第290話 ラオウさんの正体とは!
「ワシに乗るんだぁ! タカシィ~~!!」
何を言っているのだ、この赤いラオウさんは、変態なのか、そうなのか、今はみのりがぶっこ抜かれてそれどころじゃないんだ、帰ってくれ!
と、思っているとラオウさんは後ろを向いて俺に大きな背中を見せた。
「「「「………え?」」」」
ラオウさんの輪郭がぐねぐねととろけて膨らんでいく。
「レグルス陛下!!」
「乗れ! みのりんを追いかけるぞ、タカシィ~~!!」
「良いんですか、でも何で」
「決まっているっ!! マリアとみのりんはワシの推しだからなっ!」
レグルス陛下は二メートルぐらいの大きさまで膨らんだ。
俺は彼の背に飛び乗る。
良い感じに鞍みたいな出っ張りがあってしっかり座れる。
「私も私も!」
「私もいくよっ!」
「駄目だ、多人数を運ぶぐらい大きくなると速力が落ちる、乗れるのは一人だ!」
鏡子ねえさんとチアキはぐぬぬと唸った。
『タカシ、持って行きなさい!』
パティさんが何か投げて来たので、とっさに受け止めた。
『彩雲』だ!
『助かります!』
『必ず取り返してくるのよ』
「タカシ、こっちはまかしときっ!」
「頼んだよ、かーちゃん!」
レグルス陛下はバンバンバンバンと強く羽ばたきをした。
風が舞い上がり、スタッフの一人が転んだ。
「行くぞ、タカシ!! 空中戦だっ!」
「頼みます、陛下!」
レグルス陛下は、ステージ上で垂直に浮き上がると、空の点になったロケット
「何を言っている、ワシとタカシはバディだ、レグルスと呼ぶのを許してやるっ」
レグルスは振り返り背の俺を見て、キュッと笑った。
「行こう! レグルス!」
なんか、バディ物のアメリカ映画とか見たんだろうなあ。
速い、思っているよりもずっと速い。
レグルスはバンバンバンバンバンと激しく羽ばたいて速力を上げる。
ぐんぐんロケットシーフに近づいて姿が大きくなっていく。
「『ゆっくりゆっくりゆっくりなりたまえ~~♪』」
しめた、みのりの【スローバラード】でロケットリュックの速力が半分になった。
『う た を や め ろ お っ !』
「みのり~~~!!」
「タカシくん!!」
川崎の港湾地帯の上空で俺とみのりの目が合った。
【スローバラード】の効果が止まった。
「逃がすかっ、ドラゴンの速力をなめるでないぞっ!」
レグルスも器用に右に左に旋回し、橋脚を後足で蹴って方向を変える。
なんとかして
「ちょこまかと逃げ回るコウモリめ、いっそブレスで!」
「やめろ、レグルス。みのりまで焼いてしまうぞ」
「おお、そうであった!」
ドラゴンは乱暴でいけないな。
しかし、敵の
そんなに燃料が持つとも思わないが、どこに向かっているんだ?
「思い切り近づいてくれ、『暁』で切りつける」
「了解だ、相棒!」
レグルスは速力を上げ、
俺は『暁』を抜いた。
どこを斬る?
腕を斬って、みのりを落とした所を回収するか?
できるか?
「タカシくんっ! 『ぐるぐるぐるぐる♪ おまわりおまわりなさい~~♪』」
『うあっ!! やめろっ!!』
「うわっ! 目が回りおるっ!!」
うわ、なんて事をするっ!
【ぐるぐるの歌】で平衡感覚を狂わされて、
みのり自身もヤバいと思ったのか途中で呪歌を止めた。
俺は上から奴に向けて『暁』を突く。
とりあえず、即死させて、レグルスに二人とも受け止めて貰おう。
俺の必殺の突きは不自然な軌道を描いて外れた。
『ば、馬鹿めっ!! 【絶対回避】スキルだっ!!』
くそう。
だが、
超高速で湾岸の風景が通り過ぎていく。
パイプがくねくねと走る工場の中を複雑に飛びながら奴を追いかける。
化学薬品の匂いがする。
遠距離武器……。
収納袋の中にみのりの弓はあるが、俺には当てられる自信が無い。
というか、【気配消し】と【絶対回避】を持つ
外界での戦いだと、
工場の敷地を抜けると、海の上に大きなタンカーが見えた。
あそこがロシア人の秘密基地なのか。
俺とレグルスはそれを追う。
さて、鬼が出るか、蛇が出るか!
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