第281話 マリエン到着、会場を見回り敵の攻撃を予想する
マイクロバスはマリエンのある東扇島に入り、駐車場で止まった。
お、峰屋家の白いベンツがあるな。
「着いた着いた、降りるぞ、みんな~」
「「「「「おおっ」」」」」
鏡子ねえさんの号令でマイクロバスを降りる。
関係者とか、ステージの裏方さんなんかが忙しげに動き回っているな。
ステージはマリエンの中、東扇島中公園にあるようだ。
「あら、タカシ君、鏡子ちゃん、みなさんっ」
「峰屋のおばさん、おじさん」
「まあ、『Dリンクス』はフル装備ね、かっこいいわ、あらあら、マリちゃんギラファメイルね、かっこいいわ」
「ど、どうも、おはようございます」
「今日は良い天気でライブ日和だね、みんなで楽しもう。打ち上げはホテルのレストランを予約してあるからね」
うは、峰屋のおじさんが連れて行ってくれるホテルのレストランというと凄そうだな。
「おはよう、みんな来たね、やあ、凄い、フル装備だね」
リーディングプロモーションの高橋社長がにこやかに声を掛けてきた。
「チヨリ、早く着替えてきなさい」
「解りました、みんな、後でね、私のステージもちゃんと見てね」
「期待してるぜ、チヨリ」
「楽しみにしてます」
にっこり笑ってチヨリ先輩は楽屋の方に駆けていった。
「うお、リーディングの社長だ、私らも売り込もうぜ」
「そうだな、Dアイドルデビューだ」
「やめろ」
『ダーティペア』が無茶を言ったので後醍醐先輩が二人に梅干しをかました。
「いだだ、せ、先輩ギブギブ」
「いたいいたい」
「やめてくれよ、姫川さん、高木さん、出禁になっちまう」
林道君が顔をしかめて言った。
「まずは、名前を売ってからだよ、ひめぴょん、たかちん」
「そうだな、こーこ」
「まだ早ええな」
いつの間にか『ラブリーエンゼル』のメンバーの仲が良くなっているな。
良いことだ。
「まだ開場には時間がある、どうだね、スタッフ車でコーヒーでも」
高橋社長がニコニコしながらそう言った。
「先に会場に入れますか? 『チャーミーハニー』さんと一緒に現場を確認したいです」
『チャーミーハニー』ののっぽさんが、おやという感じに眉を上げた。
「よろしいですか」
「鮫島や繩屋も位置に着いてるよ、鮫島は魔弓を持ってマリエンの展望台だな」
「鮫島さんは【必中】持ちですからね」
「私は鏑木、【
「あ、鏑木さんだったのか」
「えへへ、ご無沙汰してますよ、坊ちゃん」
「雲舟師匠のお弟子さんかあ」
「陸自からの出向ですよ、タカシさん」
だんだん、『チャーミーハニー』さんのメンバーも解ってきたな。
鏑木さんはのっぽで糸目の美人だった。
『チャーミーハニー』は全員容姿で選んでいるよなあ。
「みのりも楽屋にいるから後で会いに行ってくれ」
「わかりました、高橋社長、峰屋のおじさん、おばさんもまた後で」
「そうね、今日は楽しみましょう」
「今日はみのりをよろしくね、タカシくん」
くつしたに乗ったチアキを可愛がっていた峰屋のおじさんとおばさんが笑って言った。
「鏑木さん、布陣とかを教えてください」
「オッケー、会場に行こう、タカシくん」
駐車場から、道を歩いて公園の方に行く。
マリエンの奥の方の東扇島中公園あたりにステージが組み立てられていた。
「マリエンの良いのは、アクセスが細いので、観客の導線が単純な所だね。一応公園の周りには柵をして人が入って来れないようにしてあるよ」
前の方から、角が生えてコウモリの羽を生やしたサッチャンが現れて、俺にカメラを向けた。
「『Dリンクス』発見で~す♡ ラッキーラッキー」
「また配信ですか、サッチャンさん」
「イエース♡ 大丈夫、何があってもカメラで激写するからね~♡」
まったく、この悪魔さんは。
何があっても、カメラを回すだけで、助けてはくれないんだろうな。
「楽しい配信になりそうで~す♡ さて、『ウラジの嵐』とりっちょんは何時、どこから出現するでしょう~♡」
りっちょんと『ウラジ』が来るのが前提かよ。
サッチャンをほっといて、俺たちはライブ会場に向かう。
ここら辺から観客席のようだね。
結構広い。
安いパイプ椅子が並んでいる。
「ええと、前座に『チヨリズ』と『サザンフルーツ』ってDアイドルの曲を一曲ずつやってから、『マリア&みのり』の公演だってさ」
泥舟がプログラムを見ながら言った。
「わ、『サザンフルーツ』が出るんだ」
「人気があるDアイドルなのか、チアキ」
「うん、売り出し中のアイドルユニットだよ」
チアキはDアイドルにも詳しくて偉いな。
「おはようございまーす、って、どうしてみんなフル装備なんですか」
朱雀さんがいつもの黒スーツで走り寄って来た。
「何かあるとヤバいから、防具は着込んでるんだ。朱雀さんはその上に着ける?」
「ああ、ロシア人と律子さんですね。私も防具を着けましょう」
俺は朱雀さんに防具を渡した。
こういう時に収納袋は便利だね。
俺たちは会場を観察しながらステージに近づいた。
ステージでは三人組のアイドルがリハーサルをしていた。
「わあ、『サザンフルーツ』だっ、後でサイン貰おう……、あれ?」
チアキが何も無い空間を見て変な顔をした。
くつしたがぐるると牙をむいて唸った。
「なにっ、もうロシア人かっ」
鏡子ねえさんが警戒の声を上げた。
俺は【気配察知】を走らせた。
居る。
二メートルぐらいの大きな人型の透明な存在が居る。
収納袋から『暁』を取り出して握る。
「え、タカシくん、どうしたの」
鏑木さんが声を上げた。
でかい、ゴリラみたいなシルエットの存在が二体、そこには居た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます