俺は『彩雲』をバックソードの軌跡上に合わせた。
ドッカーン!!
もの凄い音と反動で、俺も吹き飛ばされそうになった。
『彩雲』の真権能[爆破装甲]だ。
ミハエルは爆破の直撃を受けて後ろに吹き飛んだ。
『うわ、なんだ、あの機能は』
『爆発して防いだぞ』
『『彩雲』の真権能だ、パティさんが良く使ってる』
『うへえ、なかなかエグい機能だな』
まあ、神さまが宿っているからな。
ミハエルは転がり衝撃を消してすぐに立ち上がった。
『オハン』とプレートメイルのおかげで、爆破はあまり効いていないな。
「種が解ればどうという事は無いのデース、『暁』は『オハン』を貫けませーん!」
ミハエルは片手で『グラデンツィヤ』をヒュンヒュンと振り回した。
軽いのか?
いや、【動作追随】か?
かなり嫌な感じがする剣だな。
何合か切り結ぶ。
やはり大きいだけあって『オハン』の防御性能が高い。
ことごとく『暁』をはね返される。
[爆破装甲]を警戒して、ミハエルは『グラデンツィヤ』を打ち当てないように細かく動かしている。
意外に腕が立つな。
なかなか面白い。
俺の後ろでは、レグルスとジョン爺さんが湧き出てくるロシア工作員を倒している。
ジョン爺さんは二回目の召喚だ。
ミハエルが『オハン』を前にして猛然とシールドバッシュをかましてきた。
体を開いて回避。
チリチリと後ろ頭に【危険察知】がした。
地面に映った『グラデンツィヤ』の影が二つに増えて、下からすくい上げてきた。
くっ!!
『彩雲』を動かし、影の剣に当てる。
ドカーン!
影の剣は吹き飛び、ミハエルの足下に戻った。
「ちいいっ!! なぜ避けられるのですかーっ!!」
いや、危なかった。
【危険察知】が無かったら影の剣に斬られていた。
『グラデンツィヤ』の奥の手だな。
「
ざざっと華のようにミハエルの影から影の剣が十本現れた。
「終わりでーす、無敵の『グラデンツィヤ』の必殺技デース!!」
影の剣が、踊るように俺に襲いかかってくる。
「はっ!! 笑わせるなっ!! 影の剣が光の剣に勝てるかよっ!!」
俺は『暁』で影の剣を迎え撃つ。
影の剣と『暁』が打ち合わさり、真権能[浄化]が働いて、影の剣が溶けるように消える。
「なんてこと、なんてこと、相性がよく無いデース!」
『グラデンツィヤ』の機能は『暁』で相殺できそうだ。
問題は『オハン』の防御力だな。
なんとかしてあの鉄壁の盾を打ち抜かなくては。
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