第272話 仕分けして外に出ると真っ暗

 ロビーのソファに座って戦利品の仕分けをする。

 とりあえず『メロウリンク』から出た装備は一纏めにして換金カウンターに持って行った。


「あらあら、レア物なのに使わないんですか」

「強奪した物だから縁起悪そうで」

「呪いとかは、ちょっとしか付きませんのに」


 そう言って女悪魔さんが換金してくれた。

 ちょっとは呪いは付くのか。

 ぎょっとするぐらいの値段になったな。

 レア物が八点ぐらい有ったからなあ。

 それぞれの口座と『Dリンクス』の口座に振り込んで貰った。


 ロビーに戻ると泥舟が狩りの方の集計を終わらせてくれた所だ。


「パソコンはどうする、タカシの部屋に置くから『Dリンクス』名義でも良いけど」

「いや、俺の利益から引いていいよ」

「解った」


 ケイズのパソコン代、九万を引いても利益はあった。

 やっぱり、三十階を越えると儲かるね。


 チアキとみのりがぬいぐるみを持ってニコニコしていた。

 ドロップ品が多いのは良いな。


「新宮新宮、レア武器くれくれっ」

「トレインパーティを倒してゲットしたんだろ、くれくれ」


 階段の方から『ダーティペア』が走って来た。

 のこりの『ラブリーエンゼル』の新人二人と望月先生も歩いて来た。


「おまえらも狩りしてたの?」

「おうよおうよ、配信見てたらレア武器強奪したろ、くれくれ」

「くれくれ」

「姫川さん、高木さん、みっともないよ」

「うるせえ、メガネめっ」

「だまってろこんちくしょう」

「強奪したレア物は縁起が悪いから売った。林道くん、魔術師ウイザードにはなれた」

「まだですよ、新宮さん」

「そうか、じゃあ、これ、上げるよ」


 俺はシルバーバットから出た『シルバーバトン』を林道くんにあげた。


「え、良いんですか、これいい杖じゃないですか」

「ドロップで出たから、よかったら」

「うお、いいじゃんいいじゃんっ!」

「ちくしょー、あたいらにもくれようっ」


 良い盗賊の七つ道具がドロップしたが、あれは樹里さんにあげるから高木には無しだ。


「よかったね、林道くん」


 望月先生もニコニコしていた。


「はい、頑張りますっ」


 林道くんも、目白さんもニコニコしていた。

 むっつりしているのは『ダーティペア』だけだな。


「しかし、派手に稼いだみたいだなあ」

「なんかくれよう」

「ダブったりしたらな、わざわざお前達用には狩りはしないんだよ」

「それもそうかー、よし、わたしらも仕分けすんぞー」

「おー、林道たのんだー」

「まったく、事務仕事とか計算苦手だなあ、二人とも」


 隣のソファーで『ラブリーエンゼル』四人が仕分けお始めた。

 なんだかんだいいながら、良い感じに冒険してるみたいだな。


 俺は収納袋からカエル玉を二つ出して望月先生に渡した。


「お、カエル玉、良いのかい? 買うと高いのに」

「五個ほど手に入りましたので、二個お裾分けです。生徒が死んだらすかさず使って悪魔神殿に駆け込んでください」

「そ、そうだね、ありがたく」


 白衣の望月先生はカエル玉を押しいただいてから、懐に収めた。


 『Dリンクス』は戦利品を換金して地獄門をくぐる。

 リボンちゃんたちに手を振って、外に出ると空はすでに真っ暗であった。


「カエル玉使ったのにいつもより遅かった」

「トレイン退治してたからね」


 なんだかんだでトレインの魔物を全滅させるのに時間が掛かったからね。

 夕暮れの川崎の街は独特の匂いがするね。


「飯食ってくか?」

「どうしようかな」

「モナリザン行こう!」

「バウバウッ」


 チアキはモナリザン好きだな。

 俺的には『チャーミーハニー』さんとの遭遇率が高いので遠慮したいところだ。


「地元の中華か、そば屋に行かないか?」

「成都か、三久屋か、うん、それでも良いな」


 しかし毎日のように外食するだなんて、ちょっと前の自分からは想像もつかない贅沢だな。

 俺の隣をみのりが歩いて、目が合うとニシシと笑った。


「毎日楽しいね、タカシくん」

「ああ、楽しいな」


 みんなと一緒に迷宮に潜って、戦って、騒いで、ご飯を食べて。

 うん、これまでの人生で一番幸せな時期かもしれない。

 きっと大人になったら、今を思いだして微笑んだりするのだろうな。


 みんなで大師線に乗り、地元駅で降りる。


「朱雀、今日は私の所に泊まれ」

「泊まれ~」

「良いんですか?」

「ご飯食べてから川崎に戻るのは面倒だし」

「寝具無いだろう」

「そこはそれ」

「融通しあってというか、ローソファーを貸してくれよ、タカシにいちゃん」


 ローソファーを布団代わりかあ。


「家に泊まってくださいよ、朱雀さんっ」

「峰屋家かあ」

「うむむ、設備が整っている」


 それが無難かもしれないな。

 峰屋家は広いしね。


 そば屋か中華かになって、結局中華成都という事になった。

 街中華なので、ほどほどに空いている。


「あら、いらっしゃい、あんたたち、凄いDチューバーなんだって?」

「やあ、ばれちゃったかおばちゃん、もうここにはこれないかなっ」

「やだよう、そんな世界スターみたいに、地元の有名人ぐらいだろう、気にする事無いって無いって」

「ありがとうおばちゃん。パーコーチャーハンとワンタン麺ね」

「あいよう、あいかわらず良くたべるね」


 それぞれ思い思いの料理を頼んだ。

 やっぱ街中華は良いね。

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