第244話 みんなでモナリザンで晩ご飯

 朱雀さんがめでたく『僧侶プリースト』となれたのでヴァフォメットさんにお礼を言って悪魔教会を後にした。


「それでは、みんなで晩ご飯に行きましょう、朱雀さんもいらっしゃい」

「よろしいのですか、お邪魔ではないですか?」

「何を言っている、朱雀、お前はもう『Dリンクス』の一員だから」

「というか、まだ新装備も見せて貰ってないし」

「あ、怒濤の展開で忘れていました」

「食事の後で見せてね~~」

「は、はい」


 なんだかんだと、うちの連中は人なつっこいよね。

 

 換金カウンターで精算して、迷宮から出る。

 リボンちゃん、また明日ね。

 彼女たちに手を振って地獄門を通った。


 外に出ると川崎の街はすっかり夕暮れであった。

 街の騒音を聞くと現実に帰ってきた気がするね。


「先生、今日はどこに行くの?」

「どうしようか、チアキちゃん、またモナリザンでいいかな」

「いいようっ、またナポリタンを食べるっ」

「そうかそうか」


 宮川先生が目を細めてチアキを見ていた。


 先生方を見ていると教師という仕事もやりがいがありそうだなって思う。

 俺は将来、プロの配信冒険者をやるつもりだけど、長期的には配信冒険者学校の先生も良いよな。

 まだまだ先の話だけどね。


 みんなで夕暮れの街を歩いて行く。

 ああ、無警戒に歩けるって素晴らしいね。

 とはいえ、ロシアンも居るので全く無警戒という訳では無い。

 今も知らん顔をして『チャーミーハニー』のメンバーが二人ほど近くで移動しているし、私服の護衛も何人かいるみたいだね。


「朱雀さんは術師なの?」

「はい、そちらの才能がありまして」

「美春さんは陰陽師の才能無かったそうなのに」

「ああ、美春ねえさまはこっそりDチューバーになっていたのがばれまして怒られてましたよ」

「あらー、ばれてしまいましたかー」

「もう、こんなご時世ですから不問にされましたけど」

「乃木美春さんは『射手アーチャー』なんだよね、今度話してみたいなあ」

「望月先生と気があうかもしれませんよ~、すごいコンパウンドボウを作ってましたから、京都大学の『素材研』所属ですって」

「それは名門だなあ」


 人と人の繋がりは新しいつながりを呼んで広がっていくなあ。

 おれは三年、一人で迷宮に毎日潜っていたけど、その時培った人の繋がりが、鏡子ねえさんだし、厳岩師匠だったりする。

 レアスキルを取った日から怒濤のようにつながりが作られて更新してめまぐるしく状況が変わって行ったなあ。

 たぶん、人生にはそういう変革の時期のような物があって、今がその時なんだろうね。


 モナリザンに入った。

 予約もしてないのだが、たまたまテーブルが空いていた。

 なんとなく政府の組織が忖度してる気がしないでもないが、気がつけない事は無いって事なので気にしないようにしよう。

 中に入ると奧のテーブルに黒魔導師みたいな鮫島さんが居たとしてもだ。


 チアキがトコトコと鮫島さんに近づいて行った。


「鮫島さん、今度『Dリンクス』に僧侶さんとして朱雀さんが入ったから、マンションを一室開けてよ」

「……」


 チアキの直球攻撃だ。

 虚を突かれて手をプルプルさせている鮫島さんというのも珍しい見物である。


「だ、だれかチャーミーの部屋を出て行けという、そういう意味ですか? チアキさん」

「そう、楽園の人でも良いよ」

「……」


 うわ、幼女の要求が無茶ぶりだ。


「まあ、そういうのはもう少し後だ、無茶言うな、チアキ」

「そうかー、なるべく『僧侶プリースト』とは近くに住みたい、りっちょんとかキチガイいるから」

「た、確かに、ちょっと手配しておきますよ」

「おねがいね」


 チアキと一緒に自分たちの席に戻った。


「チアキちゃん凄い」

「たよりになる」

「えっへへへ」


 みのりとマリちゃんに褒められてチアキは照れた。


「あ、これくつしたくん」

「ありがと、レッスンどうだった」

「リズム感良いし、監督褒めてたよ、あとマリアさんがもふってた」

「やるなあ、くつした」


 チアキはくつしたの珠を受け取って褒めた。


 俺達は口々に注文を頼んだ。

 チアキはナポリタンを頼んでいた。

 先生方はワインも頼んでいるね。


「朱雀さん、符術の方は何ができるの?」

「ええと、四属の符を作って投射攻撃ができますね」

「威力の方はどんな感じですか」


 いつの間にか鮫島さんが近くに立っていて聞いて来た。


「え、ええと、どなた?」

「鮫島さん、ええと、政府機関の人かな」

「あ、ああ、初めまして東郷朱雀です」

「『チャーミーハニー』の鮫島です、『射手アーチャー』をやってます」

「Dチューブの動画で見る限り、『火球』『氷弾』『風刃』『礫弾』と同じぐらいでしょうか」

「ジョブ関係無く魔法攻撃を繰り出せるのは強いですね、簡単な『司教』みたいなんですね」

「はい、術師は符術で前衛をサポートします、治療符なんかもありますよ」


 朱雀さんが懐から符を出して見せてくれた。


「面白いデザイン、符は誰でも作れますか」


 マリちゃんが符をしげしげ見ながら聞いてきた。


「陰陽道は神力が無いと、神力が高いと色々できますね。方喰さんは神力ありそうです、タカシさんはあまり無さそうです、みのりさんが、なんだか神力すごいです」


 魔力とは違うのか、そういえば『大神降ろし』の時に、神力微量とか言われていたな。


「そうか、みのりのドロップ率は神力が高いからか」

「えへへ~、やめてよ~~、鏡子おねえちゃんたら~~」


 みのりがぐねぐねしながら照れた。

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