第226話 二十四階はいつも通り

 二十四階の安全地帯には誰も居なかった。

 小休止を取る。


「二十三階、混んでたねえ」

「川崎大師の初詣かと思ったよう」


 そこまでは混んでいないだろう、みのりよ。

 JR川崎の駅前ぐらいかな。


「キングトードを積極的に狩ってカエル玉を備蓄しよう」

「そうだね、ねえさん」


 俺は収納袋に手を入れて、スネークスティレットを出して腰に差した。


 最短距離をマップソフトで検索して歩いて行く。


 ストーンゴーレムが二回出た。

 くつしたがゴーレムを転ばせてくれるので、あとは急所をねえさんが打ち抜く楽な狩りであった。


 ドロップ品はダストアイテム石の玉、楽譜スコア【堅くなれの歌】が出た。

 【堅くなれの歌】は聞いた者全員の装甲が上がる。

 狩りに使うと安全だが時間が掛かってしまうので、みのりはまだ覚えていない。

 レア物だと対象指定が出来て便利なんだが。

 残念ながら僧侶の奇跡【頑健プロテクト】の方が便利だね。


 キングトードも二回出た。

 スネークスティレットで瞬殺であった。

 カエル玉が出て、手持ちは三個だ。

 深い所に行くまでに沢山備蓄しておくと良さそうだね。


 キングボアが現れた。

 大ヘビだね。

 ナメクジバットでたたき殺す。

 ドロップに蛇皮ボディスーツが出て、鏡子ねえさんが喜んでいた。

 スネークスティレットももう一本ゲット、二倍の速さでトード類を狩れるぞ。


 下り階段を下りて、オバケ階だ。


「ひいいっ、助けてくつしたちゃん」


 みのりがくつしたに抱きついた。

 女の子は苦手な物が多いなあ。


 視界いっぱいの墓石の迷宮である。

 チアキを先頭にそろそろと進む。


 出てくるのは、スケルトン、ゾンビ、ゴーストなので、わりとサクサクである。

 みのりがエンドレスで【オバケ嫌いの歌】を歌っているからね。

 アンデッドたちは出た瞬間に苦しみ、何も出来なくなる。

 いやいやラクチンであるな。


「この階ネームド出るのか?」

「女子リッチ『アンナニーナ』だね」

「リッチ女子か、上流階級の娘かな」


 語順が違うだけで、ずいぶん違った物になるな。


「ネームドレアから【従魔創造の珠】が出るんじゃないか?」

「そうかもしれない」


 ゾンビとスケルトンを倒しながら俺達は先に進む。

 チアキがムカデ鞭でスケルトンの胸から魔石をぶっこぬくという攻略をやっていた。

 上手いなあ。

 いつの間にか、チアキはムカデ鞭を自由自在に使えるようになっていた。


 二十五階はあまり苦戦らしい苦戦はしなかった。

 最短距離を歩いて下への階段へと到達した。


 ゾンビのドロップ品は、お線香、呪文スペル炎化ファイヤーエンチャント】、ゾンビーパウダー缶、等が出た。


「ゾンビーパウダーとはなんだ?」

「史実だと、振りかけると死者がゾンビになる粉だけど」

『シャワーの後に振りかけるとスッとするクーリングパウダーじゃ』

「「「「あ~~~」」」」

『この前使ったけど、中身はタイのスネークブランドっぽい』

『これからの季節にぴったり』


 ドロップ係の人、遊んでるなあ。

 ともあれ、【炎化ファイヤーエンチャント】はありがたい。


「みのり、覚えるか?」

「おぼえるおぼえる」


 みのりがスクロールを広げてスペルを覚えた。


「みのりねえちゃん、ムカデ鞭に掛けてみて」

「わかったよー『太古の業火よ、かの武器にその現し身を宿さん、ファイヤーエンチャント』」


 みのりが呪文を唱えると、チアキのもったムカデ鞭が燃え上がった。


「おー、これ、鞭は焦げない?」

『魔法の炎なので、武器には影響はないわい』


 チアキが火の付いた鞭をヒュンヒュン振った。

 明るくて綺麗だが、危ない。

 ちょうどゴーストが寄ってきたので、チアキは火炎鞭でピシリと攻撃した。

 鞭が当たるとゴーストにダメージが入ったようだ。


「うん、いいね、だけど面倒くさい」


 チアキと泥舟が魔導銃を乱射して、四匹のゴーストを落とした。

 飛んでいる奴は鉄砲が便利だよな。

 矢にも掛けられるようだから、『射手アーチャー』に良いかもしれないな。

 エンチャントの火はしばらくしたら消えた。


 マップを見ながらどんどんと進む。

 わりとオバケ階は楽だな。


 二十階を過ぎると、階ごとに敵の性格がかわって、例えば二十一階、二十二階のトロールとオークだと、防御力があって、火力が高いパーティが有利だ。

 トロールが戦闘中に回復するので、どうしても長丁場になるんだな。


 で、二十三階のワンコ階は、逆に敏捷性勝負になる。

 沢山のワンコとオルトロスを正確に捉えないと二十三階あたりは厳しい。

 遠距離の職業ジョブがあるパーティが有利なのだ。


 そしてオバケ階になると、『僧侶プリースト』か『吟遊詩人バード』が居るパーティが俄然有利となる。

 階ごとに有利になる職業ジョブが違うので、戦い方を変えないと難しくなってくるんだ。

 迷宮探検は奥深いね。


 下り階段を下りて、二十六階である。

 ここもオバケ階、景色はもやが掛かった一面の墓地だ。


「こわい~~」


 みのりが涙目になっている。

 慣れろ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る