第232話 ギラファクワガタを狩り直す

「ギラファシリーズはコンプリートした方が良いよ」


 チアキがそんな事を言う。


全身甲冑フルプレート付けられるメンバーはいないぞ、高田にやるのか?」

「いる」

「「「「だれ?」」」」

「マリねえちゃん」

「「「「あ~~~」」」」

『『『『あ~~~』』』』


 そうか『創作者クリエイター』は重装甲出来るんだっけ。

 シリーズをフルセット集めるとフルプレート化が可能だ。

 ヘラクレスオオカブトシリーズとギラファクワガタシリーズには互換性がないので、グリーブだけヘラクレス、という訳にはいかないのだ。


「せっかくだから、出るまでやるか」

「そう、あと、トンボメガネも全員分欲しい」

「ああ、二十九階はフラッシュネズミか」

「そうそう」


 チアキは迷宮の事をよく勉強して偉いな。


『二十八階の第三ホールは防具を揃えたいパーティにとって狩り場なんだよな』

『第一と第二ホールがウザイのでなかなか来れないのだ』

『ドロップ率凄いから、すぐ出るでしょ』

『ついでにヘラクレスも揃えてしまえ、セットだと外で高く売れるぞ』


 というわけで、ギラファクワガタグリーブが出るまで、安全地帯近くで残業である。

 第二ホールと違って、第三は力押し出来るのでわりあいと楽だ。


「重装甲になると、マリ姉ちゃん喜ぶぞ」

「どうかしら」


 まあ、セット装備にすると格好いいけどな。

 色々と尖ってるから。


 俺とねえさんで甲虫をバンバン倒し、チアキと泥舟がドラゴンフライGをバンバン打ち落とす。

 くつしたも体当たりにブレスにひっかきにと大暴れであった。


 で、ギラファグリーブが出る頃には、ヘラクレスオオカブトシリーズもコンプリート、トンボメガネも全員分ゲット、あとは、ヘラクレスソードとか、ギラファメイスとかも出た。

 あとはトンボ鉛筆、トーロンポー(冷凍)、クワガタ煎餅、カブト焼きセット(真空パック)、呪文スペル加速ヘイスト】、聖典【解呪ディスペル】、なんかが出た。


『一回で、ヘラクレスオオカブトシリーズとギラファクワガタシリーズを揃えたパーティは初めて見た』

『しかも装備狩りじゃねえ、フロアボスチャレンジの道中だ』

『なんでこんなに滅茶苦茶ドロップするかな』

『『Dリンクス』は出方がおかしい』


 俺もそう思う。


 階段を下りて二十九階、フロアボス階までもう少しだ。

 全員にトンボメガネを配った。


「ぷっ」


 全員で顔を見あわせて笑った。

 変な絵だなあ。

 くつしたにもトンボメガネを掛けてやると、メガネのつるがニョーーンと伸びてフィットした。

 迷宮産のアクセサリーは優秀だな。


 土壁だった虫階に換わり真っ黒な石造り迷宮になった。

 なんとなく湿っぽくて薄暗い。

 ヘッドライトとランタンをかざすと光の下を黄色いネズミが走って逃げて行く。

 フラッシュネズミである。


「ああ、フラッシュネズミさん、可愛い」

「凶悪だぞ」


 一匹一匹は小さいネズミなのだが、追い詰めると……。


 ピッカアアアッ!!


 体から強烈な閃光を放って目をくらませる。

 そして、そこへ人間大のワーラットさんが走り込んで来る。

 早い早い、ワーラットさん。

 短剣装備で強盗ローグ風味のネズミ男が三人だ。


 バキューン!!

 ダキュンダキュンダキュン!


 鉄砲組が銃を乱射、ネズミ男が一人倒れた。

 ねえさんの見えないパンチが炸裂、俺も一人斬り殺した。


 ダキュン!


 チアキがフラッシュネズミも拳銃で仕留めた。


 というように、視覚を閃光で奪ってからの速攻が、この階の特長である。

 トンボメガネをしていれば、なんという事は無いのである。


「トンボメガネ優秀だな」

「まあ、ここぐらいでしか使わないけどね」


 フラッシュネズミが駆けよってきた、が、くつしたがバクリと噛み殺した。

 犬とか猫の従魔がいると良いかもしれないな。


 ねずみ男が粒子に換わり消えて行く。

 魔石とドロップ品が床に落ちた。


 特製迷宮ネズミ花火と、毒団子の猫いらず、フラッシュネズミぬいぐるみであった。


『太ったフラッシュネズミぬいぐるみ……』

『版権は大丈夫じゃ』

『ここの運営は何と戦っているのだろうか』


 とりあえず、ここの階は、フラッシュネズミの閃光で戦闘が始まり、ワーラット、オセロット、エリマキトカゲが出る。

 オセロットは猫科の豹みたいな奴だな。


 敏捷性勝負の階だ。

 あいにく、ねえさんも俺も敏捷型なので魔物たちと相性が良い。

 特に、鏡子ねえさんの速度と手数にはフラッシュネズミもかなわないだろう。

 お客様階なので宝箱巡回とかしたい所だが、最短距離をずんずん進む。


 フラッシュネズミがちょろちょろ出て来て、閃光を発する。

 そして、通路の向こうから人間大の襟巻きトカゲが体を揺らしながら走って来た。


「『ねーむれ~~よいこよ~~♪ おかあさんのむねのなかで~~♪ ゆめをみよ~~よ~~♪』」


 そうだね、トカゲには【お休みの歌】だね。

 ぱたりぱたりと通路に倒れ、襟巻きトカゲは寝てしまった。

 フラッシュネズミも寝ていた。


 さっくりと処理をする。


 ドロップ品は、カシミヤの襟巻き、トカゲペンダント(水抵抗+5)、襟巻きトカゲぬいぐるみであった。

 ぬいぐるみはとぼけた感じで可愛いな。

 チアキとみのりが取りあっていた。

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