第283話 透明ゴリラを計算に入れて迎撃計画を練る
チアキが透明ゴリラにとりついて登り始めた。
本当に【気配察知】しないと見えないなあ。
「こいつは凄いね」
鏑木さんがぽつりと感嘆の声を上げた。
「ヒデオさん、ゴリラくん達は意のままに動かせるんですか」
「そうだよ、なんか言葉で一応命令はするけど、心の底でなんかつながってる感じで俺が思った通り動くよ」
「ステージの隅に立って貰って良いですか」
「狙撃避けか、丸出さん、ゴリちゃん達は銃で撃たれても大丈夫かい?」
「銃……、で撃たれた事が無いからねえ」
「ゴリちゃんたちは凄いよ、どんな魔物の攻撃も通じないの」
「すごい力持ちで、九階でトレインを二匹で全滅させてくれたよ」
ミキさんとヒカリさんが声を上げた。
そうか、透明のゴリラが戦っている所を見たら、超能力を使っているように見えるんだろうな。
「アイドルが狙撃される可能性があるんだ、良かったら射線を遮る場所にゴリちゃんたちを立たせてくんないかな」
「ああ、ロシア人ですな、そういう事なら」
ヒデオさんは快諾してくれた。
よし、これでみのりが狙撃される危険は大分減ったな。
「あはは、高い高い」
チアキがゴリラさんのてっぺんまで上がって手を振った。
空に浮いてるように見えるな。
「
ゴリラさんたちの立ち位置は『チャーミーハニー』さんに任せよう。
東扇島は周りに高い建物がマリエンぐらいなので、狙撃ポイントは少なそうだ。
高速道路から撃つ手もあるけど、警察が織り込み済みだろう。
「それでは、鏑木さん、おねがいします。『サザンフルーツ』さん、ヒデオさん、また後で」
「「「はあいっ!」」」
「ライブを成功させるために、お互いがんばりましょう、タカシさん」
なかなか感じの良いグループだな『サザンフルーツ』とヒデオさんは。
「チアキ、降りてこい、楽屋へ行こう」
「解った、みのりねえちゃんとマリアねえちゃんに挨拶だね。鏡子、受け止めて!」
「ばっちこいっ」
チアキはゴリラさんの上からジャンプした。
鏡子ねえさんががっちり抱きとめて二人は笑い合った。
『サザンフルーツ』とヒデオさんを鏑木さんに任せて俺たちはステージの裏にある楽屋へと向かって歩いた。
「なんだか、ライブって凄いね、準備も大変なんだ」
「プロが動いてるって感じがするね」
「そうだね、泥舟にいちゃん」
沢山の裏方さんが動いて準備をしていた。
みんなキビキビしているね。
スタッフの人に聞くと、みのりの楽屋はステージの後ろのトレーラーハウスにあった。
なんだか金が掛かっているなあ。
やっぱり、世界の歌姫のマリアさんが居るからかな。
「あ、タカシくん、『Dリンクス』のみんな、みのりんの陣中見舞いかな」
「そうですよ、石橋さん」
トレーラーを警備していたのは、『チャーミーハニー』の石橋さんだった。
今日は婦警さん姿じゃなくて、スタッフジャンパーを着て裏方に化けていた。
石橋さんが中に入り、そして出てきた。
「ささ、どうぞどうぞ、土足で大丈夫よ」
「おじゃまします」
「おじゃまー」
「じゃまー」
トレーラーに入ると、なかなか豪華な感じの楽屋であった。
「ぎゃあ、タカシくんっ、みんなっ! マリちゃんギラファ! というかフル装備!」
みのりが悲鳴を上げながらデデデと寄ってきた。
「何かあるとまずいからな。いつもの装備をしておけば、少なくとも鏡子ねえさんはフル装備だ」
「『
みのりも百万円の装備でレアの【吟遊詩人の帽子】装備でなかなか派手であった。
マリアさんは綺麗な黒いドレスでなかなか色っぽい。
『みんな、いらっしゃい。良いライブにしましょうね』
『おねがいします、マリアさん』
みのりは笑ってくつしたに近寄って首筋をもふもふした。
「くつしたもライブに出る?」
「踊れるかなくつした?」
「ばふん?」
「いきなりは無理だろう」
練習したらできる気もするけどな。
くつしたは動きがシャープだから。
みのりが「ほぅっ」と息を吐いた。
「さっきまで死んじゃうかと思うぐらい緊張してたんだけど、みんなの顔をみたら、すっと落ち着いたよっ、ありがとうっ」
「そうか、それなら良かった」
ライブ前の緊張が解けたなら、なによりだな。
俺は、みのりに【浦波】を差し出した。
「【浦波】、どうするの」
「その格好ならバックラーでも変じゃない、持っていろ」
「え、え、【浦波】が無いとタカシくん困るよ」
「敵の攻撃で怖いのが遠距離射撃だ、特にりっちょんのレーザー砲が怖い、[自動防御]のある【浦波】があれば防げる。マリアさんのカバーにも入れる」
「そ、そっかー」
一応
なんでも屋の異名は伊達ではない。
「【暁】も吊すか?」
「いやいやいやいや」
みのりは手をぶんぶんと振った。
「さすがに【暁】はタカシが持ってろ」
「そうか?」
「ナイフ吊すから、大丈夫大丈夫」
まあ、実際に使うのは【浦波】だけだから良いか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます