第136話 先生からの依頼を受ける

 授業の方は順調に終わった。

 楽しい放課後である。


 とはいえ、昨日は難波ダンジョンで潜って15階まで行ったので、今日はお休みだ。


 難波ダンジョンと言っても、階層構造は一緒だし、売店のお姉さんやロビーの女悪魔さんも一緒なので、違いは回りから聞こえてくる会話が大阪弁なだけであった。


 マリアさんとみのりのダブルバードで挑んだが、まあ、声が綺麗だったな。

 みのりがマリアさんに『吟遊詩人』バードの立ち振る舞いを教えていた。


 魔銃はみのりに持たせる事になった。

 【射撃】が生えそうなのが『吟遊詩人』バードだけだったし。

 弓より拳銃の方が楽そうだったからだ。

 マリアさんが拳銃の撃ち方とかをみのりに教えていた。

 【お止まりなさいの歌】で時間停止してオークをバンバン撃っていたが、MPの消費量が半端ないので補助ぐらいに戻った。


 さて、俺とみのりと東海林で廊下を歩いている。


「今日はマリアさんとスタジオなのか」

「そうなんだ、レッスンしてアルバムスタッフと顔見せだって」

「アルバムは日本で作るのかい?」

「そうみたいしばらく日本にいるって、ホテルメトロポリタンに泊まってるよ」

「高いホテルに、まあ世界の歌姫だからなあ」

「川崎はエネルギッシュで気に入ったって」


 気に入ってくれたら嬉しいな。

 とはいえ、『ホワッツマイケル』の連中も退魔装備受け取りの関係でしばらく日本だろう。

 再戦は無いだろうが、ちょっかい出されると嫌だな。


 泥舟が廊下を歩いてきて合流した。


「タカシは今日はどうするの?」

「どうしようかな、わりと暇だな」

「新宮は暇なのか、丁度よかった」


 廊下ですれ違った先生が足を止めて、俺に声をかけてきた。


「なんですか?」

「いやな、先生方の有志で迷宮に潜る事にしたのだが、相談に乗ってくれるとありがたい、何しろ危険な場所だからな」

「先生方もDチューバーデビューですか」

「迷宮に入りたいという生徒が増えてきたしな、教員も体験して色々知っておかないといけないと、文部省からの通達も来ているんだ」


 社会が激変しているから先生も大変だな。


「いいわね、手伝ってあげましょうよ、タカシくん」

「そうだな、先生にはお世話になってるし」

「いやいや、新宮が大変な事になってる時に気がつけてやれなくてな、悪かったと思っているんだよ」


 それは先生のせいじゃ無いからなあ。


「気にする事はありませんよ」

「ありがとう、そう言ってくれると助かる」

「人数は何人ですか?」

「三人だな」

「じゃあ、俺と泥舟と東海林で手伝うか」

「そうだね、一日で零から一レベルかな」

「ああ、私も歌で応援したい」

「みのりはスタジオに行け、そっちも大事だろ」

「わかった~~」


 後で職員室に行く事にして、先生とは別れた。

 みのりを送って校門まで行く。

 鏡子ねえさんとマリアさんが白いベンツの前で待っていた。


「よお、お前らっ」

『こんにちは……』

『今日はよろしくおねがいしまーす』

『堅くならなくて大丈夫よ……』

「それじゃ、行ってくるねっ」

「頑張ってこいよ」

「うんっ!」


 みのりはねえさんとマリアさんと一緒に車に乗って去って行った。


 俺と泥舟と東海林は校庭を校舎に向けて引き返していく。


「東海林は迷宮は?」

「三連休に潜っていたよ」

「そうか、調子はどうだい?」

「なかなか良い感じだ、霧積も大人しくなったし、樹里の動きが良くなって警報入れてくれるので楽になったな」

「高田君はどう?」

「なんだか、レア投げ斧が超上手くなってね、なかなか凄いよ。前衛で中衛は便利だ」


 そうか、投げ斧で最初牽制して、接近してきたら霧積と共に前衛か。

 なかなか良いバランスだな。

 レア券は藍田さんのホーリーシンボルに交換したって聞いた。

 ハイヒールが三回使えるらしいから安心だね。


「同接数も結構増えてきて、みんな『Dリンクス』のお陰だよ、ありがとう」

「よせやい、東海林たちが頑張ったからだろ、礼には及ばないよ」


 職員室に着いた。

 中に入って探すと、宮川先生のところに二人の先生がいた。


「おお、来た来た、新宮」

「おじゃまします」


 職員室はいつ来ても居心地が悪いな。

 うちのクラスの担任の宮川先生と、英語の竹宮先生、理科の望月先生だな。


「今日はよろしくね」


 竹宮先生が微笑んで言った。

 美人で人気がある先生なんだよな。


「新宮くん、活躍はいつもDチューブで見ているよ、京都の戦いも凄かったね」


 望月先生は眼鏡のインテリって感じの若い先生だ。


「宮川先生が前衛で、竹宮先生と望月先生が後衛かな、先生方、なにか武道とかは?」

「やってないなあ、学生時代は少し柔道をやっていた」

「私もテニスぐらいね」

「僕もあまり」


 まあ、先生方だからね。


「先生方はどんな職業ジョブに付きたいですか?」


 東海林の質問がとんだ。


「そうだなあ、私は剣士かな」

「先生は僧侶をやりたいわ、治療魔法が使えると学校でも便利そう」

「僕は、やっぱり魔法使いかな」


 まあ、順当な感じかな。

 俺は収納袋から換金し忘れた装備を出して並べた。


 片手剣と、バックラーと、みのりの使っている弓、あと魔銃を出した。


「お、おおっ」

「鉄砲だ、これレアな奴じゃないの?」

「初心者は職業ジョブチェンジが出来るまでは『参入者』ビギナーですから、飛び道具か、スタンダードな武器が良いんですよ」


 あとは、胸当てと、陣笠が一個あるな。

 とりあえず、最初だから、俺の防具を貸しても良いしね。


「宮川先生は戦士系だから、売店で装備を揃えても良いんですが、竹宮先生と望月先生は職業ジョブチェンジで装備に制限が付きますので、飛び道具でちまちまやって下さい」

「そ、そうか~」


 宮川先生が、片手剣、バックラー、胸当て。

 竹宮先生が、胸宛て、泥舟の脚絆、弓。

 望月先生が、陣笠、ガントレット、魔銃、という事になった。


 さあ、迷宮に行こう。

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