第八章 泥舟のパワーアップと新人

第135話 学校に行くとみのりが騒がれていた

「タカシくんっ! 大変だよ、高橋社長さんが来てパパママに土下座していたよっ!」


 クラスに入るといつも通りみのりがデデデと走り寄ってきた。


「もう来たか、ねえさんは?」

「蹴りを一発入れてた。その後【お止まりなさいの歌】の歌で止めた」


 鏡子ねえさんは高橋社長が嫌いだからなあ。


「みのり、マリア・カマチョのお弟子さんになったでしょうっ」

「すごいね、世界に羽ばたくDアイドルねっ」

「タカシもすげえよな、世界一の男を倒したぜっ」

「鏡子さんもめちゃ強かった、もう五十階ぐらいは楽勝で越せるんじゃないかっ」


 今日もクラスメートは『Dリンクス』の内情に興味津々であった。

 というか、おまえらどけ、俺が通れん。


「やあ、公式動画を見たよ、今回も凄かったな、新宮」

「おはよう東海林、何回も死ぬかと思った。72Lvと戦うもんじゃないよ」

「公式動画に美春さん出てた、お父さんにDチューバーだってばれて大丈夫なのかなっ」

「もう、陰陽師もDチューバー化するから大丈夫じゃないか、乃木さんも東郷さんも迷宮に行くって言ってたし」


 人をかき分けて俺は自分の席に付いた。

 峰屋みのりは前の奴の席に座る。

 東海林は椅子を持って来た。


「いやあ、大金星だった、おめでとう新宮」

「たまたま神様がなんとかしてくれただけだな、もう俺は流されてただけだよ」

「なんとか『ホワッツマイケル』を撒こうとか、考え無かったのか?」

「キャシーがいたからねえ」

「というか、全員で掛かってこられたら必敗だった、マイケルが舐めて『射手アーチャー』をやってたからなんとかなったけど、パティさんはやばかった」

「『盗賊シーフ』さんって、高レベルになると凄く厄介よねえ、気配無いから」

「ああやって気配を消して先を調べてパーティの安全を確かめるんだよ。深い階層になると必須だな」


 みのりの【豪運】もあるからそろそろ盗賊を一人入れたいな。


「難波に行かないで川崎に戻れば良かったんじゃないか?」

「んー、鏡子ねえさんが楽しみにしてたからなあ」

「川崎に逃げても、決着が付かない限りマイケルさんはまたくるよう」

「高レベルパーティは厄介だな」

「まったくだ」


 後ろのドアがガラッと開いて後醍醐先輩が入って来た。


「おーっ、タカシタカシ、世界一の俺の舎弟よ、天晴れだっ!」

「あ、ありがとうございます、後醍醐先輩」

「ちっきしょう、退魔装備すげえな、神様降りてきた時、オヤジと一緒に歓声をあげたぞ、よくマイケル相手に諦めなかった、偉いぞっ!」


 オヤジさんと仲がいいな、後醍醐先輩。


「みのりんはカマチョの弟子になるし、もう『Dリンクス』は安泰だな、どこのパーティにも一目置かれるだろうぜ」

「そうだな、早く突破階数を増やしてランクを上げるべきだ。もう三十階は突破できるだろう?」

「そうだな、ねえさんが居れば可能だ」

「みのりんも勝負強いな、なんか賭け事とかやってたか?」

「や、やってませんよう。あんまりゲームとかもしてないし」

「それにしては機転が利くよね」

「タカシくんが、こう、こうしてほしいかなって見ていると、良い感じに呪歌を挟めるというかー」


 みのりは上目遣いで俺を見ながらそんな事を言った。


「あ、ありがとう」

「い、いえいえ」


 なんか照れくさいぞ。


 北村チヨリ先輩が踊りながら入って来た。


「みなさま『おはようおはようおはようございます~~♪ すてきな朝、青い空、白い雲に今日の元気をはじけさせましょ~~♪』」

「得意の【おはようの歌】だ、毎朝見てから登校してんぜ~~」

「あら、ありがとう。ほほほ、みのりさん世界的な歌姫がお師匠に付いた所で私はまけませんからね~~。というかうらやましいわ」

「本音でてんぞ」

「うるさいわね」

「あはは、ありがとうございます、チヨリ先輩。まだ決まってませんがリーディングプロモーションの後輩になるかもしれません、その時はよろしくお願いします」

「そう、うん、それが良いわね。でもカマチョとデュエットアルバムは正直妬ましいわっ」


 チヨリ先輩は正直者だな。


「タカシさんとか、鏡子さん、泥舟君は入りませんの?」

「俺たちは芸能活動しないからなあ」

「CMの話とか来てませんの?」

「さあ? どうだろう」

「そういうのは泥舟君が一手に判断してくれてるわ」

「あいつも有能でいぶし銀だな」

「次は泥舟のパワーアップと、盗賊のメンバー探しだなあ」

「なかなか厄介ですわね」

「とりあえず、二十階のフロアボスを倒して出た物で考えたら良いんじゃねえか」

「レアチケットもまだあるのでしょう?」


 そういや、レアチケットはみのりの帽子しか使って無いな。

 俺も、防具とかに替えるべきか。


「良いよなあ、レアチケット、うちも欲しかったぜ」

「貰えませんでしたか」

「ちょっとのポイント差でなあ、売店で使える商品券をもらった」

「何をおっしゃっているの、『蘇生の珠』を人数分貰えただけで大もうけですわ」

「ちげえねえ、ちょっと心に余裕ができたよな」


 大規模レイドの賞品は大盤振る舞いだったからな。


「おーう、みんな席につけ~、後醍醐と北村も自分のクラスに帰れ~」


 先生がやってきた。


「へーい」

「わかりましてよ」


 先輩達は教室を出て行った。

 さて、授業だ授業。

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