第245話 新装備、その名は『蹴早』

 新メンバーが入って楽しく食事をする。

 僧侶で陰陽師さんが入ると色々と戦略も変わりそうだ。

 中距離の火力が符術で厚くなり、戦闘継続能力も上がる感じだね。

 特に、最悪の場合、蘇生の可能性があるのは良い。

 レベルが低いうちは蘇生確率は低いだろうけれど、熟練すれば確実性が上がるだろう。

 戦闘中に倒れても、復帰できるかも、というのはこれから激しくなっていく戦闘に貢献しそうだ。

 死んだら死にっぱなしでパーティの戦力が落ちるのは怖いからね。

 将来的にはサッチャンの持って居る【蘇生リザレクト】が有れば最高なんだが、あれも相当なレア奇跡だろう。

 【復活リライブ】は瀕死で息を吹き返すので、そこから治療は必要なんだけど、死という冷徹で大きい物を乗り越えられるのはありがたい。

 『僧侶プリースト』の奇跡の醍醐味だね。


「よし、明日のメイン狩りは朱雀を入れて慣熟戦闘がてら逆打ちをして28階で甲虫狩りをしよう」


 逆打ちというのは、三十階ポータルを使って跳び、登り方向へ狩りをすることだ。

 甲虫フロアのドロップ装備が人気があるので、行うパーティが多い。

 あのフロア、前二つの蜂と七色蝶がウザイからね。


「オバケ階で【鎮魂ターンアンデット】と、トロールから【上治癒ハイヒール】出した方が良くないかな?」

「ああ、そっちも要るなあ、どうしようか、タカシ」

「朱雀さん、符術は動けた方が良いですか?」

「そうですね、あまり重装甲だと良く無い感じです」

「じゃあ、先に聖典狩りか」

「うう、またオバケ……」

「ごめんね、うちが聖典貰ってしまって」

「ううん、藍田さんにも必要だし」

「藍田さん喜んでいたお」


 明日はまた二十階台を狩りするかな。

 三十階から先が見たい気もするけど、聖典も揃えた方が良いしね。

 パーティの連携も確かめたいし。


「知り合いのパーティに僧侶系の人が増えるとありがたいね」

「新宮くんのお母様のハイヒールとか、安心感ありますしね」

「そうそう、藍田さんがハイヒール三回使えるシンボル持ってるだけで心強いよね」


 ハイヒールは結構魔力消費量が多いので、駆け出しだと二三回しか使えないんだよね。

 なので、三回ハイヒールが使えるシンボルは破格なんだ。

 自分で覚えたら回数が増える感じにもなるしね。

 東海林らしい堅実なレアチケットの使い方だと言えよう。


 楽しく食事も終わりウエィトレスさんが食器を片付けていった。

 『チャーミーハニー』の方は二人が新しく来てスパゲティを食べているな。


「これが鏡子さんの新装備退魔具足『蹴早』です」


 朱雀さんがうやうやしく桐箱を鞄から出してテーブルに置いた。


 鏡子ねえさんがカパリと蓋を開けた。


「おお、デザインとか色合いが『金時の籠手』と似てる」

「合わせ装備として製作したそうです」


 なんとも綺麗な具足だった。

 すね当てと靴が一体になった感じだね。


「狙った表権能が無事顕現しました」

「おお、何?」


 表権能が付くと、迷宮の銀装備級と並ぶね。


「[縮地]です」

「「「「「は?」」」」」

「三尺ほどを神力を使って瞬間移動できます」

「三尺、0.90909だから、一メートルぐらいか……、つ、強く無いですか?」


 さすが東海林だ、一瞬でメートル換算したぞ。


「ええ、[縮地]は足装備の最強権能と言われています」

「そうかそうか、それはすごい……、どう凄いんだ、タカシ」

「瞬間移動だから、一瞬で一メートル間合いを詰められるし、相手の攻撃を[縮地]で避けられるよ」

「おおおおおお!! それはすごいっ!!」


 鏡子ねえさんが興奮して立ち上がった。


「さらに、カミヤドリも確認しました、タイマノケハヤさまがお宿りになられました」

「おお、ケハヤか、東海林、だれ?」

「歴史上初の天覧相撲の選手ですよ、鏡子さん」

「そうですね、惜しくも敗者となられましたが、古代のグラップラーさまです」

「そうかそうか、うん、それは良い」


 カミヤドリもしたかあ、これで『大神降ろし』を自由に使えるね。

 『金時の籠手』にもタジカラオノミコト様が宿ってるけど、第三段階にならないと出てこれなかったから。


「真権能は[角折]強力な蹴り技武技です」

「おお、それは凄い、試したい試したい」

「明日にしようよ、ねえさん」


 なんだかんだ言いながら鏡子ねえさんは『蹴早』を履いた。


「おっ、おおっ!!」


 シュンシュンとねえさんが店内で瞬間移動している。

 表権能の[縮地]か、これは使えそうだ。


「お客様、店内で瞬間移動はおやめ下さい」

「ご、ごめんなさい」


 ウエイトレスさんにねえさんが怒られた。


「良い物を貰ったなあ、東郷の爺さんも乃木さんも頑張ったなあ」

「久々に二人で熱を上げて鍛冶をしてましたよ。足に馴染んだら一度見せに来いと言ってました」

「うん、そうだな、みんなでまた京都に行こう」

「わあ、行ってみたい」


 チアキが両手を上げて喜んだ。

 うん、この前は楽しかったから、またみんなで行きたいね。

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