第145話 モナリザンでイタ飯を食べる

 モナリザンはファミレスではなかった。

 と言って、迷宮二階のような一流レストランでも無い。

 なんだか居心地の良い洋食のお店であった。


 それぞれが好きなパスタを取って、大きいサラダを取り、みんなでピザを取った。

 ワイワイして気楽で楽しいな。


「おお、美味い美味い、良いお店だな」

「私も知らなかったなあ、良い雰囲気」

「わりと有名なお店だよ、銀流街と西武に支店があって、テレビでも紹介されたね」


 さすが泥舟は川崎通だな、よく知っている。

 先生方はワインを取って飲んでいるね。

 今日はお疲れ様でした。


「また、一緒に来て欲しいのだが、可能だろうか」

「ええ、良いですよ、『Dリンクス』の狩りは一日置きなので、先生方がクラスチェンジするまでお付き合いします」

「たすかるわー、なかなか慣れ無いのよね狩り」

「今回も鉄砲がなければ大変だったね」

「いやいや、疲れたね」

「でもレベルアップして爽快でもありますよ」

「スキルも手に入ったし、嬉しいわ」


 先生方は口々に今日の感想を言った。


「次回だね、タカシ」

「そうだな、ゴブリンだな」

「うん、人型を倒すのは大変だよ」


 みのりと泥舟は苦労してたからなあ。

 今では難なく倒せているけど。

 やっぱり人の形をしている魔物と、動物の魔物を比べると格段に気持ちの負担が違うよね。

 その上が、半グレたち、人間だ。

 俺もまだ人を気楽には殺す事は出来ない。

 ねえさんみたいにバンバン殺した方が楽と言えば楽なんだけどね。


 チアキは一生懸命ミートソーススパゲティを食べていた。


「おいしいかい?」


 チアキは黙ってうなずいた。

 ねえさんが苦笑して口ついた汚れをハンカチで取ってあげていた。


「チアキの盗賊の腕前の方はどうなんだろ」

「明日行って……。と言っても占有とけても宝箱にあたるかな」

「鍵開けと罠察知は自信がある……」

「お、それは楽しみだ。装備は明日か?」

「売店で皮系の装備を買おう、武器の方は」

「チアキちゃん、メインの武器は?」

「ナイフ」


 ナイフかあ、半グレどもはろくな装備を渡してないな。

 盗賊なら、片手剣、手盾まで装備出来る、あと飛び道具も装備できるから、魔銃という手もあるな。

 『浦波』で自動防御とか心強いか。


「『浦波』と魔銃はどうかな、安心だ」

「『浦波』はタカシが持ってろ、お前もパーティのかなめなんだからな」

「いや、でも安全じゃん、神降ろしが必要になったら、『暁』と『金時の籠手』があるから」

「『浦波』を持ってるタカシの安定感の方がでかい。チアキに魔銃は良いかもしれないな」


 チアキはミートソーススパゲティを口に運びながら黙って聞いていた。


「チアキは【気配察知】は?」


 ブンブンと顔を横に振った。

 持って無いのか、まあ、俺とねえさんが持っているから不便は無いが、将来的には欲しいな。


「パティさんに【気配消し】を覚えろって言われた。覚える」

「良いね、そうなったら心強い」


 パティさんは【気配消し】で迷宮の進路を確認して動いているのだろうな。

 『盗賊シーフ』はRPGゲームでは宝箱を開ける生体アイテムっぽい扱いの所が多いけど、実際の迷宮ではパーティの目だから超重要なんだ。

 先に敵の接近や数を知っていると準備も出来るし、不意打ちも回避できる。

 最重要な職業ジョブとも言われている。


「あ、みのり、明日の準備にこれ」

「お、おお? 呪文巻物スペルスクロール?」

「【火炎弾ファイヤーボール】だ、覚えておいてくれ」

「ついに魔法、魔法解禁ですかっ」

「いや……」

「ああ……」

「なるほど……」

「な、なんですかなんですかっ」

「明日は十六階を攻略する予定だ」

「ひっ、ひっ、センチネルセンチピードの部屋~~!!」

「火炎あると楽らしい」


 東海林が考え込んだ。


「『オーバーザレインボー』も一緒に行って良いか、そうすれば俺も手伝えるし、センチネル部屋はどうせ越えないといけないからな」

「そうするか、初レイドだな」

「権八の時にやったけどな」


 まあ、あのレイドは特別だ。


「東海林君がいると助かるよー」

「藍田さんが毒消しの奇跡を使えるし、高田は投げ斧使えるから、ちょっとは役に立つだろう」


 経験値が沢山貰える部屋らしいから、チアキのレベルアップにも良さそうだ。


「チアキは十階のフロアボスは倒したか?」


 チアキは首を横に振った。

 占有のための『盗賊シーフ』だからな。

 その場で鍵開けするための要員だ。


「そうか、まあ、私たちがポータル権を取ってあるから、一緒に飛ぼう」

「解った、将来的には攻略したい、宝箱がもったい無い」

「どこかの初心者パーティと一緒にクリアすればいいな」

「ああ、先生のパーティと一緒にフロアボスを倒そうじゃないか」


 顔の赤い望月先生が話に入って来た。


「先生方も深部攻略するんですか?」

「そうね、日帰りで行ける二十階ぐらいは攻略したいわね」

「生徒達のパーティは大体そこら辺が限界だろうしね」

「迷宮を知っておくと、指導もしやすいからな」


 なかなか前向きだが、のんびりやっていかないと事故が起きそうだ。

 まあ、先生方だから慎重にいくかな。


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