第138話 サチオと子供が現る

 ドキューン!!


 望月先生がへっぴり腰でスライムに魔法弾を撃ち込むが、なかなか死なないね。

 竹宮先生が弓を放つが外れた。


「これは難しいねえ」

「なんで死なないのかしら」

「体内になんか塊があって動いているでしょう、あれがコアであれを壊すと死にます」

「んんっ」


 ダキューン!


 望月先生の魔法弾がコアを砕いた。


「ナイス、望月先生!」

「すばらしいっ」

「いえいえっ」


 スライムが粒子に分解して魔力の霧が漂う。

 俺と泥舟と東海林はちょっと離れて先生方が魔力を吸えるようにした。


「これが魔力かあ」

「妙な感じですね」

「レベルアップはまだかな」

「まだまだですよ」


 ぽこりと魔石がドロップした。

 みのりがいないのでドロップ品はしょっぱい感じだね。


「やあ、これが魔石、綺麗だなあ」

「記念に望月先生、持ってらっしゃいな」

「それがいい」

「いいんですか、わあっ」


 望月先生は嬉しそうだな。


『初狩りのほのぼのさよ』

『望月先生の銃も、竹宮先生の弓も誤爆しそうでコワイな』

『のんびりした物であるな』


 まあ、怪我したら、ガマ軟膏もあるし、ポーションもあるしね。

 収納袋さまさまである。


 俺たちは凄く軽装で先生について行ってる。

 俺は『暁』と『浦波』だけ。

 泥舟は手槍だけ。

 東海林に至っては、簡易ロッドだけだ。

 浅い階だからね。


 今日の三階は、ほどほどの人出だ。

 初心者パーティがあちこちで狩りをしている。

 小学生から大人までいるな。


 しばらく角兎やスライムを狩りしていたら、先生方がレベルアップした。


「おおっ、体が膨らむっ」

「ああ、なにかしらこれ」

「不思議な感覚だね」

「レベルアップしましたね。Dチューバーの世界にようこそ」

「そ、そうか、これがレベルアップか」

「コモンスキルが幾つか付きますよ、これまでの人生で培っていた能力がスキルになります」

「あら、【多言語理解】ですって」

「わ、凄いですね、英語の他に語学やってました?」

「フランス語もちょっとね、これはなに?」

「世界中の言語どころか異世界の言語もわかるようになるスキルですよ」

「まあ、それは、便利ね」


 竹宮先生に、コモンにしては美味しいスキルが付いたな。

 オーブで出る時はレアスキル扱いだ。

 そうか複数言語が使えると生えるのか。


「私は【指導力】だね、なんだろう」

「リーダー向きのバフスキルですね。統率する配下の能力が上がる感じです」

「そ、そうなのか」


 先生らしいスキルが付いたな。

 宮川先生は指導力高いからね。

 パーティ戦で持ってるとありがたいスキルだ。


「僕は【観察力】が出たね」

「良いですね、相手を観察して弱点を知ったり、罠を見破ったり、汎用性が高いスキルですよ」


 望月先生は理科の先生だから【観察力】が出たのか。

 三人とも使いやすそうな、良いスキルが付いたね。


「ちょっと体も軽くなったような」

「なんとなく動き安い感じだね」

「レベルアップのステータス補正ですね」

「実感できるぐらいなのか」

「レベル10までは割と世界が違って見えますよ。力、防御力、知力、器用さ、信仰心、幸運値が加算されて行きますから」

「なるほど、みんなが夢中になる訳だな」

「本当に凄いわね」

「さあ、宮川先生、竹宮先生、もっと狩りましょう」

「そうですな」

「賛成です」


 先生方の士気も上がったな。


「あれーっ、宮川せんせーじゃーんっ」

「お、タカシもいる、ちーすっ」


 あ、クラスの不良女子だ。

 ダンジョンデビューしたのか。

 槍と片手剣、盾装備だ。

 一応防具もつけてるな。


「やあ、姫川、高木、君たちも迷宮か」

「そー、タカシが連れてってくんないからさー」

「後醍醐先輩につれてきてもらったー」

「それはよかったな」


 後醍醐先輩は世話好きだなあ。


「タカシー、パーティくんで配信料くれよーっ!」

「そうだそうだ、ずるいぞてめえ」

「配信料?」

「一時パーティでも、同接数頭割りで配信料はいるっすよー、タカシは人気者だからすげえのよ」

「そうだそうだ、くれくれ」

「もう、六人枠いっぱいだから無理だ」


 浅ましいぞ、お前ら。


『なんだか、タカシのクラスメートか』

『あー、すぐ遭難する系女子だわ』

『下品な女子じゃな』


「あまり集まっていると多人数殺しが出るから離れてよ」

「なんだと足軽め、やろうってのかーっ!」

「三階では多人数殺しでねえし、いいじゃんよっ」


 まったく下品で馬鹿で困るな。

 先生方も強く言えないので困っている。


「一応でるよ~、十階分下の物がでるわけだから、オークとかだから目立たないだけだよ~」


 目の細いちゃらい感じの大学生ぐらいの男が声をかけてきた。

 ん? だれかに似てるな。

 彼にまとわりつくように小さな女の子がいた。

 というか、小汚い格好だな。


「だれだおめー……」

「なんだおめー……」

「あっちいってね、仔猫ちゃんたち♡」


 チャラ男くんの目が光った。


「は、はい、すんません」

「おおせのとおりにするっす」


 のぼせたように姫川と高木は離れて行った。

 なんだ、何かのスキルか?


「【魅了みりょう】スキルだよ、僕は男性形だから女子にしか効かないけどね」


 そういや、竹宮先生の顔が赤いな。


「だれ?」

「僕はサチオ、サッチャンの弟、三人目の外界に出れる悪魔だよ」


 なん、だと?

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