第236話 銃を出されたら殺すしかない現実

 フィールドの壁が解けた。

 ……。


 六人組の半グレ配信冒険者パーティがポータル石碑の間に続くドアから出て来た。

 ニヤニヤ笑っている。


 三人が散弾銃を構えた。

 魔銃じゃない普通の猟銃だな。


「収納袋と装備を全部よこせ。【復活リライブ】もだ」


 ポータルを使えると言う事はC級配信冒険者パーティだろうな。


「魔物には効きにくいが、人間には鉄砲は良く効くぜ、早くよこせっ、おらあっ!!」


 俺はリーダーとおぼしき奴に突っ込んで行った。


「やろうっ!!」


 ズドン!!

 ガキン!!!


 『浦波』が弾をはじいた。

 散弾銃って、沢山弾が出るんじゃないのか?


『殺意たけえっ!! 一発玉のスラッグ弾だ!!』

『強盗パーティか』


 ズドン!!

 ガキン!!


 鏡子ねえさんが無表情に距離を詰める。


 バキューン!!

 ダキュンダキュンダキュン!


 泥舟とチアキが無慈悲に銃撃をする。


 銃を持った別の奴に当たり、奴は吹き飛んで転がった。


「や、やろうっ!! こ、怖くねえのかっ!!」

「『ゆっくりゆっくりゆっくりなりたまえ~~♪ あせってもしかたがないからのんびりいこうじゃないか~~♪』」


 半グレたちの動きがゆっくりになる。

 鏡子ねえさんが暴れこみ、半グレたちの首を折る。


「や、や め っ、が は っ !!」


 俺はリーダーらしき奴の首を刈った。

 ごろんと首が床に落ちる。


「は、 は は、や、 や め て、 こ う さ ん」


 鏡子ねえさんは返事も無く、防御姿勢をとった半グレの奴の首を折った。

 くつしたが飛びかかり喉を噛みちぎる。


 瞬く間に半グレパーティ六人は全滅した。

 体から魔力の霧が発生し、俺達の胸に吸い込まれた。


『C級配信冒険者、『横道組』だな、半グレ上がりのパーティだ』

『銃を持ってきたら殺されるわな』

『馬鹿が悪いな』


 ふう。

 人を殺すのは、少し気が重い。

 だが、銃で脅す奴と交渉は出来ない。

 殺す以外の選択肢は無かった。


 みのりが悲しそうな顔をした。


「怖いね、タカシくん」

「ああ、迷宮だからな」


 チアキも冷たい目をして半グレを見ていた。

 泥舟の表情も硬い。

 鏡子ねえさんだけが、奴らの懐を漁ってお金や装備を取っていた。


「ねえさん……」

「迷宮で襲いかかってくる奴は魔物と同じだ、問題ない。猟銃もってくか?」

「外界に出たとたん捕まるよ」

「泥舟が使えると思ったけどな」

「そりゃ、スキルで使えるけどね」


 泥舟が苦笑いをした。


『『横道組』は七階の半グレ組織から別れて迷宮の深みを目指したが、レアに縁が無くて一か八かの勝負に出たんだろうな』

『C級だったら真面目に三十階台を周回すれば儲かるだろうに』

『『Dリンクス』はレア物を山ほど持ってるからなあ』


「銃器持っておくか? 対人には使えるぞ」

「うーん」


 チアキが猟銃を持って構えた。

 【射撃】スキルが生えたからか、構えが決まっているなあ。


「まあ、とにかく持って帰って換金所で売ろう」


 そうか、あそこなら売れるか。


『新品で三十万とかするから、半額で十五万ぐらいか?』

『わりと金になるな』


「対人バリバリやったり、ロシア人と戦うならライフル銃も欲しいけど、どうした物かな?」


 泥舟が首をかしげて言った。


「本当は魔銃も持ってるのはグレイゾーンなんだけどな。実銃は面倒臭そうだ」


 ねえさんが血塗られた戦利品の山を作っていた。

 剣とか、防具とか、良い物多いな。

 さすがはC級だ。

 全部持って行って、売ろう。


 俺達は扉を開けてポータルルームに入った。


「なんか、めでたくC級になったのに、ケチがついた感じね」

「C級からはプロ冒険者だから、甘い事は言ってられないかもしれない」


 というか、迷宮は浅い階でも甘い世界では無いけどね。


 ポータルに触ってロビーに戻る。


 わあっと、配信冒険者が歓声を上げた。


「C級昇格おめでとーっ!!」

「やったなあ、タカシ!!」

「かーちゃん呼ばないでよくやった!!」


 口々に俺達を褒めてくれる。

 でも、こいつらは『横道組』がポータルで三十階に跳んだのを見ていたはずだよな。

 まあ、配信冒険者パーティ同士は不干渉が原則だからな。


 『チャーミーハニー』の人達が息を切らせて駆けてきた。


「ご、ごめんなさい、間に合わなくて」

「助けるつもりはあったんですけどっ」


 『チャーミーハニー』さんはいつでも間に合わないよなあ。

 『ホワイトファング』の田上氏のように間が悪い系の人たちなのかもしれない。


「【復活リライブ】獲得おめでとうございますっ! 日本政府に売りませんかっ」

「いやです」

「ですよね~~」


 じゃあ言わないでくれ。

 日本政府に売っても、別パーティに【復活リライブ】があるともしもの時に間に合わないかもしれないしな。


 マリちゃんがデデデとレンタル鍛冶場の方から駆けてきた。

 ドワーフのゲドラさんも駆けてきた。


「タカシさん、三十階突破おめでとうございますっ」

「おう、おめえらもいっぱしの冒険者だなあ」

「ありがとう、マリちゃん、ゲドラさん。お土産に甲虫甲冑持って来たよ」

「ありがとうございますっ」

「おお、良かったなあカタバミ、これで素材探しの冒険に出れるぜっ」

「ありがとうございますっ、ゲドラ師匠!」


 そうか、『創作者クリエイター』は迷宮に素材探しの旅に出たりするのか。

 楽しそうだな。


『マリちゃんのクリエイト講座、片手剣作って見た、面白かった』

『クリエイトもいいな、と思ったぜ』

『マリちゃんの処女片手剣、おじさんに売ってくれ~~』

「この剣は宮川先生にあげるんですよ」

『先生か、まあ喜ぶだろうなあ』


 さて、ロビーで荷物の仕分けをして換金するかな。

 またレグルス陛下が女性配信冒険者と盛りあがってるな。

 見つからないように端っこでやろう。

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