第253話 アンナニーナのドロップ品

 世界に戻ってきた。


 『暁』は正確にニーナの髑髏の眉間に突き刺さっていた。

 まばゆい光が出てニーナの体は粉砕された。


 一瞬、笑っているように見えたな。

 異世界で待っていてくれよ。


 毒沼魔法が切れたのか床が元の石造りとなり、ゾンビたちがばたばたと倒れた。


「やったなあ、タカシ~」

「かーちゃん、変な所に呼び出してごめん」

「ええんやで、タカシのうちへの信頼の証や」


 かーちゃんは勝負勘が鋭いからな、やって欲しいことを読んでくれると信じていた。


「かーちゃん」

「かーちゃん」


 鏡子ねえさんとチアキがかーちゃんに抱きついた。


「ひさしぶりやね、鏡子、チアキ」

「最近見ないからさあ」

「いつも夜に呼んでるんだけどね」

「タカシ兄ちゃんだけずるいっ」


 くつしたもかーちゃんに寄っていってじゃれついていた。


「くつしたもー、元気そうやね」


 かーちゃんはくつしたをもふもふした。

 朱雀さんが寄ってくる。


「は、はじめまして、お母さん」

「京都で会った朱雀さんやなあ、よろしゅうなあ、『Dリンクス』に僧侶さんが入ってくれて一安心やわ」

「非才の身ですが、が、がんばります」


 みのりも泥舟もかーちゃんの近くに集まった。

 最近、強敵相手用にと、かーちゃんを温存しすぎたかな。

 狩りの日は一度ぐらいは出しても良いね。

 かーちゃんは『Dリンクス』の支柱みたいな感じだからな。


『かーちゃんの安心感よ』

『どんな強敵でも、かーちゃんが何とかしてくれる感』

『足場を崩されると『Dリンクス』は意外に脆いな』

『鏡子さんが回避タンクだからなあ、純タンクが欲しい』

『相手によっては純タンクが有効だったりするしな』


 サラサラと舘全体が粒子になって消えていく。

 墓場の真ん中の広場っぽい場所だったらしい。


 黒い魔石と、ドロップ品が落ちた。

 ネックレスか?


『お、ネームド装備ドロップか』

『【アンナニーナの首飾り】じゃな、魔法抵抗と闇魔法効果軽減が入っておる逸品じゃ』


 余さんは何でも知ってるなあ。

 首飾りか、魔法抵抗、効果軽減だと、みのりか、朱雀さんかな。


「どうする姉さん」

「朱雀だな、僧侶が精神魔法に掛かると厄介だ」

「そうだね、じゃ、朱雀さん」

「い、良いんですか、新参者なのに」

「関係無いよ」


 朱雀さんの首に【アンナニーナの首飾り】を着けてあげた。

 うん、赤い宝石が良い感じに朱雀さんに似合うね。


「いいなあいいなあ」


 みのりが口を尖らせた。


「みのりはチョーカー着けてるじゃん」

「……タカシ兄ちゃんは解ってないなあ」

「タカシ君は解ってない」

「ごめんなあ、タカシは気がきかんでなあ」


 なんだよ、かーちゃんまで。


「しかし、ネームドだけあって手強かった、魔法戦になると勝手がちがうな」

「あ【ぐるぐるの歌】を歌えば良かったかも」

「リッチに効くかな?」

「ゾンビは倒れたと思うよ」


 そういやそうだね。

 深い層のアンデット階で試してもいいな。


「それじゃ、うちはそろそろ行くで、また呼んでな」

「ありがとう、かーちゃん、また」


 かーちゃんが粒子になって消えていった。

 やっぱり消えるときは、ちょっと切ないな。


 再び狩りに戻る。

 【オバケ嫌いの歌】を掛けまくっていると、本当に楽だね。

 ゴーストもスケルトンもゾンビも苦しんで動けないしね。


 スケルトンから聖典【鎮魂ターンアンデット】が出たので朱雀さんに覚えて貰った。


「意外にMP消費が少ないですね」

「効くか効かないかの二択の奇跡だからかな」


 帰りながら、【鎮魂ターンアンデット】を試して貰った。

 おお、一瞬でゴースト三匹が昇天したぞ。

 これはラクチンだ。


「冥界神であるイザナミさまに祈ってみました」

「それは強力そうだね」


 日本神道の冥界の神様だしね。

 と、ゴーストから二本目の【鎮魂ターンアンデット】が出た。

 

「さて、帰ろうか」

「良い時間だから、狩りながら帰ろうか」

「朱雀さんの装備も良い感じになってきたしね」


 【アンナニーナの首飾り】が強力だよな。


 行き会う魔物を倒しながら階上を目指す。

 相変わらずドロップ品が多い。

 カエル玉五個目とか、あと、ストーンゴーレムから石の玉が一杯出た。

 この石の玉、ダストアイテムで謎なんだよなあ。


「いっぱい出るね」

「沢山あると変化がある系じゃないのかなあ」

「そうかな」


 みのりのアイデアを聞いて、俺は収納袋にあった石の玉十四個を全部出した。


 お? おおお?


 石の玉が集まって人型っぽくなったぞ。


「ゴーレムの元?」

「沢山集めるとゴーレムになる?」

「どうだろう」


 十四個ぐらいだとひょろひょろな感じだなあ。

 くつしたが石人形に突進して散らばせて遊んでいた。


「結構沢山量が要るかんじだね」

「百個……、もっと要るか」


 とはいえ、ストーンゴーレムをお供にしてもなあ。


『あ、そういう事だったのか』

『ゴーレムキットの部品だったのか、俺も持ってるけど』

『アイアンゴーレムも鉄の玉出すな、これは検証班の実験待ちだな』

『いろいろ謎があって迷宮は面白いなあ』


 アイアンゴーレムとかだったら戦力になるかな。

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