第271話 『メロウリンク』の処遇を決める

 トレインの魔物の大群も、まあ、なんとかなった。

 安全地帯が近いのは大きい。

 みのりと泥舟と朱雀さん、あとチアキは安全地帯内で、俺と鏡子ねえさんとくつしたが魔物の群れに飛びこみ、倒して倒して疲れたら安全地帯で水を飲んだり一休みしたりして、三十分ぐらいかけてここに居た魔物達は全滅させた。


 鏡子ねえさんがケイズハウンドにかまれて片手が麻痺したが、丁度出ていた教典【麻痺取りディスパラライズ】を朱雀さんが読んで麻痺を解いた。


 もの凄い沢山の経験値と魔石とドロップ品が出た。


『やっぱ『Dリンクス』のドロップ、パナイ』

『一財産出来たな』


 そこまでは行かないだろうが、かなり儲かった感じだ。

 鏡子ねえさんのボディスーツの替えも出ているな。

 アシッドバイパー柄なんで赤い。


 とりあえず、仕分けは後にして、収納袋にどんどんと放り込む。


「んじゃ、『メロウリンク』の装備なんかも頂こう」

「そうだね」


 捨てて行ってももったい無いし。


 綺麗になった通路を戻って行くと、『メロウリンク』六人の残骸が通路に横たわっていた。

 バラバラの死骸になってるな。

 リュックなんかも食糧を漁られたのか蓋が開いて荷物が散らばっている。

 血の臭いが凄い。


 みのりは怖くなったのか、最後尾でしゃがみ込んだ。

 鏡子ねえさんとチアキが嬉々としてしゃがみ込んで荷物を漁っている。


「以外にレア装備多いな、一人一個ぐらいあるぞ」

『ああ、奴らはトレイン常習犯だからさ、週一ぐらいでトレインで別のパーティ狩ってたぜ』

『元は半グレ集団の幹部で、前衛二人は武技レアスキルも持ってたはず』

『そんだけ強いのに、やる事は、三十階台でトレイン狩りって腐ったパーティだよ』


 レア武具とレア防具が結構あるのだが、血で汚れていて難だなあ。


「お、カエル玉五個発見」

「ポーション類も多いな、感心感心」


 チアキと鏡子ねえさんは『メロウリンク』のメンバーのリュックをあさって使えそうな荷物をぽんぽんとこちらによこした。

 カエル玉は嬉しいな。

 チアキが手際良く財布から金を抜いて小袋に詰めてよこした。

 さすがだなあ。


「で、タカシはこいつらどうするの?」

「悪魔神殿に放り込もうと思ったんだが……、こいつら蘇生しても逆恨みするよな」

「するっ、武技持ち居るから厄介だよ、二十階台で他のパーティを襲って装備を調えて『Dリンクス』を追ってくるよ」


 チアキのお墨付きが付いたな。


『ほっとくのがいい、典型的なカスパーティだから感謝とか絶対しねえ』

『一日経てば迷宮に喰われるよ』


「よし、放っていこう」

「そうですね、私も賛成です」

「んだな、面倒そうだ、こいつら」

「私も賛成~!」

「ノノノ、ノーコメント」


 みのりは優しいからなあ。


「そうだね、ほっとこう、レア武器とかレア防具とかは縁起が悪いので買い取りカウンターで売ってしまおうか」


 そうだなあ、先生たちには似合わないだろうし、『ダーティペア』が欲しがるかもしれないが、自分で出せだよな。


 取れる物は大体取って安全地帯に戻った。

 Dスマホとかも売れそうだが、あまりに個人情報の塊なのは抵抗がある。

 半グレ仲間とかが回収に来るかもしれ無いが、その時はその時だな。


 安全地帯の奧の階段を下りて三十五階に入った。


『『Dリンクス』『たこ焼き一番』と並んで、高校生中心パーティ日本一タイだ!』

『万歳万歳』


 そんな事言われてもなあ、メインの鏡子ねえさんは二十代だしな、チアキは小学生だし、くつしたは魔物だしな。


「まあ、でも、三十五階だ」

「目指すは百五十階だから、まだまだ半分も来てないよ」

「『ホワッツマイケル』が七十二階だから、全人類が半分も到達してないよ」

「それもそうか」

「バウバウ」


 三十四階で大暴れしたので、安全地帯で小休止だ。

 『メロウリンク』の遺品を触ったので水場で手を洗う。

 泥舟がお茶を入れてくれてほっとする。


『『メロウリンク』を救助にどこか入ったかい?』

『うんにゃ、あいつら嫌われてるしなあ、装備類も無いからうま味ねえだろう』

『B級だってのに哀れな事だ』

『ずっと同じ事してたんだよ、到達した階層の十階下で格下パーティから追いはぎだ。復讐されて無いのは相手を確実に殺して迷宮に喰わせてたからだよ』

『げ、マジか』


 そうか、悪質で強い半グレパーティだったんだな。

 友好パーティも居なかったのか。

 悪党パーティはいずれ死ぬんだなあ。


「帰りはどうする?」

「どうするって?」

「カエル玉増えたよ~~、一発ぐらい使おうよ~~」


 チアキがカエルの頭の形のカエル玉を弄びながら言った。

 カエル玉かあ。

 一度試しに使っても良いか。


「よし、使って見るか、効果範囲はどうだったっけ?」

「同一地点に居るパーティ単位で効くらしいね」

「よし、やってみよう、みんな並んで」

「まあ、並ばなくても良いんだけど、一カ所に寄った方が良いかな」


 六人と一匹が寄り添って、そこへチアキがカエル玉を投げた。


 ドロン!


 煙に包まれて、視界がクリアになるとポータル広場であった。


「ここに出るのか、便利だな」

「みんないるね」

「ばうばう」


 全員転移出来たようだ。

 リボンちゃんたち、カメラピクシーも転移されている。


 確かにこれは便利だなあ。

 深い層の攻略に必須というのが解る。

 カエル玉の需要は高いので、専門にカエル系魔物を倒すパーティも居るらしい。


「三十五階突破、おめでとう~~!」

「タコイチとタメだぜ」

「日本一の高校生中心パーティだ」


 周りの配信冒険者さんたちが手を叩いて褒め讃えてくれた。

 ありがとうありがとう。

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