第239話 今日は放課後先生支援狩り

 今日も今日とて川崎大迷宮である。

 みのりと鏡子ねえさんはくつしたと一緒にレッスンに行ってしまった。


 『Dリンクス』は俺と、泥舟と、チアキ、それにマリちゃんだな。

 『オーバーザレインボー』は東海林と高田くんが来ていた。

 高田君に学校で牛戦斧をあげたら試して見るとやってきたのだ。


「牛戦斧、重いおっ」

「戦斧、投げれるのか?」

「投げるのは【手斧投擲】スキルだから、無理だお」

「【斧術】を生やさないとな」

「がんばるおっ」


 でっかい戦斧を持った高田君は格好いいな。


 今は三階の草原で、マリちゃんと竹宮先生の昆虫装甲を着けている所だ。

 カメラピクシーもふよふよ寄ってきた。


『おお、今日は先生介護狩りか』

『こっちはこっちでのんびりしていて好きだな』

『高田が大斧を持ってる! 真ゲッターっぽい!!』

「真ゲッターを目指すおっ!」


 マリちゃんは二回目なので、ちゃっちゃと芋虫ジャージの上にギラファ装備を着込んだ。

 竹宮先生の装備を手伝ってあげている。


「意外に着るの面倒くさいわね」

「防御力優先ですから」

「先生格好いいっ」

「ありがとう、チアキちゃん」


 うん、茶色というより砂漠色のヘラクレスオオカブト虫装備は格好いいな。

 カブトに二本のトゲが生えている。

 うん、僧侶には見えないけど、しょうがないね。


「甲冑を着込むのに時間が掛かりますな」

「女性の身支度とは時間が掛かるものなんですよ、望月先生」

「そうですね」


 大人っぽいというよりもおじさんくさい会話だな。


『格好いいねえ、竹宮先生のヘラクレス姿』

『マリちゃん画伯のギラファ装備もシャープで良いね』

『オーラバトラーっぽいシルエットになるねえ』


 竹宮先生が甲冑を着込んで準備は終わった。

 俺達付き添いは最低限の装備だから楽だな。


 今日のマリちゃんはフル装備なので、ギラファメイスを持って前衛だ。

 普通の丸盾を持ってもらっている。

 竹宮先生にはモーニングスターを持ってもらった。

 前衛が三枚、後衛が望月先生一枚である。


「今日は六階まで足を伸ばしてみましょう」

「は、半グレとか大丈夫かね?」

「対人戦は避けたい所だが」

「何か有ったら俺達が行きますから」

「そ、そうかい」


 半グレの様子も見ておかないとね。

 五階での狩りでは効率も悪くなってきたし。


 全員で下り階段を下りて、ゴブリンや角兎を倒しながら、ずんずん進む。


「甲虫装備、堅い」

「本当ね、ゴブリンの攻撃ぐらいだと何も感じ無いわ」


 うん、甲冑は正義だな。

 マリちゃんがギラファメイスを振るとゴブリンが血だるまになって倒れる。

 竹宮先生がモーニングスターを振ると角兎がぺちゃんこになって死ぬ。

 二人とものびのび戦えているね。

 

「くつしたに乗って無いので変な感じ」

「今頃はくつしたもダンスレッスンかあ」

「くつしたくんはみのりさんの護衛かい?」

「まあ、そんなところですよ」


 泥舟も発砲しないで、銃剣でゴブリンを倒している。

 いつもは遠くから倒してしまって接近戦にならないからなあ。

 チアキはムカデ鞭二本をヒュンヒュン振り回し、【気配消し】で敵に近寄り、毒蛾のナイフで麻痺させたりしている。


 前衛が三枚になったが、先生方の戦い方は変わらない。

 望月先生の麻痺水鉄砲で敵を動かなくしてからたこ殴りである。

 卑劣な感じがしないでもないが効率は良いな。

 ただ、宮川先生の戦闘勘が鈍らないか心配である。


 下り階段を使って五階へと下りた。

 このまま一直線で六階を目指そう。


 高田君が魔法の手斧で林檎を落としたり、チアキがムカデ鞭で木に駆け上がって鏡子ねえさんのようにピョンピョン跳び回ったりしながら進む。


「うおー、竹宮先生、マリッペ、かっこいーっ!!」

「うわああ、いいないいな、ゴブリンに斬られても屁でも無さそうっ」


 『ダーティペア』が寄ってきた。

 五階で真面目に狩りをしていたっぽい。


「ありがとう、高木さん、姫川さん、狩りの調子はどう?」

「まあまあ、宝箱巡回してんだけど、出ねえ」

「はやく鍵開けしてえっ」

「スキル持ってんのか?」

「ねえ、宝箱出たら気合いで開ける」


 罠に掛かって死んでしまうぞ。

 木箱ぐらいだったら毒矢とか毒針か、怖い事だな。


「毒消しとかは出たか?」

「出ねえ」

「ポーションだけは大事に持ってる」

「ムカデ飴は持ってるか?」

「キモイんで捨てた」

「あんなの喰う奴の気が知れねえ」

「ばっか、一万円の毒消しの代用になるんだよ」

「「マジか!!」」


 俺は収納袋から、ムカデ飴DXを出して二人の手にざらざらとあけた。


「お、違うムカデ飴」

「二十七階は虫階のデラックスムカデ飴だ、念の為に持ってろ」

「お、おう、解った」

「ありがとうな、タカシ」


 ダーティペアに感謝されるというレアな体験をした。


『ムカデ飴あると不意の毒攻撃に良いんだよな』

『毒消しは高く売れるからなあ』


 二人と別れて先に進む。

 ゴブリンやオークを狩りながら進むと六階への入り口洞窟が見えて来た。


「牛戦斧が重いお」

「そりゃ重かろう」


 馬鹿でっかいからなあ。 




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る