第242話 京都から新装備が届く

 とりあえず蹴散らした半グレたちは戻ってくる事はなかった。

 普通にずんずん歩いて帰っていく。


 五階に出ると空が赤かった。

 なんとなく、今日もよく遊んだなという気持ちになる。

 迷宮探検はやっぱり楽しいかもしれない。


 他の配信冒険者たちもぞろぞろと階段を上がって行く。

 ちょうどきりが良い時間なんだよね。


 夜に迷宮に潜るパーティも居ないでは無いが普通のパーティはプロもアマも、早めに潜って早めに戻ってくる。

 登山系の考え方なのかもね。

 迷宮では悪天候は無いんだけど。


『夕のお帰りラッシュだなあ』

『ワイもだいたいこの時間ぐらいに上がる。でも換金カウンターが混んだりで、デメリットも多いのよ』

『暗くなった迷宮はさびしいからな。まあ、フロア階以外関係無いけど』

『墓場階は夜は怖い』

『本物のオバケ出るしな』


 そりゃあ、墓場階に居るのは本物のオバケだよな。


 三階草原階を抜けると、レストラン階である。

 ここまで来ると魔物は出ないので帰って来たなって感じがするね。


 ロビーまで上がった。

 相変わらずレグルス陛下が女の子を侍らせているが、まあ、エロドラゴンはほっときましょう。


 ソファーから黒スーツでサングラスの女性が立ち上がって寄ってきた。

 誰だ?

 陰陽師の人かな。


「こんにちはタカシさん、朱雀です、この前はお世話になりましたね」

「朱雀さん、こんにちは、どうしたんですか?」

「お爺さまからお使いを頼まれまして、鏡子さんの足具足、仕上がりましたよ」

「「「おおっ!」」」


 全員が色めき立った。


「わざわざ届けてくれたんですか、ありがとうございます」

「とんでもありません、一度川崎迷宮も見てみたいと思いまして。渡りに船だったんですよ」


 全員でソファーに腰掛けて仕分け作業をしながら話を聞くことにした。

 収納袋から、本日の戦利品を出して並べる。

 今日はマリちゃんがオークぬいぐるみが欲しいだけだね。


 朱雀さんは陰陽師の中でも最初に『Dリンクス』に心を開いてくれた人だ。

 ティンペー盾も貰ったね。


「陰陽師パーティはどんな感じですか? 白虎君は張り切ってますか?」

「ええ、頑張って、乃木さまと祖父を連れて難波ダンジョンを潜っています」

『陰陽師たちは『京都一条戻り橋』てえ風雅な名前のパーティで潜ってるな。戦士が二人に、術師が一人、僧侶が一人で、『創作者クリエイター』の爺が二人だ。二十階突破してるぜ』

『術師が魔法と巫術も使うんで面白い。キリンちゃんが式神分身してたりね』

『割と関西だと新進気鋭のパーティだな。退魔装備も何本か現有しているはず』

『退魔装備は表権能付きでレア装備水準だからね。結構強い』

「麒麟さんが魔術師ウイザードで、蝴蝶さんが『僧侶プリースト』かな?」

「はい、あの時の四人がメインですね」


 そうか、白虎君も頑張ってるんだな。

 なんだか、俺は愉快な気持ちになった。


 チアキとマリちゃんが朱雀さんをじっと見ていた。

 なんですか君たち。


「「僧侶が京都から来た」」


 あっ!!


「す、朱雀さんは陰陽師パーティには参加されないのですか?」

「え、ああ、その、参加はしたいのですが、ちょっと麒麟に嫌われてしまいまして、その、参加出来ないんですよ」


 朱雀さんがはにかんだ。

 後ろからがしっと手が出て来て朱雀さんの肩を掴んだ。


「よーし、東郷の爺さんの孫なら好都合だっ、朱雀、君は『Dリンクス』に入れ」

「そーよそーよ、麒麟さんと蝴蝶さんにざまぁしましょうっ」


 鏡子ねえさんが唐突に現れ、みのりと一緒にそんな事を言う。


「え、でも、私は陰陽師ですよ?」

「神道の関係者なら『僧侶プリースト』は楽勝だ、問題ない、今『Dリンクス』では絶賛僧侶の募集中なのだっ」

「お札の魔術も使えるし、すごいよねっ、陰陽僧侶!」


 あいかわらず、相手の気持ちも確かめないで突っ走って行く『Dリンクス』のメンバーであるな。

 うん。


「朱雀さん、川崎に移住して、『Dリンクス』に入ってください」

「え? え?」

「そうとなれば話は早い、転職だ~~」


 鏡子ねえさんは朱雀さんを横抱えにして悪魔神殿に引っ張っていった。

 強引だなあ。


 ドアを開けると、今日の悪魔神父さんはバフォメットさんだった。


「やあ、いらっしゃい、タカシとその仲間達、今日は何の用だい?」

「この子の転職診断をお願いしたい」

「鏡子さん、そんな勝手に」


 朱雀さんは動揺しているようだ。


「神道関係者なら信仰心は厚いよね」

「まあ、大体は『僧侶プリースト』になりやすいが、どれ、こちらにおいでなさい」

「は、はい」


 スタンダードな悪魔さんであるバフォメットさんに朱雀さんはちょっとびびっているなあ。

 解らなくも無いが。


「おお、おお、良く鍛えてあるね。転職するならこれぐらいか」


 バフォメットさんは空間に転職候補のパネルを並べた。

 おお、いっぱいあるなあ。


 『戦士』『盗賊』『魔法使い』『僧侶』『射手』 何でも出来るね。

 ……、あれ、普通に『僧兵』があるんだが。


『『『『『僧兵』来た~~!!』』』』』

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