第247話 今日は朱雀さん歓迎装備狩り

 放課後、俺達は川崎に出た。

 朱雀さんを川崎観光につれていった、鏡子ねえさんとチアキとは地獄門前で待ち合わせだ。

 マリちゃんも今日はゲドラさんに革細工を習うと言って付いて来た。

 クラフト配信をやるらしい。


「あ、いたいた、鏡子おねえちゃん~~」


 みのりが三人を見つけてデデデと寄っていった。


 今日も川崎迷宮地獄門の広場は人があふれていて、屋台とかが賑わっている。


「あ『Dリンクス』よ、フルメンバーだからメイン狩りね」

「最速ぐらいでC級昇格なのよね、凄いわ」

「生みのりん、ちっちゃ可愛いなあ」


 Dチューバーのおっかけの人も沢山いるなあ。


「どうでした川崎観光は」


 俺は朱雀さんに聞いてみた。


「とても賑やかで活気のある街ですね、いつもテレビで見ているお大師様にお参りできて良かったです」


 年始の番組に毎年中継されるからね。

 近所の名所であるね。


「まずは基本的な聖典をお店で買おう、『Dリンクス』から出すよ」

「本当に良いんですか、申し訳ないです」

「いいっていいって、その分働きで返してくれよ」

「はい、頑張ります、鏡子さん」


 俺達は連れだって複合商業施設に入った。


「わあ、冒険者関係のお店ばっかりですね」

「結構なんでも売ってるよ、迷宮売店より高いけどね」


 品揃えは外の冒険ショップの方が良いんだよね。

 売店よりも何割か高いんだけど。

 三階までエレベーターに乗って上がって、奧の『三間堂』へと向かう。


 ウインドウ越しに清美さんが俺達を見つけて手を振ってくれた。


「いらっしゃい、タカシ少年。今日は聖典かな」

「基本的な聖典を下さい」

「朱雀さんが入ったと聞いたんで揃えておいたよ。【治癒】【解毒】【頑健】【解病】【鎮静】の基本五点セットだよ」

「たすかります」


 三種あれば良いと思っていたが、【解病】【鎮静】は良いね。

 特に【鎮静】は鏡子ねえさんの【狂化】バーサークも解除できるね。

 俺はまとめて聖典を買って朱雀さんに渡した。


「ここで覚えて行ってもいいですか」

「かまわないよー、ところで陰陽の符を卸してみる気はないかね、朱雀さん」

「符ですか、売れる物ですか?」

「和製のスクロールみたいな物だからね、意外と売れると思うよ」


 そうか、速攻性の符なら需要があるかもね。


「陰陽師の宗家に聞いて見ませんとお返事しかねます」

「今度聞いといてよ、欲しがる人一杯いると思うんだ。治療符とか、使いやすそうだしね」


 なかなか清美さんはやり手だなあ。

 朱雀さんはコモン聖典を開いて奇跡を覚えていった。


「【復活リライブ】の方は覚えたの?」

「い、いえまだ」

「レア聖典とか持ってると危ないよ、朱雀ねえちゃん」

「おんおんっ」


 くつしたも同意見のようだ。


「じゅ、十億で買うけど、だめかね?」

「「「だめです」」」


 清美さんは残念そうな表情を浮かべた。

 レア聖典なんか動かすだけで儲かるからなあ。


 朱雀さんは【復活リライブ】の聖典を開いて覚えた。

 金色の粒子がキラキラと光り胸に吸い込まれた。


「はあ、これで私も『僧侶プリースト』ですね」

「まあ、ジョブチェンジした時から『僧侶プリースト』だと思うけど」

「なんとなく気持ちは解るね」


「これから【ハイヒール】と【鎮魂】探しだろ、かぶったら持って来て、高く買うよ」

「はい、かぶったら持って来ますよ」

「『Dリンクス』は【豪運】持ちだから良いやね」


 清美さんにお礼を言って三間堂を後にした。


「次は潜ります?」

「いや、売店で装備を調えよう」

「一応陰陽道の制服を着ていますが」


 この黒スーツは陰陽道の制服だったのか。


「麒麟とか蝴蝶さんは巫女服みたいの着てたけど」

「あれは古式装備ですね。ある程度の防護効果があります」

「見た目のアピールなら巫女服に装甲を付けるべきねっ」

「巫女さん格好いいよっ」

「古式装備は京都に戻らないと……」

「まあ、今日は上から着けられる、籠手と脚絆、あと胸宛てかな」


 泥舟の装備に近くなるか。

 というか、俺も軽装備だから同じ感じだけど。


 というわけで、複合商業施設を抜けて、地獄門をくぐり、売店へと向かった。


「あ、いらっしゃいタカシさん、『僧侶プリースト』さん入ったんですって」

「はい、今日は彼女の装備の相談をしようと思って」

「僧侶は重装備も可能だけれども、陰陽師の持ち味を生かすなら動き易い軽装備ね」


 売店のおねえさんが装備を見繕ってくれた。

 『Dリンクス』の口座で支払いを済ませる。

 まあ、普通の軽戦士系の装備だね。


「将来的には巫女装備にこれを着けましょうよ」

「は、はい、そうですね、みのりさん」


 みのりは巫女装備をさせたいようだ。

 足軽装備の泥舟も居るから似合っていて良いかもしれない。


 黒スーツの上から装備を着けると、サラリーマン配信冒険者みたいになるね。

 OL系の人でこんな感じの人が居たような気がする。


「それじゃ、さっそく二十階へ跳んで装備狩りをしよう」

「よ、よろしくお願いします」

「それでは、私は鍛冶場に行ってきますね」

「マリちゃんもクラフト配信頑張ってね」

「はい、将来的にはくつしたくんの鞍とか作りたいです」


 おー、チアキがくつしたに乗るための鞍かあ、良いね。

 何か作れる人がパーティに居ると便利で良いな。

 ちなみに今日は高田君の斧のホルスター製作らしい。

 ドワーフのゲドラさんも色々出来るなあ。


 マリちゃんを見送って、俺達はポータルホールに入り、二十階へと跳んだ。

 さて、聖典は出るかな。

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