第256話 クラスに着いたら『たこ焼き一番』からの挑戦状が

「タカシくんタカシくん、大変だよっ」


 いつも通りクラスに着くと、みのりがDスマホ片手にデデデと走り寄ってきた。

 なんかみんなスマホを見ているな。


「どうした?」

「『たこ焼き一番』から『Dリンクス』へ挑戦動画がアップされたんだよっ」


 みのりは俺に見えるようにスマホを持ち上げた。


『ええー、登校中のタカシくんと泥舟くんに挑戦した所逃げだしよりました。『Dリンクス』なんざ、レア装備だよりの腰抜けってわかりましてん』

「よしおムカつくっ!」

「タカシ、良いのかこんなこと言わせておいてよおっ」


 なぜ『ダーティペア』が怒っているのだ?


『ワイらは予定通り四十階制覇を土曜日に行う予定ですわ、先に突破した方の勝ちで、『Dリンクス』が負けたら『暁』を譲り渡して貰う予定ですわ』

『まったく関東もんは根性無いなあ、だっせー』

『ははは、なんや女性メンバーのライブ行くゆうてたで、阿呆ちゃうか』


 『ダーティペア』が俺に詰めよってきた。


「タカシ、お前、ここまで言われてほっとくのかよっ!!」

「あたいらも力を貸してやっから、ホテルに殴り込もうぜっ!!」

「おまえらは狂犬か」


 クラス全体で『たこ焼き一番』へのヘイトが上がってるな。


「今日、四十階へチャレンジしようぜ」

「あたいらも応援してやっからよう」

「偵察もしてないのに、三十階台を放課後に制覇できるわけ無いだろ」

「だ、だけどようっ、臨海第三の名誉がっ」


 パカンパカンと『ダーティペア』は殴られた。


「おまえら、適当な事言うなよ」

「だって、後醍醐先輩、くやっしっすよ~~」

「あたいら『Dリンクス』のクラスメートだってブイブイいわせてんのに~」

「やめろ、ブイブイいわせんな」


 迷惑な『ダーティペア』め。


「しかし、汚え事してくるなあ、『たこ焼き一番』、『暁』賭けるって言ったのか?」

「言う訳ないじゃないですか、装備を賭けてこんな賭けはしませんよ、三十五階まで進んでいる奴らが有利すぎですからね」

「ああ、タカシはそんな事しねえよな」

「『暁』だけ有っても、もう一個退魔装備があって、バードが居ないと真価は発揮しないのにねえっ」


 俺は自分の席に着いた。

 前の吉田の席にみのりが、東海林とマリちゃんが椅子を引いて寄ってきた。


「WEBだと、言ったもの勝ちの所があるからな」

「でも、リスナーの反応はしょっぱいですよ、罵倒が飛び交っています」


 マリちゃんがスマホを見せてくれた。


『よしお、馬鹿じゃねえの、退魔武器一本手に入れてどうするつもりだ』

『今日で『たこ焼き一番』のファンをやめます』

『燃2弾4鋼11』

『緩い賭けで、たこ焼きは何出すんだよっ、ああ?』

『転移の兜だってさ、だっせー、釣り合わないだろう』


 おお、いつもの常連さんが攻撃してくれている。

 ありがたいなあ。


「なんだったら襲撃かますか? 殺すまでもはいかなくてもロビーで半殺しにするとか」

「やめてくださいよ、後醍醐先輩」

「やっぱそういうのは嫌いか、タカシらしいな」

「今日の先生狩りで、一方的に賭けを持ちかけられただけで、無視するって宣言しますよ」

「タカシくん、ライブに来ないで、土曜日に四十階へ行っても良いんだよ」


 みのりが辛そうな顔でそう言った。


「ばか、せっかくのみのりの初ライブだ、馬鹿の相手とかしてられないぞ、『Dリンクス』全員で行く」

「あ、ありがとうっ、タカシくんっ」

「『オーバーザレインボー』も全員行くよ」

「東海林くんもありがとうっ」


 後ろのドアが開いてチヨリ先輩が踊りながら入って来た。


「釣り合わない賭けは、無効なのよ~~♪ うちの社長も動いてくれるって~~♪」

「わ、本当ですか、チヨリ先輩っ!」

「リーディングプロモーションが総力を上げて盛り上げるイベントですからね、大阪のたこ焼き小僧どもに邪魔をされてたまるもんですか」


 おお、なにげに頼りになるね、チヨリ先輩。


「ロシア人も心配だし、色々怖いけれど、必ずライブは成功させるわよ、みのりさんっ」

「はい、チヨリ先輩!」

「俺ら『迷宮ぶっ潰し隊』も行くからよ、何かあったら助けるぜ」

「あたいらも行くぜっ」

「『ラブリーエンジェル』の名を上げるチャンスだからなあっ」


 『ダーティペア』が来て何をするのだ?

 まあ、気持ちだけ貰っておこう。

 週末のライブは楽しくなりそうだな。


 『たこ焼き一番』が四十階フロアボスに挑むなら勝手にすれば良いんだ。


「所で、東海林、『たこ焼き一番』は四十階突破できるのか?」

「うーん、パーティバランスは良いんだけど、ギリギリかな。全員が四十レベル超えて無いとヤバイんだけどな」

「四十越えてないメンバーがいるのか」

「僧侶の子がたしか三十五ぐらいだったかな。五レベルの差は結構でかいからね」


 各フロアの推奨レベルは、だいたい階数と同じで、フロアボスはそれに三ぐらい足した物と言われている。

 良い装備があれば上乗せできるのだが、レア剣、レア兜だからなあ。

 四十階にたどり着く前に、ネームドが出たりすると撤退もあり得る感じだ。

 もう少しレベルアップした方が確実なのにな。


 先生が入って来た。


「おーう、後醍醐と北村は自分のクラスに帰れ~~」

「へーい」

「わかりましてよ」


 さて、今日も授業が始まった。

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