第266話 狩りは続くよ(三十一階、三十二階)
「うりゃあああっ!!」
鏡子ねえさんは[縮地]でヘビーリンクスに肉薄して顎にアッパーカット。
ボキュンとヘビーリンクスの後頭部が爆ぜてぐるぐる回って壁に当たった。
「くつした、【突撃】だ!」
「わおんっ!!」
チアキを乗せたくつしたがもう一匹のヘビーリンクスに体当たりをして跳ね飛ばした。
そのまま空中のヘビーリンクスを追い越す勢いでくつしたは肉薄して頭を三つに増やして噛みつき殺した。
あと一匹。
泥舟が銃剣を着剣して三段突き、ヘビーリンクスは嫌がってシャーと威嚇した。
朱雀さんがふり返り、火炎符を投げる。
「火炎陣急急如律令!」
ボンと火炎符が飛んだ先にケイズハウンドがドドドと走って来た。
バックアタック!
俺は『浦波』を構え、ケイズハウンドの突進を止める。
「そっちも来たか!」
鏡子ねえさんが最後のヘビーリンクスの首を折りながら嬉しそうに言った。
「『ゆっくりゆっくりゆっくりなりたまえ~~♪ あせってもしかたがないからのんびりいこうじゃないか~~♪』」
【スロウバラード】が掛かりケイズハウンドの動きがゆっくりになる。
俺は『浦波』を押しつけるようにして接近し、【弱点看破】の光る線に沿って『暁』で切り落とす。
ザッシュ!
首の半分を切断されて、ケイズハウンドは倒れた。
「ふう、ヘビーリンクスが三匹と、バックアタックのケイズハウンドだとキツいね」
『普通は大ピンチなんだが、余裕でさばいているようにしか見えない』
『強い、圧倒的に強い、『Dリンクス』』
鏡子ねえさんが笑いながらヘビーリンクスの死骸をケイズハウンドの隣に並べる。
「いやあ、強かった、ヘビーリンクスは」
ヘビーリンクスは黒っぽい灰色の毛並みの大型山猫だ。
なかなか精悍な感じで動きも素早かった。
泥舟とチアキの銃撃を避けてたからなあ。
顔付きもふてぶてしい感じだ。
『それでも鏡子さんは
『よっぽど大物じゃないとな、[縮地]がチートすぎ』
『爪が当たる瞬間[縮地]で後ろに回り込んで蹴りとか出すからな』
「あんまり【お休みの歌】が効かないね」
「ケイズハウンドはちょっと動きが遅くなるぐらい、アントマンもヘビーリンクスにも効かないな、やっぱトカゲ系とかカエル系かな」
「ケイズくん、トカゲっぽいのに」
何者なんだろうな、ケイズ君。
謎の魔物だ。
気になるドロップ品は、リンクススタジャン、肉球ガントレット、ジャックリンクスビーフジャーキー、であった。
ケイズくんからは、ケイズハウンドぬいぐるみが出た。
ケイズハウンドぬいぐるみは、チアキとみのりでいつものように取りあいである。
姉さんはビーフジャーキーの袋を開けてモシャモシャ食べ始めた。
「なかなかうまい」
リンクススタジャンは背中に山猫の絵が描いてあって良い感じだな。
冬に着よう。
チアキが肉球ガントレットを装備していた。
可愛いけどトカゲガントレットの方が良くないか?
拳銃を抜こうとして駄目だったのですぐ脱いでトカゲガントレットに戻した。
道に弓矢の罠があったのでチアキが解除した。
それほど難しい罠じゃなかったようだ。
階段を下りて三十二階へ。
この階に出るのは、トガリネズミ、シルバーバット、が、ケイズハウンド、アントマン、ヘビーリンクスに混ざる。
「トガリネズミ十」
チアキが声を潜めてそういった。
泥舟がスライム弾を長銃に詰めた。
トガリネズミは頭が尖っている気持ち悪いネズミだ。
敵を見つけると、走って来て、尖った頭を先にして跳んでくる。
弱いのだけれども、数が居ると厄介な魔物だ。
バキューン!!
ダキュンダキュンダキュン!
銃撃でトガリネズミがバタバタと倒れる。
残ったトガリネズミが跳躍体勢に入った。
「『疾風の精霊よ我が命により我が友を加速せしめよ、ヘイスト』」
みのりが鏡子ねえさんに【
姉さんが凄い早さでトガリネズミを踏み潰し始める。
「『ぐるぐるぐるぐる♪ おまわりおまわりなさい~~♪ 空も地面もぐーるぐる♪ 足下ぐらぐら気を付けて~~♪』」
上手い!
トガリネズミたちは【ぐるぐるの歌】の影響で明後日の方向へ跳びはじめた。
ゴワ~~!!
くつしたが頭を三つにして火を吐いてトガリネズミたちを焼き尽くし、奴らは全滅した。
「ヘイストトメテ」
鏡子ねえさんが早送りみたいな声で言った。
「『ああ~~あ~~、あたまをすっきりおんどをさげろ~~♪ れいせいにれいせいになれ~~♪ クールになれ~~♪』」
「トマラン」
「『そは人間なりき、迷いを忘れ元の姿へ戻れ、【
「もどった、ありがとう朱雀」
「いえいえ」
持っていてよかった 、【
というか、僧侶の居ないパーティだと、効果時間が切れるまで待つのかな。
『ミッキー声鏡子さんは可愛かった』
『ヘイストは戦闘が終わってしばらくすれば解けるよ』
『そんなに長く効く呪文じゃ無いからね』
『魔法みのりんはレア』
トガリネズミからは、体にみあわない大きな魔石と、ドリルビット×6、手回しドリル、ドリルホルダー、算数ドリル(小五)等が出た。
ドリルのビットが、一匹一本換算なのかな。
「チアキにこれをやろう」
鏡子ねえさんがチアキに算数ドリルを渡した。
「いらん」
チアキは無情にもドリルを叩き落とした。
学校が始まったら要るかも知れないから収納袋に入れておこう。
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