第291話 敵基地タンカーに突入する

「大きな鉄の船だ、ブレスで沈めるか!」

「いや、油が入っていたら大災害だ、駄目だ」

「そうか、つまらんな……」


 中身が基地だったら良いが、偽装のために半分でも石油が入っていたら大変だからな。

 あと、何を積んでるか解らないし。

 核兵器とかはさすがに積んで無いと思いたいが……。

 ロシア人は雑だからなあ。


 レグルスは激しく羽ばたいてロケットシーフを追いかける。

 前足でつかもうとするとするりと逃げる。

 【絶対回避】がやっかいだな。

 【絶対命中】でも無いと当てられないだろう。


 タンカーがどんどん大きくなっていく。

 『盗賊』シーフは高度を下げる。

 下から黒スーツの外人が機関銃を乱射してきた。


『GAOOOOOOOO!!』


 レグルスが【威圧】が籠もった咆哮を放つ。

 ばたばたと外人達が倒れていく。


「命中弾は?」

「一カ所、だが、鱗で跳ね返したわいっ」

「咆哮を『盗賊』シーフに当てられないか?」

「動いている目標にはかからんっ」


 便利技能も色々と制約があるな。


 シーフはタンカーの甲板に着地して、みのりを抱えたまま船内に飛び込んだ。

 シャッターが閉まっていく。

 いかん。


 と、思ったが、レグルスが体当たりをして爪でシャッターを切り裂いた。

 さすがはドラゴン、頼りになる。


 レグルスは着地した。

 シャッターの向こうは通路になっていて暗い。

 みのりと『盗賊』シーフの姿は無い。

 俺はレグルスの上から飛び降りた。


「地上戦だな」

「注意して進もう」


 俺は【気配察知】を放った。

 とりあえず、近くの気配は無い。

 くそう、『盗賊』シーフは気配を消せるんだよな。

 俺は『暁』を握り、『彩雲』を構えて歩き出した。


 大きな気配が背後に現れた。

 振り返ると、サッチャンがカメラを構えて着地する所であった。


「あんたか」

「カメラピクシー役なんでおかまいなくう♡」


 俺はコメントチェッカーを開いて、『サッチャンチャンネル』に変更した。


『おお、ロシア人のタンカー基地!』

『赤ガチャピンの空中戦すごかった』

『タカシの盾違うな』

『爆発装甲の『彩雲』だ、[自動防御]の『浦波』じゃないから怖いな』


 とりあえず、情報が貰えるかもしれないからコメントチェッカーは着けておこう。


「いくぞ、タカシ」

「ああ、レグルス」


 俺たちは通路を歩き始めた。


「さあ、敵基地内に侵入です、蛇がでるか鬼がでるか、たのしみですねえ♡」


 階段があって、慎重に下りたが敵の迎撃はなかった。

 鉄砲で乱射されると思ったが、敵は出てこない。

 誘い込みかな?


 俺とレグルスの足音だけが白い塗装の船内通路に響く。


『情報出た。ロシア船籍のタンカー『ナホトカⅡ』だ』

『なんでロシアタンカーを東京湾に入れたんだ、海上保安庁なにをしてやがる』

『貨物船で届け出されてるっぽい』

『海上保安庁、臨検に出動しているよ』

『停船するわきゃあないぞ、浦賀水道で海上封鎖だ、横須賀から護衛艦が出動した』

『米軍も動いた!』


 よし、事態はちゃんと動いているな。

 とりあえず、こっちはこっちで、みのりを取り返す。


 通路は扉で塞がれていた。

 水密ドアではなく、普通の金属ドアだな。

 俺が取っ手を引くと、ギイイと重い音を立てて開いた。

 カッと奥からライトが浴びせられた。

 とっさにドアの影に身を隠す。


「やあ、いらっしゃイ、タカシくんっ、来てくれて嬉しいデース。みのり嬢を捕まえて、君を呼ぶつもりでしたが、手間が省けましたデス」


 奥には甲冑を着込んだミハエルがいた。

 手には大きな両手剣、そして大きなタワーシールドを持っている。

 完全装備だな。


「ドラゴンさんもいらっしゃいデース。竜の魔石もいただけるとはハラショーでーす」

「簡単にワシを倒せると思うなよ、『重戦士ヘビーウォリアー』」

「あなた方はもう終わりデース。誘い込まれたのでーす。私たちはタカシくんとミノリさんを連れて本国に戻りマース」

「りっちょんはどうするつもりだ、みのりと交換するつもりか!」


 ミハエルはさもおかしそうに笑い出した。


「リツコよりもミノリさんの方が性能がイイネ。呪歌も沢山おぼえている、レア呪歌を持つ、レア技能もある。そしてネ、何よりも、あの異常なドロップ運、リツコと交換するにはもったいないヨ」

「仲間じゃ無いのか」

「知らないネー、利用できるから使っていただけネ。ただ、心が不安定すぎて、使いにくいネ。ミノリの方が素直で良いヨ」


『そりゃ、りっちょんより、みのりんだよな』

『りっちょん頭がおかしいし』

『スキル【豪運】は魅力だ』


 ミハエルはこちらを見てニタリと笑った。


『武器を捨てナサーイ。みのりを殺しますヨー。『暁』をよこすのデース』


 ミハエルの背後の巨大ディスプレイに額に銃を突きつけられた、みのりの映像が映った。


「みのり!!」

『タカシくん!! 応じちゃだめっ!!』

『黙れっ、命乞いスルネ!!』


 銃が振り上げられ、みのりの頭に振り下ろされた。

 くそ!! どうしたら……。



 


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