第255話 登校中に不良に絡まれた

「『Dリンクス』のタカシだな、おめ~~」


 朝、泥舟と一緒に登校していたら、途中で人相の悪いヤンキーが絡んできた。


「そうだ、何か用か」

「ああん、高校生最速でC級になったからってイキってんじゃあねえぞっ、あーっ?」

「何か用かって聞いてるんだ、三流」


 身にまとう感じがDチューバーだった。

 十階超え、E級って所かな。


「ああん、かーちゃんに守られてるマザコンボーイがよおっ!! やんのかこらっ!!」


 俺は泥舟に長銃を渡し、自分は『浦波』とバックラーを両手に握った。


「ああ? 両手に盾? 舐めて……」


 バッカン。


 とりあえず、声を掛けてきた奴をシールドバッシュで殴った。


「こ、こいつっ!!」


 後ろの三人が剣を抜き、弓を構え、ナイフを抜いた。

 泥舟がするりと『射手アーチャー』の懐に入り、長銃の銃床で殴った。


 バガッ!


「や、やろうっ!!」


 バカンバカンドカン。


 『浦波』で殴り、バックラーで殴り、また『浦波』で殴った。

 泥舟も銃床で殴ったり、銃口で突いたりして不良を倒した。


「おまえら、どこ高?」

「お、大島南、です」

「迷宮で無くて良かったな」

「ち、ちきしょー!! 覚えてろっ!!」


 不良達は逃げて行った。

 最近はよくこういう事がある。

 なぜか鏡子ねえさんが居る時は来ないんだが。


「ひゅーひゅー、いやあ、かっこええなあ、自分」


 電柱の影からとっぽい感じの兄ちゃんが出て来た。

 こいつもDチューバーだな。

 意外に強そうだ。


「誰だあんた」

「聞いて驚け、わいは全国一の高校生パーティ『たこ焼き一番』のリーダーの心斎橋よしおやっ!」

「『たこ焼き一番』!」

「せやっ! 今話題の『Dリンクス』を倒す為に川崎まで出張してきたんやでっ、勝負やタカシ!」

「馬鹿馬鹿しい、どうやって迷宮で勝負するんだよ」

「今度の土曜日にどっちが早く四十階のフロアボス、マンティコアを倒すか、勝負や、あんたらには『暁』を掛けて貰うで」

「『たこ焼き一番』は何を掛けるんだい?」

「わいらが負ける事はあらへんから無駄なんやが、こっちはレア装備『転移の兜』を掛けるで」


 俺はよしおを無視して歩き始めた。


「にげるんかっ、われっ!」

「価値がつり合わないよ、『暁』は神様宿ってるんだぞ」

「『転移の兜』は任意の階に転移できるでっ」

「知ってる、僕もチケット使うのにカタログ読み込んだから。転移は一人、一日一回、使いづらい。もう一個のレア【ヘイスト】付きの『疾風丸』を付けてもつり合わない」


 泥舟が冷静な口調でそう言った。


「なんやっ!! おどれ、腰抜けめっ、誰の挑戦も受けるんや無いのかいっ!!」

「迷宮で挑戦とか受けないよ、それに勝負になったら簡単に決まる、鏡子ねえさんが『たこ焼き一番』全員の首を折るから」

「ひ、卑怯やでっ!! 暴力で解決かいっ!!」


 俺は立ち止まって、よしおの顔を見た。


「迷宮での勝負はそういう物だから意味が無いんだよ。どっちが先にとかやると遭難の元だぞ」

「わいら『たこ焼き一番』が高校生最強パーティなんやっ!! 日本一の座をそう易々奪われてなるかいっ!」

「残念だったな、俺達『Dリンクス』の目標は150階、魔王の首だ、四十階でとか勝負していられない」

「だいたい、マンティコア師匠は挑んでも死なないから甘くないかい、よしおくん」

「え、死なないのか泥舟」

「唯一生き残りを見逃してくれるのがマンティコア師匠だよ、知らなかった、タカシ?」

「あ、それで師匠なのか」

「負けを認めて土下座するとフィールドを解いてくれるらしいよ」

「よ、四十階まで行くのが大変やないかあっ!」


 俺はポンと手を打った。


「あ、どっちにしろ駄目だ、土曜日はみのりとマリアさんの初ライブだ、賭けとかしてる場合じゃ無い」

「ああ、そうだったね、楽しみだよ」

「くそうっ!! おまえらばっかりっ、女子ばっかのパーティくみおって!」

「泥舟も居るじゃん」

「僕は男だよ」

「わいは諦めんからなあっ、覚えとけっ、タカシ!!」


 色々と変な奴が湧くなあ。

 俺と泥舟は学校への道を急いだ。


「学校では後醍醐先輩が不良を押さえてくれていて助かるよね」

「校外だとよく絡まれるけどな、チアキの小学校とか大丈夫だろうか」

「チアキちゃんはレベル上がったし、くつしたも居るから大丈夫だと思うよ」


 だが、わりと心配だ。

 イジメとかにあったら可哀想だ。


 【気配察知】を使った。

 物陰に鮫島さんがいた。

 黒魔導師姿で良く潜伏できるな。

 【気配消し】持ってるのかな。


「見てたら止めてくださいよ」

「高校生Dチューバー同士のじゃれあいに割り込んだりしないよ」

「対ロシアだけですか」

「まあねえ、素人のDチューバー相手は自分でやってね」


 まったく、日本政府役に立たねえ。

 まあ、登下校とかでロシア人が来ないのは『チャーミーハニー』さんたちのお陰なんだろうけどね。


「『たこ焼き一番』は危ういですね」

「日本一の高校生パーティがプライドの元になってるからね、しょうがないさ」


 走破階数を競ってもしょうが無いと思うんだけどなあ。

 俺達はまだ余裕で階を進めて行けるから、たぶん、B級の『ホワイトファング』にもすぐ追いつくと思うんだけど。

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