第254話 ロビーに戻って仕分けをする

 二十三階は相変わらず混んでいて、狩りにならない。

 そんなに従魔欲しいかね。

 ……。

 うちがくつしたを出して無ければ是非欲しいと思っただろうな。

 それくらい従魔にはロマンがある。

 ポケモンみたいなもんだしな。


 沢山のパーティに血走った渇望の目で見られてコワイ。

 がんばって従魔創造の珠を出してくれ。


 二十二階に上がる。

 こちらは狩りが出来るぐらいには空いているな。


 ハイオークを狩ったり、オーガーを狩ったりして進む。

 トロールも出たので狩ると聖典【上治癒ハイヒール】がまた出た。


「被った」

「竹宮先生行きかなあ」

「知り合いが持っていればいるほど良い」


 鏡子ねえさんの言う通りだな。

 売るより先生に上げよう。


 二十二階、二十一階と上がって行き、いろいろドロップさせながら二十階ポータルからロビーへと転移した。


「結構儲かった狩りだった」

「ネームドも倒したしね」

「私のためにありがとうございます」

「良いんだ、朱雀が強くなれば『Dリンクス』の利益にもなるから」

「そうそう、甘えちゃって、朱雀ねえちゃん」


 鏡子ねえさんとチアキの物言いに朱雀さんはにっこり笑った。

 うん、【アンナニーナの首飾り】が良く似合っているな。


「今日も『Dリンクス』は山ほど出したなあ」

「ハイヒールが二本出てたわよ」

「あやかりたいもんだなあ」


 あたりのパーティに噂されてくすぐったい感じだね。


 あれ、今日はレグルス陛下がいないな、仕事か?


「あ、陛下ですか、さすがにサッチャンさまが切れて120階に追い出しましたよ」


 ロビーの掃除をしていた女悪魔さんが教えてくれた。


「あー」

「あー」

「残念、見たかったのに。難波迷宮にはいらっしゃらないんですよね」

「川崎オンリーだったのか」


 あのおっさんドラゴンは居るとうっとうしいけど、居ないと寂しいな。


 ラウンジスペースに座って荷物の仕分けをする。

 あ、ねえさん盗み食いはやめろよう。


 今回は朱雀さんに色々渡したから、分け前は減らしてと。

 泥舟がメモしてくれるので助かる。


 ぬいぐるみ類は今回、オルトロスとゾンビが出た。

 オルトロスは鏡子ねえさんが、ゾンビはチアキが持って行った。


「ねえさんが欲しいのかい?」

「チアキとお揃いだ、みのりも持ってるし」

「オルトロス三姉妹よ!!」


 そんな三姉妹は嫌だなあ。

 あと、ゾンビぬいぐるみは欲しい物なのか。


「石の玉を下さい、実験します」


 いつの間にかマリちゃんが来ていて石の玉を請求してきた。


「いいけど、沢山無いとゴーレムにはならなそうだよ」

「いえ、たぶん七個あれば疑似人体を制御できると思います。これらはゴーレムコアなんでしょう」

「どういうこと?」


 マリちゃんはポケットから『Dリンクス』のワッペンを出して朱雀さんに渡した。


「わあ、ありがとうございます」

「胸当てに着けたら良いと思います」


 俺は収納袋から魔石アイロンを出して朱雀さんに渡した。

 朱雀さんは鼻歌をうたいながら外した胸宛てにワッペンを圧着している。

 俺は収納袋から七個の石の玉を出した。

 玉はくっつこうとして動くが、七個では体を成立できないようだ。


『興味深いねえ、ミス方喰』

『あ、テレサさん』

『君はこれをゴーレムの核と思うんだね』

『はい、多分、ドロで実験してみるつもりです』

『いいねいいね、動画にして流してくれたまえ、私も興味があるよ』


 いつ湧いたのか、『ホワッツマイケル』の錬金術師アルケミストのテレサさんが我々のソファーの後ろに立っていた。


「マッドゴーレム?」

「そうです、ドロで体を作れるかもしれません」

「なるほど」


 沢山の石の玉があると合体してストーンゴーレムになると思っていたけど、四肢のコアである、の方があり得るか。


「ドロで制御できれば、氷、水、砂、と色々変えて見て、最後は石像に埋め込めばストーンゴーレムに出来るかもしれません」

『そうか、その可能性もあるね。只のストーンゴーレムでも荷物持ちに出来るし、良いかもしれないな。こっちでも実験したい、タカシくん、七個くれたまえ』

『自分で出してくださいよ』


 とはいえ、世界的な錬金博士だから強くは言えないので、素直に石の玉を七つあげた。


『七つは……?』

『頭と四肢で五個、胸と腰で七個ですね』

『なるほど、面白い』

「マリねえちゃん、すげえ~~!! ゴーレム出来たら楽しいねっ」

「多分石の玉は入門用で、鉄の玉、ミスリルの玉と、上位になるほど良い制御が出来るんじゃ無いかと思うのよ」

『制御が良いゴーレムならば、前衛のタンクもやれるし、なかなか楽しい事になりそうだ、良いアイデアをありがとう、ミス方喰』

『いえ、こういう謎を解くの好きなんですよ』

『いいねえ、君も錬金術師アルケミストにならないか、ステイツで雇うよ』

『いえ、『創作者クリエイター』の方がやれる事が多そうなので、こっちを極めますよ』

『『Dリンクス』には楽しい人材が集まっているなあ。全員雇いたいぐらいだよ』


 あはは、アメリカさんの傘下に入るのはちょっと勘弁かな。


「マリちゃん、高田君のホルスターできた?」

「ええ、明日プレゼントしようかと思ってます」

「それは良いね、喜ぶよ高田君」


 しかし、マリちゃんは有能だなあ。

 前衛職でなくても、色々と出来る事があるんだなあ。

 錬金術師アルケミストも色々やれるしね。


 朱雀さんの『Dリンクス』ワッペンも良い感じについて、彼女はニマニマしながら胸当てを着けて眺めていた。

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