第274話 放課後は先生の付き添い

 放課後は、ライブの最終リハーサルに行くみのりと鏡子ねえさんを見送ってから川崎駅前に出てきた。


 今日のメンバーだが、『Dリンクス』からは、俺、泥舟、チアキ、マリちゃん、朱雀さん、くつしたであった。

 『オーバーザレインボー』からは、東海林と樹里さんであった。


「あ、樹里さん、これ、この前出たので上げるよ」


 俺はドロップ品の盗賊の七つ道具を樹里さんに渡した。


「あ、良いんすかっ、こんな良いの」

「かまわないよ、がんばってね」

「いつも悪いなあ新宮」

「いいっていいって『オーバーザレインボー』と『Dリンクス』は同盟パーティーだしさ」

「わっ、きれいな七つ道具、チアキちゃんは良いんすか?」

「私はパティに最高級のアメリカ製の奴をもらったから」


 チアキは誇らしげにポシェットから七つ道具を樹里さんに見せた。


「いいっすねえ、でも助かるっす、デモゾンだと中国製の七つ道具しか売って無くて」

「チャイナのは作りが甘いんだよね」


 『盗賊シーフ』二人のプロっぽい会話を聞いて頬が緩んだ。

 若いけど、二人ともちゃんとプロなんだなあ。


「今日は僕も『シルバーバトン』をもらったから試用してみるかな」

「使い勝手はどうだい?」

「魔力の収束が良い感じがするね、さすがは中級の杖だよ」


 うむ、こっちも魔法系の職業じゃないとわからないからなあ。

 俺は剣とか盾の善し悪しならわかるのだが。


 大規模商業施設の広場に行くと、先生方三人が待っていた。


「やあ、新宮、今日も頼むよ」

「はい、がんばりましょう」


 宮川先生は、片手剣、盾、胸当て、小手、具足の戦士セット、竹宮先生はモーニングスターにヘラクレスセット甲冑、望月先生は、白衣にローブという軽装だな。

 マリちゃんはギラファセット甲冑にギラファメイス、カイトシールドで固めている。

 マリちゃんと竹宮先生が並ぶとかっこいいね。


 俺たちは地獄門をくぐり、迷宮に入った。

 相変わらずロビーは慌ただしい雰囲気だ。


 階段を降りて、地下二階のレストラン街を通りすぎ、三階の草原に出る。

 チアキに拳銃を渡し、泥舟に長銃を渡す。

 俺も『暁』と『浦波』を収納袋から出して腰に差した。


 三階草原はいつも通りの賑わいで、しばらくするとリボンちゃんたちカメラピクシーたちがふよふよと飛んできた。


「さあ、今日もがんばりましょう」

「今日の目標は八階かな」

「そうですね、フロアボスまでもう一息ですよ」

「そろそろ突破できるかしら」


 まあ、チアキとくつした、朱雀さんが居るから今でもなんとかなりそうだけど、焦ってはいけないね。

 メインの先生方のレベルを十分に上げないとね。


「そろそろ、ワーウルフ戦も視野にいれましょうか」

「何から何まで、新宮には世話になるな」

「学校の事ですからね、できる限りは手伝いますよ」

「ありがたいね」


 望月先生がにっこり笑ってそう言った。

 やっぱり、学生のDチューバーは増えて欲しいしね。

 いろいろと成長に有利な面が多いしね。

 パラメーターが上がると、やっぱりできる事も増えるから。

 迷宮は人類にとっての恩恵でありながら呪いみたいな物でもあるので、無視をしてはいられないんだよな。

 輝かしい未来をもたらしてくれるだろうけど、たぶん色々な不幸も連れてくるのだろう。

 どんな事でも良いことばかりでは無いのだろう。


「くつした、出ろ」


 チアキが玉を投げてくつしたを呼び出した。


「ばうばうっ」


 くつしたはチアキにじゃれついて、マリちゃんや竹宮先生にモフられていた。


 俺たちは下り階段を目指して歩き始めた。


『お、今日は先生の介護狩りか』

『のんびりしてるけど、結構楽しい』

『そろそろフロアボス狙えるなあ』

『十階超えたら、この介護狩りも終わりかあ』

『タカシは迷宮に毎日潜りすぎだ、街中で遊べや』


 そうは言うけど、あまりダンジョン以外で遊ぶ気になれないんだよな。

 

「タカシ兄ちゃんはダンジョン好きだよなあ」

「それはいえる」

「まあ、落ち着くし、狩りが好きだしな」


 中学校の頃から毎日、迷宮に潜っているから癖になっている所があるな。

 かといって、ゲーセンとかあまり興味が無いしさ。


 特に寄り道しないで、四階への下り階段まで来た。

 三階の魔物は攻撃しなければ、こちらへ向かってこないしね。


 四階に下りて五階への階段を目指す。

 ここの階からゴブリンが出るが、さすがにちゃんと武装してレベルを上げたメンバーの敵ではなく、望月先生の麻痺水鉄砲をかけて、宮川先生が斬るか、竹宮先生か、マリちゃんが殴り殺した。


 東海林が【火炎弾ファイヤーボール】でゴブリンを一匹倒した。


「うん、収束率が高くて出が早い」

「それは良かった」


 さすがに三十階台で出るドロップ装備は初心者装備とは性能が違うみたいだな。


 難なく五階への階段を下りて、六階からの洞窟ゾーンの入り口を目指す。


 五階の森を見ると、もう狂子モードのねえさんは、この森には居ないんだなと、少し寂しい感じもする。

 まあ、今のねえさんの状態が狂子モードの時よりは、ずっと良いんだけど、色々変わって行くんだなって感慨もでるね。


 樹里さんも気配察知を持っているし、俺ももっているので、敵の動きは出てくる前にわかるね。

 くつしたに乗ったチアキが拳銃をバンバン撃って、ゴブリンやオークを倒していく。

 さすがに五階までは何の問題は無いね。

 魔石もドロップ品も、まあまあ普通の感じで出てくる。


 特に問題なく、六階へ向かう洞窟入り口が見えてきた。

 階段を下りて六階の安全地帯で小休止だ。


 さて、今日は八階を目指そうか。



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