第250話 ネームド『アンナニーナ』
二十四階をスルーするように先を急ぐ。
ストーンゴーレムを転ばせて倒したり、キングトードを倒したりだな。
帰り玉が出て備蓄が四つになった。
なるべく沢山あると良いね。
とりあえず、鉄砲組が数を減らし、鏡子ねえさんと俺が仕留める感じの流れである。
ストーンゴーレムには【弱点看破】で破壊場所が光って見えるのでわりと楽になった。
俺が見て、ねえさんが[楔]をぶち込む簡単な作業だ。
『ストーンゴーレムもザコザコになった』
『なんでかかとの弱点とか、背中の弱点がわかるんだよ』
『【弱点看破】だろ、コモンだから持ってる奴も多いな』
『軽戦士系のスキルかあ』
『そうそう、軽戦士は先に『忍者』とか『暗殺者』があるらしいからな』
『ニンジャ、ニンジャなんで!』
『激しいニンジャリアリティショックがリスナーを襲った、アイエエエ!!』
『ドーモ、シングウ=タカシです』
人気のWEBニンジャ小説のネタか。
読んでないから解らないんだよね。
『忍者』のジョブはあると言われているが、どうだろうねえ、暗殺者とかになるんじゃないかなあ。
キングトードをスネークスティレットで、ジャイアントボアをナメクジバットで蹴散らしながら俺達は進む。
特に引っかかる所も無く二十五階への階段に到達した。
階段を下りると西洋のお墓が建ち並ぶオバケ階だ。
独特なホラーな感じがするな。
みのりがもう引きつっている。
だがまあ、オバケ階はなんという事はない。
みのりがエンドレスで【オバケ嫌いの歌】を歌うので敵がほとんど動かないから楽なものだ。
ポロポロと、
「【
「符は効きますね、もう少し作ってくれば良かったです」
「魔銃が効くからチアキと泥舟に任せておけばいいよ」
「そうですね」
くつしたの火炎ブレスもゴーストに効くしな。
「オバケは手応えが無いからつまらん」
鏡子ねえさんは肉弾戦が出来ないので少々ご機嫌斜めだな。
あちこちうろうろする。
宝箱も見つけた。
運の良いことに銀箱だった、チアキが時間を掛けて罠を解いて開けた。
古ぼけた銀の鍵であった。
「なんだこれ?」
「宝箱の鍵か?」
「ちがうね、大きいよ、どこかのドアとかの鍵」
『おお、アンナニーナの舘の鍵じゃな』
「舘?」
舘なんかあったか?
と思って辺りを見回すとちょっと離れた所に洋館が建っていた。
「あんな建物あったか?」
「さっきまで無かった気がするな」
『二十五階ネームド、リッチ令嬢『アンナニーナ』の舘の鍵だ、さすが『Dリンクス』ついてるな』
Dスマホで検索してみた、ああ、なるほど、二十五階にはアイテムを入手することで始まるイベントがあるようだ。
ネームド『アンナニーナ』(推定三十五レベル)と戦えるらしい。
勝てばネームドアイテムドロップだそうだ。
「ネームドが出たらたおーす、そして『従魔創造の珠』を出してアンナニーナを従魔にするっ」
「そんな無茶な」
女子アンデットの従魔とかはあまり欲しくないよ。
「ひーん、オバケ洋館に行くなんてやだよう」
「がまんだみのり」
みのりを引きずるようにして洋館に向かう。
霧が深くなって雰囲気満点になってきたな。
カーンカーンとどこからから鐘の音が聞こえてきた。
近くで見る洋館は朽ち果てていた。
蔦が絡まり、金属の門はひしゃげている。
ねえさんが門を押すとギイと音を立てて開いた。
「よし、行こう」
「かなり強い魔物がいますね」
「朱雀さん陰陽師の力かなんか?」
「神力を使った探査術ですね」
なにげに陰陽師さんは便利だな。
俺の気配察知でも、強敵の感じがビンビンしていた。
「みのり、チアキはくつしたと一緒にいろ、朱雀さんも」
「あいー」
「おっけー」
「ばうんっ」
「わかりました」
前衛は俺と鏡子ねえさん、遊撃に泥舟だな。
鏡子ねえさんが舘の鍵を使い、玄関のドアを開いた。
埃が積もった廊下とエントランスホールが見える。
我々は慎重に洋館の中に入った。
バターン!
「ひいっ!!」
入って来たドアが閉まって、みのりが悲鳴を上げた。
エントランスの奥で赤黒い闇が凝り固まり姿を取った。
『きゃーはっはっは!! ようこそ異世界のお兄ちゃんたちっ!! 伯爵令嬢たる私、アンナニーナの舞踏会へっ』
真っ白なドレスに身を包んだ小さな女の子が耳障りな声で宣言した。
人形のような美少女だが、二重写しのように髑髏の姿も透けて見える。
部屋の隅からムクリムクリと夜会服を着たご婦人ゾンビ、礼服を身にまとった紳士ゾンビが現れる。
『踊りましょう、踊りましょうっ、あはは、死が貴方たちを包むまでねっ』
アンナニーナは手を上に上げ、パチリと鳴らした。
一斉にゾンビ達が俺達に襲いかかる。
「『おばけなんかこわくないさ~~、おばけなんかいない~~、なんかの見間違いだし死んだひとは帰ってこない~~♪』」
みのりが声を震わせながらリュートを弾き【オバケ嫌いの歌】を歌い始めた。
紳士淑女ゾンビたちは【オバケ嫌いの歌】の歌で怯むがアンナニーナは怯まない、上を向き、口を大きく開けて狂ったように笑う。
「いくぞっ!! 『Dリンクス』!!」
「「「「「おうっ!!」」」」」
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