第240話 六階を行く半グレとすれ違う
六階に下りて小休止である。
おトイレもあって良いね。
ナッツバーをボリボリと囓る。
チアキはツナマヨおにぎりを食べて、泥舟は甘納豆だな。
行動食にもそれぞれ個性が出るものだ。
「六階に入ると、迷宮って感じになりますね」
「石造りの迷宮が威圧的ですな」
「とりあえず、十階まで下りないとボス戦ができませんしね」
先生方もチョコバーとか、ミックスナッツなどの行動食を口にしていた。
『Dチューバー先生は良いなあ、俺らの頃には考えられなかった』
『それだけ迷宮が社会的に無視できない存在になってきたんだなあ』
『死亡事故多いもんね』
今またDチューバーブームが始まって、小中学生や高校生が迷宮に挑み、死んでいってる。
浅い階だと死骸は見つかる事が多いし、親御さんが裕福なら蘇生して貰える事も多い。
が、貧乏な家庭の子供だと、死んだら死にっぱなしである。
蘇生に三百万も出せないんだよな。
悪魔神殿では治癒の奇跡も有料でやっているのだが、世の中にはケチな奴がいて、余所のパーティの僧侶に無料で治癒の奇跡を掛けてくれって言う奴も多いらしい。
藍田さんなんかも嫌な思いをしたと聞いた。
本当に図々しい奴はどこにでもいるからなあ。
一休みすると元気が戻った。
みのりの【元気の歌】が恋しくなるね。
薄暗い迷宮をライトを点けて歩く。
望月先生がジェントスの折りたたみライトを胸に挿して歩いている。
光量が結構大きいな。
「配信冒険者パーティ、六」
チアキが道の先の存在を知らせてくる。
ライトが近づいてくる。
半グレかな。
両方のパーティの間に硬質な緊張感が漂う。
「お、すげえっ、ギラファ装備にヘラクレス装備じゃん、どうしたのそれ」
「「……」」
マリちゃんも竹宮先生も頬面を着けて黙ったまま歩く。
相手はチャラそうな半グレだった。
「おい、返事ぐらいしろやあああっ!! ああっ!! ねえちゃんよおっ!!」
「銃がお前を狙っている、黙ってすれ違え」
泥舟が長銃を構えたまま固い声で言った。
「銃? そんなもん……、魔銃、足軽装備……、泥舟」
「詮索無用」
これ以上口をきいたら撃つぞと殺気を発散させて泥舟は言った。
先頭のチンピラはゴクリと唾を飲み込んで黙った。
よし、最初の関門は突破だ。
次はすれ違う時だ。
チアキが冷たい目で銃把に手を掛けて歩いている。
相手が抜いたら抜き打ちするつもりだろう。
高田君がチアキの隣に並んだ。
ニコニコしながら高田君は歩く。
敵の前衛が舌打ちをした。
射手の雰囲気が悪い。
魔銃を手に入れられたら射手は銃手になれるからな。
「ナイフを投げたら、『Dリンクス』がお前達を殺す」
射手は手を戻した。
すれ違った。
よし、相手の間合いも、こっちの間合いも外れた。
「「「「「「ふう」」」」」」
『迷宮でのすれ違いは怖いんだ、いつ殺し合いが起こってもおかしく無い』
『本当は二三人ぬっ殺すと良いんだよな、ヤベエパーティって噂になって喧嘩ふっかけてくる奴は居なくなるから』
『先生居るから無理だ。タカシでなんとか止まったな』
『野生動物と一緒だからなあ、半グレ』
マップを見た。
六階の南の宝箱に行くんだろうな。
「こ、怖かったですねえ」
「はあ、びっくりしましたよ」
「学校の不良生徒とは迫力がちがいますね」
「半グレは生活かかってますからね」
「宝が手に入らなかったら、そいつのせいになって殴られる」
「え、ランダムポップなのにかい?」
「確実に取れる訳じゃないだろうに」
チアキは顔をしかめた。
「関係無い、宝が出ないのは気合いが足りないせいだって無茶苦茶言われて殴られる」
「酷い話ねえ」
学校の先生と半グレだと世界が違いすぎるからなあ。
「タカシ」
泥舟が後ろに視線をやった。
ライトが付いて来ている。
接敵した瞬間に襲いかかる手か。
泥舟が長銃を構えた。
「殺しちゃう?」
「いや、警告だよ」
バキューン!!
ガチャーン。
遠くで尾行していた半グレパーティのライトが一つ砕けた。
慌ててるな。
奴らは諦めたのか尾行をやめて去っていった。
「今度はオーク四」
前方からオレンジ色の光が近づいてきている。
人間の配信冒険者パーティだとライトは青白い。
あれは、魔物が持っている油で燃えるランタンだな。
ピウピウと望月先生の持つ麻痺剤水鉄砲が発射されて、オークの顔に掛かり、二匹が麻痺した。
吠え声を上げて二匹のオークが突進してくる。
マリちゃんと竹宮先生が盾で攻撃を受け止めて、宮川先生が接近して斬る。
一匹の腕に傷が付いて剣を取り落とした。
ドカン!
と、マリちゃんのギラファメイスが当たり、ドカドカと竹宮先生のモーニングスターも当たった。
UGAAAA!!
怒った最後のオークが錆びた剣を無茶苦茶に振り回す、だが、見よ、ギラファ装備もヘラクレス装備も斬撃を跳ね返す。
マリちゃんと竹宮先生は二人でオークを囲んでボコった。
宮川先生はもう一匹のオークの心臓を突き、殺した。
「装備が違うと楽だわ~~」
「六階のオークぐらいだと攻撃が効きませんね」
「良いね、素晴らしい、安全でなによりだよ」
オークは粒子になり、魔力霧に変わり、魔石が一個とオークハムが落ちてきて床に転がった。
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