第248話 装備狩りで21階を行く

 さて、装備も整ったので、朱雀さんを交えて初狩りである。

 今回は僧侶の聖典確保がメインだから二十階台を行く。

 オバケ階ぐらいまでかな。


 ポータルホールで二十階行きの石碑にタッチして転移する。

 朱雀さんはまだ権利が無いので鏡子ねえさんにひっついて貰った。

 みんながボンポン飛んで行き、俺が殿で石碑に触る。


 ブオンと視界が揺れた感じになり、二十階到着である。

 リボンちゃん以下の六匹のカメラピクシーがふよふよと寄ってきた。

 朱雀さんのピクシーは黒髪ロングで大人しそうな感じだね。


「朱雀さんは迷宮は?」

「ちょっと入ってDチューバーになったぐらいなので、ここまで深い所は初めてです」

「あ、じゃあ、先生のパーティを手伝ってよ、一人空きがあるから」

「ええ、構いませんよチアキさん」

「先生方が三人と、チアキちゃん、マリちゃん、朱雀さんで六人ね」

「そうそう、みのりねえちゃん」

「あれ、マリアさんは?」

「う、余ったか、レ、レイドで行こう」


 まあ、特に問題は無いか。

 レイド組む前提なら『ダーティペア』も、とか思ったのだが、奴らを入れると絶対に分け前で揉めるからやめておこう。


 各人に装備を渡す。

 ねえさんが鼻歌交じりで『金時の籠手』と『蹴早』を装備して、シュンシュン縮地している。

 やめなさい、うっとおしいから。


 みのりは『吟遊詩人の帽子』とリュートを装備して準備完了。

 チアキにガンベルトを巻いてやり、泥舟に長銃を渡した。

 俺も『暁』と『浦波』を出して腰のベルトに引っかけた。


「気が引き締まりますね」

「とりあえず好きに動いて、あとで連携を考えよう」

「はい、中距離は符で、味方が傷ついたら回復ですね」


 朱雀さんは、符を持つ関係で盾無しで、片手にギラファメイス装備である。

 回復も【ヒール】を掛けるよりも治療符の方が取り回しが良いかもしれないね。

 詠唱無しで飛ばせるのは良い。


 さて、六人フルメンバーの『Dリンクス』の出陣だ。


『フルメンバーリンクスだ』

『朱雀さん、期待スパチャ』


 いきなり朱雀さんにビロリンとスパチャが飛んだ。


「あ、あ、ありがとうございます、初スパチャです」

『初々しい、いいねっ、俺もスパチャ』


 ビロリンビロリン。


「あ、あ、どうもすいません」


 朱雀さんはペコペコと頭を下げた。


 さて、チアキを先頭に、階段を下りて、二十一階を歩き始める。


「ハイオーク三」


 バキューン!!

 ダキュンダキュン!!


 鉄砲組の一斉発射で右端の一匹が倒れた。

 二匹のハイオークはランタンを捨てて走り寄ってくる。


「火炎陣急急如律令!」


 朱雀さんの手から火炎符が回転しながら飛び、オークの頭部を火に包んだ。


 GUGYAAAA!!


 火炎で苦しむハイオークの土手っ腹に瞬間移動してきた鏡子ねえさんの蹴りが入った。


 ボキャ!


 鈍い音がしてハイオークの巨体が吹き飛び壁にぶち当たった。

 無傷のオークが鏡子ねえさんにむけて錆びた剣を振り上げた。


 シュイン!


 ねえさんの姿がかき消えてハイオークの後ろに出現して首に絡みつき、一瞬で折った。


「ははは、わははは、いいなあ『蹴早』、これはご機嫌だぜっ」

「蹴りの威力まで上がってるね」

「素晴らしい、[縮地]万歳」


 まったくだ。

 みのりが歌う暇も無かったな。


「火炎符も良いですね、残弾は何枚ですか?」

「あと火が四枚、氷が五枚、風が五枚ですね、治療符は七枚持って来ました」


 朱雀さんがポケットから符を出してばらりと扇のように広げた。


「土はないの?」

「石室みたいな場所では使いにくいんですよ、地面がある場所なら有効なんですけど」


 あ、土は石つぶてを発生させるんじゃなくて、自然物を使う系なのか。

 なるほどなあ。


 後ろからそろそろとオーガーが一匹接近していた。

 くつしたが唸る。

 悟られたと知ったオーガーが鉄棒を振り上げて襲って来た。


 ガキン!


 『浦波』で打撃を受けて踏み込んで暁で首を刈った。


 バシューー!!


 血が噴き出して床を汚し、オーガーは倒れた。


『タカシも一撃必殺だよなあ』

『軽戦士になってなんだか技の切れが良くなった感じ』

『クールだわああ』


 リスナーのみんなありがとう。


 ハイオークからは、魔石と高級豚肉、オーク帽、551の豚まんが出た。


「お、豚まん、蒸かしてある?」

「無い、蒸かさないと食べられない奴だ」

「ちええ」


 なんでもすぐ食べようとしないでよ。


 経験値の霧を吸い込んで、朱雀さんがレベルアップを繰り返していた。


「え、朱雀さんって、実は低レベル?」

「あはは、三レベルでした、今は六レベルです」

「やっぱり陰陽師の人は低レベルでも場慣れしてる感じねえ」


 まあ、本来はレベルアップ無しで妖魔と戦う職業だからなあ。

 ステータスアップしてなくても素人では無いんだよ。


 オーガーからは魔石と鬼の拳骨(あられ)が出た。

 さっそくねえさんが封を切ってばりばり食べている。


「しかし、良くドロップしますね」

「みのりねえちゃんが【豪運】持ってるって噂だよっ」

「もう、やめてようチアキちゃん~」

「やはりただ者ではありませんね、峰屋さまのご一族ですから」


 峰屋家ってなんか陰陽道とかと関係があるのかね?

 旧家だから関わりがあっても不思議では無いけれど。

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