第243話 朱雀さんが『Dリンクス』に入る

「『僧兵モンク』があるんだけど……」

「ああ、それは白虎とかも騒いでたんですけど、どうも陰陽師になる試験を受けるときに神に祈って漢字一文字を貰う試験がありまして、どうも、それの関係らしいんで」


 ああ、そうか陰陽師だから神官職の資格がクリアできて、それで神様からなにか印を貰う事で代用となせるのか。


『陰陽師は『僧兵モンク』成り放題だっ!』

『やっぱ試験があるんだねえ、野良陰陽師はいないのか』


「おお、誰か『僧兵モンク』に成った?」

「いえ、まずは皆、普通の職業で行こうってなってましたよ」


 そうか、初手『僧兵モンク』を選ぶ人はそんなに居ないのだな。

 魔法剣士と一緒で、どっちつかずになりがちだもんね。


「朱雀さんは『Dリンクス』に入る気はありますか?」

「お、お気持ちは嬉しいんですけど、その、学校もありますし」

「大学生?」

「高校です、同い年ですよタカシさん」

「「「「「お~~~っ」」」」」

「くそ、東郷のジジイに直接掛け合ってやるっ」


 鏡子ねえさんが懐からDスマホを抜いた。


「よお、東郷の爺さん、私だ、鏡子だ。さっそくだが、お前の孫の朱雀を『Dリンクス』にくれっ」


 鏡子ねえさんの通話リテラシーの無さよ。


「ええっ? いいじゃんかようっ、え、タカシに変われって、わかった」


 鏡子ねえさんがスマホを押しつけて来た。

 んもう。


「もしもし、新宮です」

『おう、タカシ君、新しい装備は届いたようじゃが、鏡子は何を言っておるじゃ?』

「新装備ありがとうございます、まだ受け取って無いんですけどね。で、今『Dリンクス』では『僧侶プリースト』を探していまして」


 俺は東郷さんに順を追って説明した。


『そうかー、レア奇跡の【復活リライブ】とはなあ、それは僧侶も欲しくなるわいな。ふむ、朱雀本人が良ければ東郷家としては問題無い、というか、『Dリンクス』との連絡に一人陰陽師系を入れておきたいなとは乃木とも言っておったんじゃよ』

「本人の気持ち次第ですか?」

「えっ」


 朱雀さんがこっちを見た。


『そうじゃ、朱雀に変わっておくれ』

「はい」


 俺はスマホを朱雀さんに渡した。


「住む所どうするよ」

「チャーミーの姉ちゃんを一人マンションから追い出そうよっ」


 うわ、チアキさん、あなた悪辣な事を言いますね。


「そうすると京都からの転入ですね」

「陰陽師なら学習院とかじゃないですか?」

「関東にも来ているはずですよね明治維新で」


 先生方が噂話をしているな。

 治療の配信冒険者パーティが来たので竹宮先生が受付をしていた。

 先生はヘラクレス装備のままなのでぎょっとされていたぞ。


「ふう、お電話ありがとうございました、鏡子さん」

「なんのなんの、で、どうだった?」

「乃木先生と一緒に宗家に掛け合ってくれるそうです」

「川崎、来るんだな」

「は、はい、その、よろしくお願いします」


 朱雀さんは俺達に向かって頭を下げた。


「「「「「ばんざーいばんざーい」」」」」

『おお、『Dリンクス』僧侶ゲットだぜ!』

『僧兵がよくね?』

『いや、レア奇跡だから僧兵が使えるか未知数だよ、『僧侶プリースト』の方が確実』

『符術も使える『僧侶プリースト』だ! 面白いっ』


 うん、京都の陰陽師界とのつながりも太くなるし、良いと思うね。

 あと、『Dリンクス』を贔屓にした事でハブられているのは可哀想だし。


 さっそくバフォメットさんに僧侶への転職をして貰う事にした。

 治療のパーティは終わって帰って行った。


 バフォメットさんがパネルを出し、朱雀さんがYESのボタンを押した。


 どこからか低くパイプオルガンの音が鳴り響いてきた。

 真っ白な雲がもくもくと湧き出してあたりを雲海みたいな風景に変える。


 空間がねじ曲がり遙か彼方の青空から羽の生えた女神さまがゆっくりと降りて来た。


 いやあ、いつ見てもセコンディナさまはありがたいね。

 我々は神気に打たれ頭を下げて地面に伏した。


『異世界の嬰児よ、奇跡を知らぬ愛し子よ、よくぞ神への信仰を育てました、あなたは今、『僧侶プリースト』への転職条件を満たしました。それを言祝ぎ。わが愛の神の力を授けましょう』

「はい」


『世界の隅々まで愛を広げなさい、傷つき悲しむ人々に癒やしを与えなさい。トウゴウスザクの力で愛と平和をこの世にあふれさせるのです』

「頑張ります」


 女神様は笑顔で手をかざし、キラキラした光の奔流を朱雀さんの頭に流し込んだ。


『異世界の神様の信徒さんね、戒律を守って精進しなさい』

「ありがとうございます、セコンディナさま」


 女神さまはきゅっと笑うと羽を羽ばたかせて青空に向けて上昇していった。


「これが転職……」

「これで、トウドウスザクは僧侶プリーストに転職した、頑張りたまえ」

「バ、バフォメットさまもありがとうございました」

「前駆悪魔を退治したり封じたりする一族だと信じられないかもしれないけれど、悪魔も人もあまり変わらないよ、良い悪魔も居るし、悪い人間も居るのさ」

「そう、かもしれませんね……」

「すこし力が付いたら、封印された妖魔を倒しに行っても良いかもしれないね、何かつかめるかもしれない」

「封印妖魔を……、倒す……」


 そうだね、封印妖魔を倒しに行くと良いことあるかもしれないね。

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