第275話 洞窟ゾーンは半グレでいっぱい

 安全地帯で一息ついて、ライト、ランタンを装備して洞窟ゾーンに乗り込んでいく。


 周りが暗くなると同時に緊張感が跳ね上がるな。

 とはいえ、レベル的には魔物との戦闘は安定だ。

 問題は、他のパーティーだよな。

 洞窟ゾーンに入ってからすれ違うパーティはもれなく半グレなので、気が抜けない。

 特に、竹宮先生とマリちゃんの女性が前に出ているので、ちょっかいを出してくる馬鹿も多い。

 泥舟が威嚇射撃をすると止まる。


「鉄砲足軽……、泥舟か……」

「タカシもくつしたもいるぞ、やべえ」

「す、すいませんでした~」


 頭を下げて引き下がる奴らなら問題は無いのだな。

 問題は怒って斬りかかってくる奴らだ。

 その場合は、泥舟が足を撃ったり、望月先生が麻痺液をぶっかけたりする。

 それで大体止まる。


 治療はしないのだが、たまに朱雀さんがすれ違いざまに治療符を投げたりしていた。

 いい人だな。


「他パーティとのトラブルの方が時間がかかるねえ」

「半グレたちですからね」


 何回か通っているので、こちらを見て、別の道に入っていくパーティーも居る。


 魔物を倒し、半グレパーティーとすれ違い、魔物を倒す。


「新宮たちが居なくなったら困るな」

「十階から下はそんなには半グレパーティは居ませんよ」

「とりあえず、ある程度人数を増やして移動すればましかもしれませんね」


 そうだなあ、先生パーティと、育成生徒パーティ二つで三グループレイドで動くと少しはましかもしれない。


「対人戦も遠距離なんだねえ」

「そうですよ、望月先生の水鉄砲は頼りになります」


 麻痺薬は魔物にも効くが、半グレ配信冒険者にも効くからね。


「教師パーティも六人欲しいですね」

「そうですね、盗賊と魔術師が欲しい所ですな」


 前衛があと一枚あると堅牢かもしれないなあ。


「やっぱり実地に迷宮に来て戦うと解る事が多いですね」

「半グレパーティーが居なければ良いんですがねえ」


 まあ、あいつらは自然発生的な物だから駆除は難しいんだよな。

 共産圏の国だと、国家が駆逐するようなんだが、ああいう国の軍隊も警察も半グレみたいな物だからね。

 ずるして楽して稼ぎたい人間はどこにでも沸いてくるよな。


「前の方に変なグループが居るっすね」

「うん? なんだろう」


 と、思ったら半裸の女性配信冒険者が二人泣きながら駆けてきた。


「助けてっ! 助けて!!」

「あいつらが、私たちをっ!!」

「まてい、げへへ」

「……」


 泥舟が長銃を構えた。


「止まれ」

「た、助けて、レイプ……」


 バキューン!!


 魔力弾が女性の髪をかすめて飛んだ。


「止まれ、次は当てる」

「や、やめて、あいつらが……」

「女性配信冒険者が二人で、六階に来てたの」

「そ、それは……」

「げへへ、おら、捕まえちゃうぞっ、げへへ……」

「おっちゃん……、演技下手だな」

「……ぐ、ぐうっ」


 物陰からわらわらと半グレが五人現れた。

 女子二人は手を上げて止まっている。


『美人局パーティーだな。演技がなあ……』

『女子も棒だし、おっちゃんがなあ、もう棒だ』


「そっちの小部屋に全員入れ」

「嫌だと言ったら、ど、どうすんだよっ」

「殺す」


 泥舟から本物の殺気が流れて、女子二人が後ずさり、おっちゃんの後ろに隠れた。


「が、学校の先生の前でかよおっ、あーっ」


 バキューン!!


 おっちゃんの膝に長銃の弾が当たり奴は後ろに吹っ飛んだ。


「小部屋に入れ、入らないなら殺す」

「わ、解りましたっ」


 女子二人が小部屋のドアを開けて中に入って行った。

 五人の半グレも膝をやられたおっちゃんを引きずって小部屋に入った。


「ふう」


 泥舟が長銃を下ろした。

 マリちゃんが小部屋のドアを閉じて、俺たちはその前を通り過ぎる。


「お疲れさま」

「半グレは面倒くさいね」

「ああいう手もあるんだねえ」

「被害者女性のふりをして、どうするの?」

「女子二人は、多分毒蛾のナイフか、麻痺針を持っていて、前衛を動けなくするんですよ、その後は人数押しですね」

「新人の真面目なパーティがよく引っかかりますよ、まあ、今回は演技がアレでしたし、女子二人が六階に来てるのも怪しいですしね」

「あ、それもそうだね」


 昔からよくある手で俺も何回も見たことがある。

 俺はソロだったからあまり仕掛けては来なかったけどな。


 七階への下り階段に着いたので下りる。

 安全地帯で『銀塩会』の連中が休んでいた。


「よう、タカシ、先生の介護か」

「ああ、まあな」


 『銀塩会』のリーダーは他校の不良だけど、後醍醐先輩のつながりで喧嘩は売ってこない。


「ああ、『マルタ組』が『Dリンクス』を狙ってるって話だぞ」

「マルタ? なんでまた」

「『メロウリンク』の仇討ちだってよ、半グレ集団の系列系らしいぜ」

「そうか、ありがとう」


 俺たちは『銀塩会』に手を振って安全地帯を出た。

 八階ぐらいで襲ってくるか?

 『メロウリンク』の繋がりか。

 半グレパーティは倒しても見逃しても面倒が起こるな。


「どんな手でくるかね?」

「力押しかな、十八人で来るかもしれませんね」

「その場合、どうするかね……」

「泥舟とチアキの銃撃で数を減らして、俺とくつしたで切り込みます。先生たちは下がっていてください」

「僕と樹里くんも戦うよ」

「手伝うっすっ」


 東海林の魔法と樹里さんの短弓があると心強いな。


「私も前にでますよ、リーダー」

「マリちゃんもか、うんそうだね」


 マリちゃんも『Dリンクス』だしね。

 装甲の厚さは頼もしいかもしれない。

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